琵琶湖北湖で注目された湖水中の難分解性溶存有機物(dissolved organic matter, DOM)濃度の漸増現象は,その後,十和田湖,霞ヶ浦,印旛沼,さらに内湾の富山湾等で確認され、遍在的な広がりを見せている。
湖沼でのDOM濃度の上昇は,植物プランクトン増殖・種組成等湖沼生態系の変化,水道水源水としての健康リスク(トリハロメタン等)の上昇および異臭味等,湖沼環境に甚大な影響を及ぼすと考えられるため,緊急に,湖水中の難分解性DOMの漸増メカニズムを定量的に解明する必要がある。
本研究は,湖水溶存有機物(DOM)の特性・起源,湖沼生態系への機能・影響に関する科学的知見を集積し,その知見を踏まえて湖沼における難分解性DOMの主要発生源や動態を有機炭素としての物質収支に基づいて定量的に明らかにすることを目的とした。