記者発表 2008年12月26日

ここからページ本文です

金属スクラップの発生・輸出・火災に関する研究について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ 同時配付 )

平成20年12月26日(金)
独立行政法人 国立環境研究所
循環型社会・廃棄物研究センター
国際資源循環研究室長:寺園 淳(029-850-2506)
担当:吉田 綾(029-850-2768)


独立行政法人国立環境研究所では、海上保安庁(海上保安試験研究センター、海上保安大学校)、消防庁(消防大学校消防研究センター)及び東京大学と協力し、環境省の廃棄物処理等科学研究費補助金の交付を受けて、平成20年度から3年間の計画で「有害物質管理・災害防止・資源回収の観点からの金属スクラップの発生・輸出状況の把握と適正管理方策」(代表研究者:寺園淳)の研究を実施している。

本研究の背景や目的、これまでに得られた成果などについて、その概要をお知らせする。

1.研究の背景

近年大量に中国などへ輸出されてきた金属スクラップ(平成19年の鉄スクラップの輸出量は645万トン)のうち、「雑品」などと称される一部の未解体のスクラップについて、鉛などの有害物質や使用済み家電などの混入により相手国から貨物が返送された事例が発生している。また、本年9月頃からは金属スクラップ価格の低下や、10月以降の世界的な金融危機の影響により、中国における金属スクラップ需要の低下が著しくなり、国内で回収された金属スクラップの輸出が停滞し始め、行き場を失う状況も生まれている。さらに、近年は年に2、3回のペースで金属スクラップを積載した貨物船での火災事故が発生していたが、今年は船積み時も含めると5回以上の火災事故が発生していることが確認されている。とりわけ今秋以降に港湾地区のスクラップ置き場などで金属スクラップの野積み量が増大し、さらなる火災の発生も懸念されている。

2.研究の目的

本研究では、中国などへ輸出されている鉄スクラップをはじめとする金属スクラップについて、どのような有害物質や混合物が混入しているか、火災の発生・拡大の原因は何であるか、などの知見が不足し、適切な安全管理、行政指導を行えていない状況にあると考えられることを重視している。このため、金属スクラップの発生源、内容物の分類・組成調査や火災実験などを通じて、有害物質管理・防災・資源回収の観点から金属スクラップの発生・輸出の実態を解明し、適正管理方策を提示することを目的としている。あわせて、法制度面からの検討も行い、輸出入両国での現在の法規制の課題や、輸出の現状と国内のリサイクル制度との関連性を検証し、改善策を提案する。

3.本年度の実施内容

中国向け輸出金属スクラップから発生した火災現場の現地調査を行い、火災原因であった可能性のある電池類のほか、中国で輸入が禁じられている鉛バッテリーや廃家電製品などを発見している。また、輸出予定の金属スクラップについて内容物調査を実施し、有害物質(鉛バッテリー、基板)、火災原因物質(鉛バッテリー、ガソリン関連器具)を発見しているほか、パソコンやエアコンなどの廃家電製品のように、材料リサイクル目的で海外に輸出されており、国内の回収・リサイクル制度のあり方の検討が望まれる循環資源も確認されている。

本年度内には、さらに内容物・組成の調査を継続して実施するとともに、火災発生の原因解明や事例収集・解析、バーゼル法による輸出確認の課題の検討などを行う予定である。

[平成20~22年度廃棄物処理等科学研究] 有害物質管理・災害防止・資源回収の観点からの金属スクラップの発生・輸出状況の把握と適正管理方策

(画像をクリックすると、PDF(220KB)が別画面で表示されます)