記者発表 2009年3月31日

ここからページ本文です

国立環境研究所特別研究成果報告書の公表について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配布 )

平成21年3月31日(火)    独立行政法人国立環境研究所
    企画部長: 松井 佳巳 (029-850-2302)
  環境情報センター長: 松本 公男 (029-850-2340)
  課題代表研究者 高野 裕久 (029-850-2336)
  担当(広報・国際室) 広兼 克憲 (029-850-2308)


国立環境研究所では、今後の環境研究の基盤となり得る研究や、既知の環境問題に留まらず新たな環境問題の発見および解決を目指した研究であり、比較的大規模のプロジェクト型研究(「特別研究」)を進めています。今般、下記特別研究課題の成果をとりまとめた報告書を刊行しましたので、お知らせします。

『環境化学物質の高次機能への影響を総合的に評価するin vivoモデルの開発と検証』
(課題代表研究者:高野 裕久、研究期間:平成17〜19年度)

研究成果のポイント

・環境化学物質によるアレルギー増悪影響が評価可能なin vivoスクリーニングモデルの改良と検証

・多くの環境化学物質によるin vivoアレルギー増悪作用の有無を短期間で評価

・既存の毒性評価によるNOAELよりも低濃度でアレルギー増悪影響が認められた化学物質の存在を確認

・短期かつ簡便に環境化学物質によるアレルギー増悪影響を推定できるスクリーニング手法の提案

注1. in vivoとは、生体内を意味し、動物個体を用いた実験に使われる用語。

注2. NOAEL(無毒性量、No Observed Adverse Effect Levelの略)とは、動物試験等で求められた、この量以下では一生涯、毎日摂取(曝露)しても毒性影響が出ない量。

『環境化学物質の高次機能への影響を総合的に評価するin vivoモデルの開発と検証』

1.研究の背景と目的、成果の概要

日常生活の中で使用され、私たちが接する可能性のある化学物質(環境化学物質)は膨大な数に上っています。これら化学物質の健康影響については、古典的な毒性発現(臓器への影響等)の有無だけではなく、免疫・アレルギー・神経・内分泌等の高次機能への影響も適切に評価される必要があります。これらの影響の研究から、環境化学物質に対する感受性が高い人々が存在することや、疾患・性別・年齢等により影響の現れ方が異なることも明らかにされつつあります。

本研究では、「in vivoスクリーニングモデル」を応用・改良し、多くの環境化学物質のアレルギー増悪影響をin vivoで検討し、より簡易なスクリーニング手法の開発を試み、次の成果が得られました。

(1) 環境ストレスに対し免疫・アレルギー影響等の高次機能影響が出現しやすい動物モデルを用い、短期かつ簡便に環境化学物質のアレルギー増悪影響を評価可能なin vivoスクリーニングモデルを改良・検証することができました。

(2) 多くの環境化学物質によるin vivoアレルギー増悪作用の有無を短期間で評価できました。

(3) すべての環境化学物質が非特異的にアレルギーを増悪することはないものの、ある種の化学物質は既存の臓器毒性により求められたNOAELよりも低濃度でアレルギー増悪影響が認められました。

(4) DNAマイクロアレイの併用やin vivoスクリーニング手法の導入により、より短期かつ簡便に環境化学物質によるアレルギー増悪影響を推定できるスクリーニングシステムを提案できました。

注3. DNAマイクロアレイ
網羅的に遺伝子の発現レベルを解析する手法(数万個の遺伝子発現を一度に調べることが可能)。

2.報告書の閲覧・入手について

国立環境研究所の刊行物は、以下で閲覧できます。
○国立環境研究所ホームページ(URL:http://www.nies.go.jp/
○国立環境研究所図書室
○国立国会図書館

報告書の入手を希望される場合、残部があれば頒布いたします(送料本人負担)。 下記へお問い合わせ下さい。

連絡先:環境情報センター情報企画室出版普及係 
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)