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[サイエンスカフェ]福島県環境創造センターのグランドオープン

福島県三春町に整備された福島県環境創造センターが2016年7月にグランドオープンを迎えました。同センター研究棟内に福島支部が開設されています。
オープン記念イベントで国立環境研究所はサイエンスカフェを開き、対話オフィスのメンバーもファシリテーターとして参加しました。

今回は30分間のカフェを2回開き、災害環境研究に携わる2人の研究者がそれぞれ話題提供し、参加した住民と意見交換を行いました。

約50人の参加者があり、その多くは三春町や近隣の郡山市に住んでいる地元の方々でした。

避難区域の生き物はどう変わる?

はじめの話題は、避難区域での生き物の変化です。吉岡明良研究員(福島支部/生物・生態系環境研究センター)が、「避難指示区の生態系モニタリング ~避難地域の生き物はどうなっているか?~」と題して、福島県内の数十か所で行われている哺乳類や昆虫類など生物のモニタリング調査について紹介しました。
原発事故の影響で人間の住まなくなった地域では、自然環境が大きく変化していると考えられます。吉岡研究員らは、立ち入りが制限された地域に自動撮影カメラを仕掛けて、どんな生き物がどのような生態を見せるのか、福島で継続して研究を続けます。この日は、撮影されたクマやイノシシなどの映像が流され、普段見ることのない動物たちの様子に、参加した子供たちも熱心に見入っていました。これを見た参加者からは、人がいなくなった影響でクマの被害が増えることを心配する声も聞かれました。
また、ICレコーダーで鳥類の鳴き声を録音する取り組みも行われています。これは「バードデータチャレンジ」という市民参加型イベントにつながり、地元の参加者と一緒に音声を聞いて種の判別を行います。鳥類の分布情報はウェブ上でも公開される予定です。
今後、環境や生物がどのように変化し、人間の生活にどのような影響があるのか、参加者の関心が高いことが分かりましたが、これに答えるには今後の長期的な研究の成果が待たれます。

カフェの合間に、自動撮影カメラの現物を見せながら参加者と話をする吉岡研究員(左)

地域に合った復興まちづくり

話題を変えて、五味馨研究員(福島支部/社会環境システム研究センター)が「地域の資源・エネルギーを生かす復興まちづくり」と題して話題提供をしました。
震災からの復興と長期的視野でのまちづくりを考えるポイントとして3つが示されました。まず、人口を維持する政策。次に、地域に合った産業やエネルギーの創出。最後に省エネの推進です。人口維持対策として、五味研究員はシミュレーションを行った結果を用いながら、農林水産業の振興、子育て支援など、具体的にどの政策が人口をどう推移させるのか様々なパターンを示して、まちの将来像を会場と一緒に考えました。
また、省エネについては、国環研が福島県の他市町村と協力して取り組んでいる情報通信技術を活用した例が紹介されました。タブレットを用いてエネルギー消費を見える化することで省エネにつなげる取り組みに、自分の地域でも活用したいと興味を持った参加者も多いようでした。

複雑で難しいテーマでも、ところどころにクイズも交えて会場の興味を引いた五味研究員(右)

これからの福島での研究活動に向けて

福島支部が開所したことで、国環研は地域に密着して災害環境研究や復興支援を進めていくことになりました。今回のカフェでは、研究の内容を地域の方々に紹介して国環研の取り組みを知ってもらうことに加えて、地域の声に耳を傾け、環境研究に対してどのような関心やニーズがあるのかを国環研側が受け止めることもできました。放射線やエネルギーに関わる質問など研究者個人では答えるのが難しい場面もありましたが、どのような意見も真摯に受け止めて応え、そうした態度を参加者に見てもらうことが、研究所と地域との間の良好な関係を育む第一歩になったのではないでしょうか。