ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

長引く猛暑、どう立ち向かえばいいのか
—熱中症研究の専門家に聞きました

 猛烈な暑さが続いています。これまでに熱中症で救急搬送された人は例年の倍になる勢いです。

 しかもまだ8月初旬。まだまだ暑さと格闘する日々が待っています。

 これほどの長期間の猛暑にどう立ち向かえばいいのか。熱中症研究に長年取り組んできた小野雅司・客員研究員(環境リスク・健康研究センター)に話を聞きました。

救急搬送は倍増

長引く酷暑。熱中症の被害はどれほど深刻ですか?

 7月2日から8月5日までの1か月間で熱中症で救急搬送された人は62,621人。昨年の3か月間(7月~9月)の46,102人を軽く超えました。

 これまで最も暑かったといわれる2010年(7月~9月)の53,843人さえ超えています。

 例年、8月の救急搬送熱中症患者は7月と同じ程度なので、今年の患者数は10万人を超え、例年の倍以上になりそうです。

熱中症の患者数、死亡者数の表

 救急搬送時の死亡者数も今年(1か月分)は132人で、すでに昨年(3か月分)の45人を超えています。

 厚生労働省の死亡統計の公表は1~2年後になりますが、消防庁発表の死亡者数に対して、死亡統計での死亡者総数は約10倍になっています。

 今年の熱中症死亡者総数がどれくらい多くなるのか、心配です。

酷暑は8月も続きそうですが、警戒すべき点は?

 酷暑が続くと、熱中症で亡くなる方が急増する点です。

 消防庁の統計では、救急車で病院へ搬送される途中や病院到着直後に亡くなった方の数(死亡者数)を記録に残しています。救急搬送された方1,000人に対して死亡者数は通常は1人台でおさまっています。

 しかし、今年7月第3週(16日の週)、そして、埼玉県熊谷市で国内最高気温41.1度を記録した第4週(23日の週)には、それぞれ2.87人、2.84人でした。

普段の3倍近いですね。

 7月に入って厳しい暑さが続きました。救急搬送された患者数は、6月24日まで週あたり1,000人以下でしたが、7月に入って、高温が2週間続き、救急搬送患者数とともに亡くなる方が急増したと考えられます。

 2003年夏、欧州を熱波が襲いました。パリで平均気温30℃度以上(例年は20℃前後)が10日近く続き、この時の死亡者は最大で例年の5~6倍になりました。

暑さゆるんでも、油断大敵「身体は休めてない」

最高気温が35℃以上の日が何日続くと、危険なのでしょう?

 それはまだわからないのです。今年のように長く続いた経験はないからです。

 日本の夏は、日中は30℃を超えて身体が消耗しても、夕方からは夕立があって涼風が吹き、夜は身体のほてりがおさまってリセットされる、というパターンだったと思います。

 でも、今年は通用しません。夜も熱帯夜のままで疲れがとれません。その状態が何日も続くのですから、今まで想定していなかった事態は警戒する必要があると思います。

身体が悲鳴を上げ続けているということですか?

 そうです。そこでもう一つ心配なのは、暑さが一休みしたとき、「涼しくなった」といって、たまった仕事をこなそうとしたり、予定していた行事を実行したりしようとすることです。

 「涼しくなった」と感じても、それまでのように35℃以上になっていないだけで、実際にはまだ32℃、33℃の場合もある。30℃を超えると通常はやはり「暑い」のです。

 ですから、身体の疲れを気にせず、「(比較的)涼しい」からといって頑張り過ぎると、体調を崩すことになります。これから8月は、疲れに敏感になり、身体の悲鳴をよく聞くことが肝心だと思います。

暑さ対策は長丁場、部屋の使い方も見直してみよう

あとひと月、どう乗り越えればいいでしょうか。身の回りで出来ることはありますか?

 「これだ」という決定版はありません。熱中症の原因である、暑い環境と激しい作業や運動をどう避けるか、その対策をコツコツ実行するしかないです。

・直射日光をさえぎる。
どこから屋内に日差しが入るのか点検し、防ぐ工夫を。

・室内で温度の低い場所をさがす。
温度の高いところと低いところが必ずあります。風通しのいい場所もあるでしょう。食事やテレビを見る場所を少し移動するだけでも効果はあるはずです。

・時間の使い方にも注意。
早朝や夕方など日差しの弱い時間帯をうまく使う工夫を考えましょう。

 水分補給などこれまでの対策は当然ですが、身体は悲鳴をあげているのですから、今まで以上に神経を使う必要があります。

 また、高齢者、幼い子どもへの注意も今まで以上に必要だと思います。

室内ではエアコンと扇風機を一緒に使うと冷たい空気が巡回するのでいいと聞きますが、効果はありますか?

 部屋の中で温度の大きく違う場所をつくらないことは大事です。

 エアコンの設定温度を見るのではなく、部屋の温度を28℃にすることを目安に考えてください。暑すぎる、涼しすぎると感じたら適宜、調整が必要です。

室内での冷房温度と屋外での高温の差で体調を崩すという声も聞きます。何を心がけるといいでしょうか?

 難問ですね。自宅だと、外出の少し前にエアコンを停止して徐々に暑さに慣れるようにするといいかもしれません。

 職場や電車などの乗り物などでは、極端に涼しく感じる場合に備えて、上着を用意しておくのも重要だと思います。

話を聞いた小野客員研究員。

 最後に、熱中症対策のために、環境省が熱中症予防情報サイトを公開しています。

 このサイトでは、温度や湿度など熱中症の原因になる情報を、2日先まで、地域ごとに調べることができます。このような情報源も活用し、身体の悲鳴をよく聞いて、暑さを乗り切ってほしいと思います。(終)

<掲載日:2018年8月10日>
取材協力:国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 小野雅司 客員研究員
取材、構成、文・冨永伸夫(対話オフィス)

参考関連リンク

●環境省 熱中症予防情報サイト(外部リンク)
http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

■小野さんの研究について、さらに詳しく紹介(環境儀No.32より)
「熱中症の原因を探る-救急搬送データから見るその実態と将来予測」