NIES Field Studies Online Reports 2001

国連環境計画・陸水監視計画(UNEP/GEMS/Water)プロジェクト
摩周湖ベースラインモニタリング調査について
(2001.8.30:調査実施速報)

 国立環境研究所では、1980年より、北海道・摩周湖の湖水環境を総合的に調査してきました。
 1994年には、摩周湖を国連環境計画(UNEP)の陸水監視計画(GEMS/Water)におけるベースラインステーションとして登録し、国際的な協力の下で、湖水環境の調査を継続しています。
 今般、2001年度のベースラインモニタリング調査を行いましたので、その様子を御紹介します。
 2001年8月30日に観測された摩周湖の透明度は23.7mあり、昨年(17.2m:2000年8月21日)よりもやや高くなりました。
 詳しい調査結果については、分析・解析終了後に追って報告いたします。
 これまでの調査結果の概要やGEMS/WATERプロジェクトの詳細については
http://www-cger.nies.go.jp/~moni/gems/gems.htmlをご参照下さい。

 摩周湖はかつて透明度世界一と言われたほど、水の澄んだ汚染が少ない湖です。
 集水域には人為的汚染源はもとより、流れ込む河川もなく、孤立した水系になっています。
 湖の周辺が国立公園の特別保護地区に指定されており、人間の立ち入りも厳しく制限されています。
 

地元漁師の方の御協力により、調査のための水生生物を捕獲します(これら一連の調査はすべて、環境省の許可により特別に実施しているものです)。
 北見工業大学、北海道大学、千葉大学の協力により、湖水を深層、中層、表層(水深200m〜10m)からそれぞれ注意深く採水し、これを詳しく分析しています。

水生生物の調査では、良く育った成魚の内蔵に蓄えられる微量の化学物質の有無及びその量を測定します。
 これまでの調査では、農薬などの化学物質が極微量ですが検出されています。
 これらの化学物質は周辺の地上から流れ込んだものとは考えにくく、大気経由で空から摩周湖に入ってきたものと考えられます。


摩周湖の透明度の経年変化

透明度測定機器
実際の透明度は、直径30cmの白色円板を水中に沈めて見えなくなる深さと、次にゆっくり引き上げて見え始める深さの平均とされています。一般的に透明度が高いほど、水が澄んでいることになります。
 ちなみに、滋賀県の琵琶湖の透明度は場所や季節にもよりますが、2〜7m、茨城県の霞ヶ浦では1mに満たないことも多いと報告されています。
この図は、摩周湖の透明度の経年的な変化を示したものです。調査頻度が少ないために正確な変化を追うことができませんが、近年は透明度15〜30mの範囲にあります。今年は昨年よりはやや透明度が上がりましたが、ここ数年の変動の範囲内に収まっています。