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コミュタン福島、1周年記念イベント「夏の祭典」

環境ハカセと考えよう! 遺伝子組換え作物のこと

1.はじめに

 コミュタン福島-福島県三春町にある福島県環境創造センターの愛称です。ここでは東日本大震災の被災地の環境回復研究に取り組んでいます。今年7月にオープン1週年を迎え、記念イベント「夏の祭典」を開催しました。
 コミュタン福島の研究棟で現地調査・環境回復研究に取り組んでいる国立環境研究所福島支部が、「夏の祭典」でサイエンスカフェを開き、対話オフィスメンバーもファシリテーター(司会調整役)として参加しました。
 昨年のコミュタンの開設イベントでもサイエンスカフェを開きましたので、今回が第2弾です。今年のタイトルは「環境ハカセと考えよう! 遺伝子組換え作物のこと」です。植物、農作物を研究している玉置雅紀・主席研究員(福島支部環境影響評価研究室)が、遺伝子組換え作物の仕組みや現状について解説し、参加者のみなさんと意見を交わしました。

当日は子供から大人まで、40名ほどの市民の方々が参加されました。

2.テーブルの上のうちわに、びっくり

「品種改良」と「遺伝子組換え」 どう違うの?

 「これ、何に使うんだろうね」。カフェの始まる前、会場では参加者のみなさんがテーブルの上を見て首をかしげました。置いてあったのは、うちわです。今回のカフェでは、参加者のみなさんが意見を発表したり、参加者同士で話し合ったりできるように、工夫をしてみました。「遺伝子組換え作物」というと、「役に立ちそう」という声の一方で、「何かよくわからない」、「どこか不気味」などさまざまな意見があるテーマです。
 そこで、今回のカフェでは、意見を出し合うことをねらいにしました。
テーブルに置いたうちわは、表と裏に〇と×が書いてあって、話題提供者が発表の途中で、参加者に質問をして、「賛成」(〇)か「反対」(×)か、をうちわで答えてもらいました。「うちわアンケート」です。

 さて、本番です。玉置さんはまず、「品種改良」と「遺伝子組換え」の違いから説明を始めました。「品種改良」では、例えば品種A(味がまずい、病気に強い)と品種B(味がいい、病気に弱い)がある場合に、AとBそれぞれの好ましい性質(Aの病気に強い、Bの味がいい)を受け継ぐ品種Cを作るために、「かけあわせ」を繰り返します。ただ、この方法だと、「かけあわせ」を繰り返すので時間がかかるうえに、目的通りの品種がなかなか出来ないという弱点があります。一方で、「遺伝子組換え」は人による技術的な方法で、ある役割を持つ遺伝子(例えば病気に強い)を他の作物に遺伝情報として組み込みます。この方法だと、好ましい性質の品種を確実に作ることができるわけです。

最初に説明を受ける会場の様子
会場の様子。みなさん玉置さんによる解説を真剣に聞いていらっしゃいました。

3.青や紫のカーネーションが登場

どんな遺伝子組換え作物がありますか?

 そして、どのような遺伝子組換え作物があるのかについて、玉置さんは第一世代の組換え作物として、除草剤に強いダイズ(従来は除草剤を散布すると雑草とともにダイズも枯れたが、このダイズは除草剤が効かず、雑草だけが枯れる)、害虫に負けない性質を持つトウモロコシなどを紹介。そして第二世代の組換え作物として、ビタミンAの元になるベータ・カロチンを含んだコメ(ゴールデンライス)やスギ花粉症緩和イネなどを紹介しました。
 第一世代の組換え作物は農家の人たちにとって、除草剤、殺虫剤を減らすことができる利点があります。第二世代の組換え作物は、暮らし、健康に役立つ視点で開発されているという傾向を指摘しました。また、本来は白いはずなのに青色や青紫の花びらを作るカーネーション、暗いところで光る蛍光のカイコや魚も誕生していると紹介しました。
 会場のテーブルには、遺伝子組換え技術により作られた青や青紫のカーネーションが飾られていて、参加者は手に取って見入っていました。

遺伝子組換え技術により作られたカーネーションを手に取って見る参加者
各テーブルごとに、遺伝子組換え技術により作られたカーネーションが置かれ、参加者が実際に手に取って観察する姿も見られました。

 そして、「遺伝子組換え作物」をどれくらい口にしているのかが気になるところですが、玉置さんは、自給率がほぼゼロ%の作物(トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタ)では、輸入量全体のなかに占める「遺伝子組換え」分の割合が、89%になると推定されると説明し、さらに、「遺伝子組換え食品の表示義務」では、ダイズ油、コーン油などは表示義務がないことなどから、「遺伝子組換え作物を避けるのはほぼ不可能」と指摘しました。
 その一方で、「遺伝子組換え食品」の認可手続きについて、安全性の検査が、通常の作物に比べてはるかに厳しいことも説明。農水省、環境省、厚労省などによる主に4段階を経て、初めて商品化されていることも指摘しました。

4.うちわでアンケート

日本では食品として商品化されていますか?

 今回のカフェでは、冒頭(玉置さんの説明を聞く前)と最後で、「うちわアンケート」を実施し、それぞれで次のふたつの質問をしました。

・質問1 遺伝子組換え作物を食べたことがありますか?
・質問2 遺伝子組換え作物を食べることに抵抗がありますか?

 質問1の回答「食べたことがある」は冒頭では45%でしたが、最後では94%。質問2の回答「抵抗がある」では、冒頭が94%で、最後は24%でした。「食べたことがある」と考えた人が、玉置さんの説明を聞いた後で大きく増えました。また「抵抗がある」と答えた人は、説明を聞いて大きく減りました。

うちわを使って回答する会場の様子
今回取り入れた「うちわアンケート」。表裏に書かれた〇×で質問に回答していきました。

 この結果もふまえて玉置さんは「遺伝子組換え作物について、わからないからこわいという状態はただして、今回のカフェをきっかけにご自分で判断できるようになってほしい」と話しました。
 会場との意見交換では、「日本ではどの程度、食品として商品化されているのか」という質問がでて、それに対して、玉置さんは「日本では研究目的での遺伝子組換えはしているが、食品として商品化はされていない。企業が、遺伝子組換え食品は消費者に抵抗感があると考えて、商品化に乗り出せないのではないか」と指摘しました。また、スギ花粉症治療イネについて、「安全なのか」という声が出て、それについては、「使用する場合は、医薬品扱いにして医師の処方箋が必要になる見通し」と説明しました。さらに、「もともと自然界に存在していないものを、人間が作り出すということに不安がある」などさまざまな意見が交わされました。

4.参加者の意見は?

 実施後にアンケートを実施し、テーマについて聞ききれなかった意見や考えを集めました。そのうちいくつかを紹介します。

 市民の率直な意見が、環境問題に取り組む研究に示唆をもたらすことは多くあります。これからも引き続き、環境研究についてざっくばらんに意見交換できる場を設けていきたいです。

<掲載日:2017年11月22日>
構成、文・冨永伸夫(対話オフィス)