摩周湖をフィールドとした調査研究の数はさほど多いものではない。それは急峻なカルデラ壁に囲まれた地形によって湖面へのアクセスが非常に困難なことに加え、国立公園の特別保護地区として手厚く保護されてきたことが主な理由である。一方、摩周湖は観光地としての風光明媚さ、世界一の透明度の記録を始めとする水質の良好さ、集水域が狭くて河川が無いという稀有な地形的・水文的特徴などにより、常に人々や研究者の関心を集めてきた湖である。
摩周湖は、集水域に人為的な汚濁源を持たないことや、湖水が極めて清澄かつ均一なことなど、地球環境汚染の長期監視プログラムの対象として優れた条件を備えていることから、25年前から国立環境研究所(当時: 国立公害研究所)が継続的な調査を実施してきた。
10年前には、UNEP(国連環境計画)のGEMS/Water (*) における、地球環境の自然状態の把握を目的とする「ベースラインステーション」に登録され、北見工業大学を始めとする多くの機関・研究者が参画して、年に1度、透明度や、有機汚濁、栄養塩類、微量重金属、微量有機化学物質等について総合調査を実施している。
阿寒国立公園が70周年を迎えた本年度、これまで摩周湖において得られてきた様々な情報を集積し、「GEMS/Water 摩周湖モニタリングデータブック(**)」を編さんした。そこに集められた摩周湖に関するこれまでの科学的な成果を総合的に整理し、多くの方に簡潔に伝えることを目的として標記シンポジウムを開催する。
* Global Environmental Monitoring System/Water: 地球環境監視システム/陸水環境監視計画
** 国立環境研究所地球環境研究センター、北見工業大学、北海道環境科学研究センター 編。A4。222ページ。平成16年10月発行予定。(CGER-REPORT, CGER-M016-2004, ISSN-1341-4356)