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水生植物(水草)の体系の違いに着目した感受性分布(SSD)に関する研究(令和 2年度)
Study on species sensitive distribution (SSD) based on the difference of somatotype of aquatic plants

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
2022CD020
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
水生植物,種の感受性分布
キーワード(英語)
aquatic plant, species sensitivity distribution

研究概要

水生植物(水草)は、魚類の産卵場所やその他多くの生物に生育場所を提供することから、水草が水域生態系に果たす役割は非常に大きい。さらに、日本に約500種生育すると言われている水草の中には絶滅危惧種も多数存在することから、影響が懸念される農薬や一般化学物質を対象とした生態リスク評価が必要である。多様な水草類全体を考慮した信頼性の高い評価のためには、種の感受性分布(SSD: Species Sensitivity Distribution)の解析などが必要である。一方で、水草類は植物体の一部が水中にあるものやそのほとんどが水中にあるものなど様々な体系を有するが、体系の違いはばく露量と密接に関連することから毒性値を大きく左右する。この水草の体系の違いは系統分類と一致しないことから、系統分類に基づいたSSD解析では水草類の感受性分布を正確に把握できない。そこで、本研究では体系分類に基づいたSSD解析を行うことで水草類の感受性分布を正確に把握することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

本研究では、まず、?体系別に3種程度の水草を選定し(複数の分類群を含むように)(以下記述参照)、それらの培養系を確立するとともに、?毒性試験法の開発を行う。?毒性試験の結果に基づき、系統分類に基づいた感受性分布および水草類の体系分類に基づいた感受性分布との比較検証を行うことで、水草類の感受性分布について総括する。

?水草の収集および実験室内での培養系の確立:異なる体系に属する複数の水草の収集を行うとともに培養系を確立する。抽水植物に属するマコモ(Zizania latifolia)、ホムロイソウ(Sheuchzeria palustris)に関しては、日本に広く分布するものであり、自然から採集し培養系を確立する。沈水植物については、ユキノシタ目ホザキノフサモ(Myriophyllum spicatum) 、マツモ目マツモ(Ceratophyllum demersum)、オモダカ目セキショウモ(Vallisneria asiatica)を候補とし、このうちホザキノフサモはすでに当研究室において培養系を確立している。マツモに関しては、観賞用として広く販売されているので、採集が困難な場合には販売されているものを用いて培養系を確立する。浮葉植物に関しては、カワツルモとヒルムシロなどを候補とし、これらは日本に広く分布することから、自然から採集したものを用いる。浮水植物に属するウキクサ、ホテイアオイ、浮遊植物に属するノタヌキモ、ヒンジモについてはすでに当研究室において培養系を確立している。

?多様な水草を用いた生態毒性試験法の開発:抽水植物:植物体長に基づく生長速度をエンドポイントとした試験法を開発する。抽水植物の試験は土壌を必要とするが、土壌の代替としてガラスビーズを用いた試験法を開発する。沈水植物については、ホザキノフサモ を用いた試験法OECD TG238に準じた植物体長に基づく生長速度をエンドポイントとした試験法を開発する。浮葉植物については、葉面積に基づく生長速度をエンドポイントとした試験法を開発する。浮水植物については、コウキクサ を用いた試験法OECD TG221に準じた葉数および葉面積に基づく生長速度をエンドポイントとした試験法を開発する。浮遊植物については、植物体長に基づく生長速度をエンドポイントとした試験法を開発する。

?感受性分布(SSD)の検証:農薬10種程度の毒性試験結果からEC50を算出し、系統別に分類したデータセットに基づいたSSD解析と体系別に分類したデータセットに基づいたSSD解析の結果からそれぞれHC5を算出することで、系統分類に基づいた感受性分布および水草類の体系分類に基づいた感受性分布との比較検証を行う。

今年度の研究概要

?水草の収集および実験室内での培養系の確立
以下、異なる体形に属する複数の水草の収集を行うとともに培養系を確立する(図2)。抽水植物に属するマコモ、ホムロイソウに関しては、日本に広く分布するものであり、自然から容易に採集できる。沈水植物のホザキノフサモはすでに当研究室において培養系を確立している。マツモに関しては、観賞用として広く販売されているので、採集が困難な場合には販売されているものを用いる。浮葉植物のカワツルモとヒルムシロに関しては、日本に広く分布することから、自然から採集したものを用いる。浮水植物のウキクサ、ホテイアオイ、浮遊植物のノタヌキモ、ヒンジモはすでに当研究室において培養系を確立している。培地に関しては、Steinberg培地やAndrew培地など有用な培地がすでに開発されており、pHや栄養塩濃度を改変することで全ての種に対応できると考えている
• 抽水植物:マコモ(Zizania latifolia)、ホムロイソウ(Sheuchzeria palustris)
• 沈水植物:ユキノシタ目ホザキノフサモ(Myriophyllum spicatum) 、マツモ目マツモ(Ceratophyllum demersum)、オモダカ目セキショウモ(Vallisneria asiatica)
• 浮葉植物:カワツルモ(Ruppia maritima)またはヒルムシロ(Potamogeton distinctus)
• 浮水植物:オモダカ目ウキクサ(Lemna minor)、ツユクサ目ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)、
• 浮遊植物:シソ目ノタムキモ(Utricularia aurea)またはオモダカ目ヒンジモ(Lemna trisulca)、デンジソウ目サンショウモ(Salvinia natans)

関連する研究課題

課題代表者

山岸 隆博

  • 環境リスク・健康領域
    環境リスク科学研究推進室
  • 主任研究員
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