記者発表 2009年3月19日

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「地球温暖化」に関する疑問・質問に
国立環境研究所の研究者がわかりやすく回答
〜「ココが知りたい地球温暖化」の出版について(お知らせ)〜
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時発表 )

平成21年3月19日(木)
独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター
  センター長: 笹野泰弘(029-850-2444)
  温暖化リスク評価研究室長: 江守正多(029-850-2724)
  主幹: 山本 哲(029-850-2384)


独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センターは、「地球温暖化」について市民の方から研究者に寄せられる質問への回答を質疑応答形式でまとめた書籍『ココが知りたい地球温暖化』を株式会社成山堂書店の「気象ブックス」シリーズの1冊として刊行します。地球温暖化に関する、「科学」「影響」「対策」の3分野に分けた29のQ&Aから構成され、すべて国立環境研究所の研究者が執筆しています。科学的公平さを踏まえつつ市民の方にもわかりやすく興味深い記述となるよう配慮し、地球温暖化に関する科学的に正確な情報を求める多くの方々のニーズにこたえようとする内容になっています。本書は3月下旬から全国の書店で販売されます。

『ココが知りたい地球温暖化』書籍表紙写真

独立行政法人国立環境研究所(以下「国環研」と略します。)では研究の成果を科学論文として研究者・学会に対して報告するだけでなく、一般の多くの方々に科学的に正確な情報をわかりやすく伝えることも重要と考え、さまざまな形で情報の提供を行っています。地球環境研究センターは1990年の発足以来、月刊のニュースレター「地球環境研究センターニュース」を発行しており(現在2,900部を印刷発行、ウェブサイトでも公開)、国内外の地球環境研究に関する最新の情報を提供してきました。

現在、地球温暖化は確実に進行しており、同時に温暖化防止に向けた社会的議論も急速に進展しています。こうした状況を受け「地球温暖化のことは、見聞きする機会が多いのでよく知っているようでいて、では腑に落ちているかというとそうでもないというのが実際のところのような気がします。地球温暖化にまつわるよくある質問、素朴な疑問に、国環研の第一線の研究者にズバリ答えてもらいます。」という趣旨で企画されたのが「ココが知りたい温暖化」という連載企画です。地球温暖化について一般市民の方から研究者によく寄せられる質問とそれに対する国環研の研究者の回答を、ニュースレターに毎号2つずつ掲載する形式で、2006年11月号から2009年1月号まで27回にわたり連載しました。回答作成にあたっては、研究者以外の職員も参加する所内意見交換会などを開催して、一般の方にもわかりやすいものになるよう努めました。

記事はニュースレターに掲載するだけでなく、地球環境研究センターのウェブサイト(http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/qa_index-j.html)に掲載したり、リーフレットを作成してイベントで配布するなどしてきましたが、より広く多くの方に読んでいただけるよう、今回一般書籍として刊行することとしました。書籍化にあたりQ&Aを「温暖化の科学」「温暖化の影響」「温暖化の対策」の3分野に分けて整理すると同時に、内容も最新の科学的知見に基づき加筆修正しました。各記事には執筆した研究者のプロフィールのほかに「読者へのメッセージ」も記し、研究内容や研究者をより身近に感じていただけるよう配慮しています。

本書には、ニュースレターに連載した54のQ&Aのうちの前半の29を収めています。後半についても続刊を計画しています。

本書は3月下旬から全国の書店で販売されます。

斉藤環境大臣からご推薦の言葉を頂戴しました。

「本書をお薦めします」  環境大臣 斉藤 鉄夫

地球温暖化問題は、地球生態系と人類文明とが共存できるかどうかを問うテーマであり、問題の解決には科学を道しるべとする必要があります。破滅的な被害を避けるためには、 2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減させることが必要ですが、このための対策を的確に進めていくためには、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)報告書など最新の科学的知見を、正しく理解することが大切です。

本書は、ややもすると分かりにくい科学的な情報を一般の方々にも理解しやすいQ&A方式で簡潔にまとめてあります。温暖化研究の第一線で活躍中の多くの研究者が、温暖化問題をもっと正しく、深く知りたいみなさんの疑問に明快に答えてくれるでしょう。

書 名: 気象ブックス026 ココが知りたい地球温暖化
著者名: 独立行政法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
出版社: 成山堂書店
ISBN: 978-4-425-55251-1
定 価: 1890円(本体1800円)
出版年月: 2009年3月
版型(サイズ): 四六判
ページ数: 208ページ

カバーには国環研の地球温暖化研究施設や研究成果がアレンジされています。
上: 富士北麓フラックス観測サイト。
中: 2011〜2020年における世界の気温上昇予測図(東京大学/国立環境研究所/海洋研究開発機構/文部科学省)。
下: 北海道落石岬の地球環境モニタリングステーション。
右: 沖縄県波照間島の地球環境モニタリングステーション。

本書の目次と執筆者

はじめに      笹野  泰弘
パート 1  温暖化の科学のココが知りたい!
Q 1  海と大気による二酸化炭素の交換    向井  人史
Q 2  氷床コアからわかること    町田  敏暢
Q 3  森林の二酸化炭素吸収量の測定方法    伊藤  昭彦
Q 4  地球全体の平均気温の求め方    野沢  徹
Q 5  二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠    江守  正多
Q 6  水蒸気の温室効果    横畠  徳太
Q 7  エアロゾルの温暖化抑止効果    永島  達也
Q 8  オゾン層破壊が温暖化の原因?    秋吉  英治
Q 9  コンピュータを使った100年後の地球温暖化予測     江守  正多
Q 10  気温変化予測に幅があるのは?    塩竈  秀夫
Q 11  IPCC報告書とは?    高橋  潔
パート 2  温暖化の影響のココが知りたい!
Q 12  温暖化と極端な気象現象との関係    原沢  英夫
Q 13  台風やハリケーンによる被害の増加は温暖化の影響?    長谷川  聡
Q 14  海面上昇とゼロメートル地帯    小倉  知夫
Q 15  海面上昇で消える島国    高橋  潔
Q 16  温暖化で収穫量は減る?増える?     増冨  祐司
Q 17  温暖化で死亡者が増加する?     小野  雅司
Q 18  海洋酸性化の影響    野尻 幸宏
Q 19  気温上昇抑制の目標     高橋 潔
パート 3  温暖化の対策のココが知りたい!
Q 20  2050年までに排出量半減とは?    肱岡  靖明
Q 21  温暖化対策の緊急性    亀山  康子
Q 22  途上国の温暖化対策は?    甲斐沼  美紀子
Q 23  植林による温暖化対策    山形  与志樹
Q 24  森林減少の防止による温暖化対策    山形  与志樹
Q 25  二酸化炭素を回収・貯留する技術とは?    芦名  秀一
Q 26  「炭素税」は効果がある?    増井  利彦
Q 27  車のかしこい使い方    松橋  啓介
Q 28  排出削減目標を達成できない場合     久保田  泉
Q 29  二酸化炭素の削減と生活の質    藤野  純一
おわりに      江守  正多