地球温暖化による気候変化と | ||
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1. 排出モデル気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2000年に排出シナリオに関する特別報告書(SRES)を取りまとめ、我々のグループのモデル(アジア太平洋地域統合評価モデル; AIM)もこの中で中心的な役割を果たしました。SRESでは、世界の発展の形態について4つの将来像(図1)を設定し、それぞれの将来像のもとに人口、経済活動、技術発展、エネルギー、土地利用などの変化を整合的に推定しました。さらに、これらをもとにそれぞれの将来像について二酸化炭素等の様々な気体の将来の排出シナリオを推定しました(図2)。シナリオの違いにより、将来の排出量が大きく異なることが分かります。また、将来は発展途上国の公害対策が進むことが予想されるため、従来のシナリオ(IS92a)に比べて二酸化硫黄排出量がどのシナリオでも小さく見積もられています。 | ||
![]() 図1 SRESシナリオにおける4つの世界像 | ||
![]() 図2 SRESによる二酸化炭素と二酸化硫黄の排出シナリオ (A1はエネルギー技術進歩の違いによりさらに3つに分けられている) | ||
2. 気候モデル気候モデルでは、大気と海洋の運動、陸面を含めた熱・水交換などを記述する物理法則をコンピュータ上で近似して計算します(図3)。大気中の二酸化炭素等の増加シナリオを与えながらこの計算をすることにより、将来の気候変化を推定します。我々のグループでは、東京大学気候システム研究センターとの協力により、SRESの4つのシナリオに基づく将来の気候変化を計算しました。我々の計算は、17種類の温室効果気体と4種類の大気中微粒子(エアロゾル)を考慮しています。大気中の煤(炭素性エアロゾル)が日射を吸収して大気を加熱する効果、エアロゾルが増加すると雲が増加して大気を冷却する効果(間接効果)を現時点では最も進んだ形で取り入れています。 | ||
![]() 図3 気候モデルの概念図 | ||
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21世紀終わりには現在と比較して全球平均地表気温が3.3〜5.5℃上昇すると推定されます(図4)。この値は他の研究機関の平均的な推定値より1℃ほど高いですが、気候モデルには一般に不確定なパラメータが多く、現在の不確実性の範囲内でこの程度の違いが生じることが分かっています。気候変化の地理分布パターンはどのシナリオでも類似しており、北半球高緯度の陸上で気温上昇が大きい、降水は熱帯と高緯度で増加し、亜熱帯の乾燥域で減少するといった特徴があります(図5)。これらの特徴は他の機関の結果にも概ね共通して見られます。
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![]() 図4 SRESシナリオに対する全球平均地表気温変化の見通し | ||
![]() 図5 SRES A2シナリオに対する21世紀後半の年平均地表気温(上) および降水量(下)変化の地理分布 | ||
3. 影響評価モデル影響評価モデルでは、気候変化シナリオと社会経済的要素の変化シナリオから、地球温暖化がもたらす社会への影響を推定します。農業影響を例に取ると、気候変化シナリオをもとに土地利用や各種農作物の気候適性等を考慮して作物の生産性変化を推定し、さらに貿易や経済・技術の発展などを考慮することで、食料の需給への影響を評価します(図6)。さらに、この結果をもとに、影響を緩和させるための適応策についても検討します。 | ||
![]() 図6 農業影響評価の処理の流れ | ||
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影響評価の例として従来の気候変化シナリオをもとにAIM影響評価モデルにより推定された冬小麦の生産性変化を図7に示します。中国南部と東北部では主にそれぞれ気温上昇と乾燥化により生産性が低下する一方、高緯度地域では気温上昇により生産性が向上することが示唆されています。 | ||
![]() 図7 地球温暖化によるアジア太平洋地域の 冬小麦の生産性の変化 | ||
4.モデルの総合化3つのモデルを総合的に組み合わせて使う際の処理の流れを図8に示します。この総合化により、1.モデル間のデータの利用が迅速かつ整合的に行える、2.各モデルの持つ不確実性を考慮して全体の結果を吟味できる、3.影響モデルから気候モデルへのフィードバックを考慮できるなどの利点が得られます。また、各モデルの特性をよく理解した研究者が協力して研究を進めること自体に、地球温暖化の影響と対策効果の総合的な評価をより高い信頼性で行う上で重要な意義があると考えています。 | ||
![]() 図8 総合化の処理の流れ | ||
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