記者発表 2008年6月24日

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地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト
「脱温暖化2050プロジェクト」 成果発表のお知らせ
〜英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」の刊行〜

(環境省記者クラブ、筑波研究学園都市記者会同時発表)

平成20年6月24日(火)
環境省地球環境局総務課研究調査室
代表:03−3581−3351
  室  長 : 塚本  直也 (内線6730) 
  室長補佐 : 松浦  安剛 (内線6732) 
  係 員 : 田畑  桂 (内線6732) 
独立行政法人国立環境研究所(029-850-ダイアルイン番号)
  地球環境研究センター長 : 笹野 泰弘 (2444)
  温暖化対策評価研究室長 : 甲斐沼 美紀子 (2422)
  温暖化対策評価研究室 主任研究員 : 藤野 純一 (2504)


みんなで止めよう温暖化 チーム-6%

環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究「脱温暖化2050プロジェクト」は、2006年2月に日英共同研究「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」を発足させました。

このたび、その一環として行った世界および各国の低炭素社会シナリオについての分析の成果が、英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」として刊行されましたので、お知らせします。

同誌に収録された9編の論文は、2007年のG8ハイリゲンダムサミットで提唱された2050年までの温室効果ガス排出量半減という高い削減目標値について、世界および国レベルを対象にした数値シミュレーションモデルを用いて分析を行った結果、非常に困難な目標ではあるが技術的・経済的に達成可能なことを示すものです。

1.これまでの経緯

2005年のG8グレンイーグルズサミットで気候変動がG8の重要課題とされたことを受け、2006年2月、環境省と英国環境・食糧・農村地域省(Defra)の両大臣のイニシャティブにより日英共同研究「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」が発足しました。本プロジェクトは、日英が連携して、2050年における低炭素社会を実現することを目指した研究を実施するとともに、世界各国の同様の研究を集大成する国際ワークショップを継続的に開催し、国際的な政策形成に貢献することを目指すものです。http://www.env.go.jp/earth/ondanka/2050proj/press/index.html

2007年1月の日英の首相による「日英共同声明」は、「日本と英国は、引き続き低炭素社会に向けた科学技術に関する共同研究において協力する」とし、本共同研究を国家間の研究協力プロジェクトとして推進することが合意され、爾来日英間で強力に推進してきました。

日英共同研究の一環として、低炭素社会に関するモデル分析を行っている専門家による国際ワークショップ「Quantifying Energy Scenarios of a Low Carbon Society:低炭素社会におけるエネルギーシナリオの定量化」を2006年12月に英国オックスフォード大学で行いました*1。ここで議論されたモデル分析の枠組みに基づいて行われた研究成果が、このたび英文学術誌Climate Policyの増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」として刊行されました。

*1 国際ワークショップ「Quantifying Energy Scenarios of a Low Carbon Society:低炭素社会におけるエネルギーシナリオの定量化」
http://www.ukerc.ac.uk/TheMeetingPlace/Activities/Activities2006/0612QuantEnergy ScenariosLCS.aspx

低炭素社会に向けたエネルギー需給シナリオとは?「英国エネルギー研究センター・エネルギーモデル会合」に出席して(地球環境研究センターニュース Vol.17 No.12)
http://www.cger.nies.go.jp/publications/news/vol17/vol17-12.pdf

2.英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」

本増刊号に掲載された論文から、世界を対象とした4つのモデル(英国、日本、ドイツ、アメリカの研究グループ)と国を対象とした5つのモデル(カナダ、日本、英国、タイ、インドの研究グループ)を使って、2050年半減に見合うケース(これをCarbon Plusケースと称する)について分析した結果を下表に示します。

世界モデルではtCO2あたり平均コストでは50ドル程度、限界削減費用でも330ドル程度で2050年半減が可能なことがわかりました。国内モデルの分析では、国によって設定している削減目標値等が異なるため一概に比較できませんが、せいぜい2%のGDP影響で大幅なCO2削減が可能なことがわかりました。*2

この増刊号は、低炭素社会構築に向けた世界および国レベルの長期シナリオとその政策的な意味づけについて、複数のモデルで分析を行った世界初のものです。今後さらなる分析が行われ、低炭素社会を現実にする対策が提唱されることが期待されます。

*2 すべての論文は、http://www.earthscanjournals.com/cp/008/supp/default.htmで参照(有料)できます。

表1 低炭素社会シナリオ分析を行ったモデルの特徴とその結果

# 著者(国) モデル名 地域 モデルの 
種類
Carbon Plusケースの炭素税
/GDP影響
モデル/計算結果の特徴
1 Barker et al.
(UK)
E3MG 世界 TD $100/tCO2 (by 2030)
+1.10%
技術革新、炭素税収入の中立
2 秋元et al.
(Japan)
DNE21 世界 BU Averaged cost of $45.2 -
49.6/tCO2
国際的セクター別アプローチ
3 Remme et al.
(Germany)
TIMES 世界 BU $330/tCO2
-1.3%
技術革新
4 Edmonds et al.
(USA)
MiniCam 世界 BU $136/tCO2 技術革新、 統合評価
5 Bataille et al.
(Canada)
CIMS Hybrid $175-200/tCO2 価格と非価格評価、排出取引
6 藤野 et al.
(Japan)
Linked models Hybrid -0.83% to
-0.90%
-0.96% to
-1.06%
大幅な CO2 排出量削減の実現性評価
7 Strachan et al.
(UK)
MARKAL-Ma
cro
Hybrid $402_490/tCO2 -1.64% to - 2.21% 英国に対する国際的な動向
8 Shrestha et al.
(Thailand)
AIM BU (runs only up to $100/tCO2) 技術革新
9 Shukla et al.
(India)
AIM and
MARKAL
Hybrid 0% to -1.35% 持続可能な発展

添付資料

・Climate Policy増刊号 目次・概要(PDF 223KB)
英国エネルギー研究センターで行われる記者発表資料(2008年6月24日)