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水位操作による湖沼生態系レジーム管理にむけた研究(令和 3年度)
Water level operation for ecosystem regime management of lakes

研究課題コード
2022AO002
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
水位,湖沼,生態系レジーム
キーワード(英語)
water level,lake,ecosystem regime

研究概要

研究基盤を活用した水位操作実験により水草発芽・プランクトン発生促進、底泥からの栄養塩溶出抑制、底泥流出等を通じた生態系レジームの応答の詳細を明らかにするとともに、水温等の環境諸条件に対する依存性についても明らかにする。これらの結果にもとづき、水位操作と生物・化学・物理プロセスを通じた湖沼生態系レジームの応答の統合的な記述と予測を行う理論モデルを構築する。その上で、具体的な池沼・湖沼環境条件を参照した予測を行い、様々な条件下での水位操作の効果の検討を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

サブテーマ1
 湖沼生態系の栄養塩、植物プランクトン、水草量などの主要な要素の動態を記述する汎用な理論モデルを構築し、水位変化に対するシステムの挙動の予測を行う。理論モデルには、既存の基礎的なモデル(Genkai-Kato & Carpenter 2005 Ecology)を参照しつつ、サブ2の結果にもとづいて、湖沼の形態、水位低下による直接的な底泥からの栄養塩溶出抑制効果、水草生長による間接的な栄養塩溶出抑制効果、底泥の排出率などのカギとなる水位操作の作用プロセスを組み込み、システムの挙動に対する感度や条件依存性を定量化する。
霞ケ浦・琵琶湖等で蓄積された湖沼の水質・生物についての長期観測データを用いて因果関係分析を実施し、湖沼生態系の構成要素間の動態の因果関係を定量化する。その上で、理論モデルの構造や、モデル内での要素間の依存関係についての仮定との整合性を検証する。その上で、個別の池沼・湖沼環境を参照したモデル予測を行い、様々な条件下での水位操作の効果の検討を行う。

サブテーマ2
実験?:大型実験プールを用いて水位操作シミュレート実験を実施し、水質、生物、土壌の高頻度・高解像度観測を行うことで、水位操作に対する生態系の応答と主要なプロセスを明らかにする。臨湖実験施設が有する2つの大型水界に霞ヶ浦の除濁湖水を導入し、そのうちの1つを水位操作を行わない対照区、もう一つを水位操作を行う処理区とし、反復がないため、randomized intervention analysisなどの手法を用いて事前・事後のデータを比較する。水位操作規模は、1年目は完全な干出効果、以降は、理論モデル予測等も参照しながら中程度の水位低下効果を検証する。実験の測定項目は、栄養塩、遺伝子情報による植物・動物プランクトン群集、底泥流出量、底泥からの栄養塩溶出量とし、実験期間中は高頻度に測定や採水を行う。特に、水温・水位などの物理環境やクロロフィル量などの水質データについては、データロガーを設置、高頻度で測定を行う。また生物については、水中のDNA塩基配列を用いて植物・動物プランクトンを対象とした高分類精度かつ高頻度の分析を試みる。
実験?:実験?で重要性が示されたプロセスについて、温度条件が変わった場合の効果をバイオトロンやメソコスム等を用いた実験で検証する。特に、水位変動をシミュレートした水分条件および温度を処理とする実験を設計し、水草種子・散布体および動物プランクトン休眠卵の発芽・発生の反応、および水草と動物プランクトンの発生との相互作用を観察・検証する。
実験?:東京都が所管する公園池沼で実施が計画されている水位低下管理(いわゆる「かいぼり」)を野外実証実験の機会と捉え、水位管理前後で水質、生物、土壌の測定を実施し、生態系応答を明らかにする。


今年度の研究概要

臨湖実験施設の大型水界での水位操作実験、および水温・水位の複合影響検討のための小規模実験を実施する。また、水位管理が実施される公園池等において、自動センサー等を利用した管理前後の水質・生態系応答の観測を実施する。これらの実験・観測結果を反映し、理論の高度化を行う。

課題代表者

角谷 拓

  • 生物多様性領域
    生物多様性評価・予測研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(農学)
  • 生物学
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担当者