世界分類学イニシアティブ・アジア地域ワークショップの開催について
(環境省記者クラブ同時発表)


平成14年8月29日(木)
独立行政法人国立環境研究所
 生物圏環境研究領域長:渡辺 信(0298-50-2310)
 担当:企画・広報室 安田 直人(0298-50-2303)
     環境研究基盤技術ラボラトリー
              志村 純子(0298-50-2472)



 独立行政法人国立環境研究所では、第6回生物多様性条約締約国会議の決議を受けて、地球規模の生物多様性理解と保全を目的とした分類学の振興計画である世界分類学イニシアティブのアジア地域ワークショップを関係機関とともに開催する。ワークショップは国立環境研究所とマレーシア政府、オーストラリア生物資源研究所ならびに関連NGOがアジア地域でも有数の生物多様性を保持し、次回生物多様性条約締約国会議開催予定地でもあるマレーシアのクアラルンプールで行う。


1.概要
 国立環境研究所は我が国の世界分類学イニシアティブ(GTI)のフォーカルポイントの任にあり、環境省地球環境研究総合推進費等における研究課題の一部として、マレーシア科学技術環境省、Universiti Kebangsaan Malaysia、オーストラリア生物資源研究所、BioNET INTERNATIONAL、Species2000 Asia Oceaniaほかの協力を得て、同地域では初めての世界分類学イニシアティブ地域ワークショップを開催する。参加者は22カ国ならびに8国際機関の研究者など。

 4日間のワークショップでは、地域ですでに実施されている分類学研究プロジェクト、地域生物種チェックリスト等に関するポスターセッションを行い、国立環境研究所の実施したアジア地域15カ国の分類学ニーズとキャパシティの現状調査報告を踏まえて、同地域における持続的な分類学の研究プロジェクト開始と、分類学・情報学の研究者の相互協力による、生物種情報の国際的共有を強く呼びかける予定。併せて、生物多様性の宝庫である途上国の自立的で持続可能な分類学研究キャパシティ向上、国境を越えた生物種標本の管理とデータ共有、保全計画と生物資源の持続的利用へ向けて、各国研究機関、既存研究ネットワーク・国際機関の間で意見交換を行う。ワークショップの成果は生物多様性条約事務局に報告する。

 ワークショップに引き続き、サイドイベントとして分類学情報処理講習会、既存研究ネットワーク等の調整会合、野外調査・視察による研究者間の交流を予定している。 
2.開催日時及び開催場所
開催日時:2002年9月10日〜9月17日
(ワークショップ10日〜13日、14日以降講習会等)

開催場所:マレーシアクアラルンプール郊外、Marriot Ptrajaya Hotel
3.実施主体
共同主催:国立環境研究所、マレーシア科学技術環境省、Universiti Kebangsaan Malaysia、Universiti Malaysia Sabah、オーストラリア生物資源研究所、BioNET INTERNATIONAL

協力:生物多様性条約事務局、Species 2000 Asia Oceania事務局

ワークショップ議長:前生物多様性条約科学技術諮問機関会合議長 A.H.Zakri(現国連大学高等研究所所長
4.参加者及び参加機関
アジアオセアニア地域18ヶ国(オーストラリア、バングラディシュ、ブータン、ブルネイ、 中国、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、モンゴル、 ニュージーランド、フィリピン、サモア、シンガポール、タイ、ベトナム)

その他の地域4カ国(アメリカ合衆国、英国、オランダ、ドイツ)

国際機関 8機関(生物多様性条約事務局、GEF、BioNET INTERNATIONAL、ASEANET、 EASEANET、Species 2000 Asia Oceania、Global Biodiversity Information Facility、IPCC)からの研究者ならびに一部政府機関代表者による約95名 
<主なセッションとサイドイベント>
  • GTI作業計画の理解
  • 地球的視野からみたアジア地域の分類学
  • 分類学プライオリティに関する地域合意はいかに形成すべきか
    • 迅速な分類学キャパシティ構築(サブグループ討議)
    • 分類学研究における地域間協力
    • 標本・菌株の収集と公開
    • 侵入種問題と分類学
    • GTI実施と公平な利益配分
  • 情報共有・広域データプールの活用(サブグループ討議)
    • 地理情報システム
    • Global Biodiversity Information Facility
  • 総合討論
  • ポスターセッション(アジア地域の分類学研究の現状)
  • サイドイベント
    • 分類学情報処理講習会
    • Species 2000 Asia Oceania フォーラム
    • BioNET INTERNATIONAL 地域調整会合
    • 熱帯雨林保護地域視察・野外調査
    • マレーシア野生動物自然公園研究部・森林研究所視察
 
先頭へ

(参考) 世界分類学イニシアティブ(Global Taxonomy Initiative)について

 生物多様性条約の実施にあたり、地球全体をとおして名前すらわからない多くの生物種が保全の対象となるため、科学的根拠にもとづく保全計画の立案すら困難と指摘された。

 分類学は生息生物種の特徴を記載し、学名を与え、体系的に生物種をとらえる基盤的な学問であり、生物多様性の保全には不可欠の学問領域であるにもかかわらず、その専門的研究者数と研究に必要な基準標本・基準株の保存施設は世界的に著しく減少している。

 そこで、条約の実施のため緊急に分類学の振興をとりおこなうため、第5回締約国会議決議によって、締約国は世界分類学イニシアティブの中核となる機関を設置することとなった。日本では国立環境研究所がその任にあたっている。第6回締約国会議では、世界分類学イニシアティブの具体的な作業計画を採択した。

 作業計画では下記の5つの目標をかかげ、目標の実施には先進国と途上国が地域協働でとりくみ、締約国は既存の国連プログラムや研究ネットワーク間の適切な連携による目標の達成をはかる。

  1. 分類学のニーズとキャパシティに関する実態調査 (緊急実施)
  2. 分類学と関連科学の人的資源・インフラの整備 
  3. 分類学情報資源の国際共有化
  4. 生物多様性条約テーマ課題への分類学知識の利用
  5. 生物多様性条約横断的テーマ課題への分類学知識の利用

 今回マレーシアで開催するワークショップでは目標の1に関する調査報告と、目標の2、3について調査にもとづくアジア地域のGTI実施計画を検討し、生物多様性条約事務局への報告をとりまとめる。