トンボ採取協力のお願い

   様々な化学物質の特徴をうまく生かし、悪影響を抑えながら便利で快適、安全な生活を送ることができるように、私たちの研究所では環境中の化学物質の監視を行い、環境汚染の発生を未然に防ぐ努力を行っています。
   一般に、自然に生活している生物は餌を経由して様々な化学物質を取り込み、蓄積する傾向があります。この現象(生物濃縮)を利用して、環境中に存在する各種化学物質の分布やその増減を明らかにする研究、並びにそうして集めた試料を長期に保存して、万一の見逃しにそなえる事業(環境試料タイムカプセル事業)を進めています。

   特に安定で分解されにくく、生物に蓄積されやすく、毒性、有害性を持つ物質(残留性有機汚染物質:POPsと呼びます)は、人間など寿命の長い生物に高濃度に蓄積して悪影響を及ぼす危険性が高く、取り組み優先順位の高い物質です。これらについては法律で適切な規制を行うとともに、特にリスクの高いものについては国際条約(ストックホルム条約)などで各国の協力のもとに世界全体での削減、廃絶を目指しています。このストックホルム条約には、PCBやDDT、ダイオキシン類などあわせて12の化学物質が指定され、削減・廃絶努力が進められています。さらに、条約対象物質を審査の上追加する仕組みもあり、2009年には9つの物質が新たに追加されました。
   その中の一つ、PFOSと呼ばれる有機フッ素化合物が昆虫類、中でもトンボに比較的多く蓄積されていることが最近見つかりました。このPFOSは、衣類やじゅうたん、傘などの水をはじくためのコーティング材料や半導体の製造、油火災の泡消火剤の成分など、様々な目的で便利に使われてきたものですが、最近になってPOPsの性質を持つことが理解されて環境汚染の進行が懸念され、規制の対象に加えられました。このPFOSは水に比較的溶けやすく、河川や池の水を局所的に汚している様子が次第に分かり始めていますが、これまでの私たちの研究から周辺の環境の汚れ具合をトンボの体内の蓄積状況から読み取れることがわかってきており、トンボを使った全国調査を開始したところです。

   このホームページをご覧になった皆様、それぞれの地域でのトンボの採取にぜひご協力ください。