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新規POPs含有プラスチック廃棄物の環境上適正な管理に向けた国際的な分析技術基盤の整備(平成 31年度)
Promotion of international harmonization of analytical methods for environmentally sound management of plastic wastes containing newly listed POPs

予算区分
BA 環境-推進費(委託費)  
研究課題コード
1921BA012
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
残留性有機汚染物質,プラスチック添加剤,低濃度POP含有量,臭素系難燃剤,塩素化パラフィン
キーワード(英語)
Persistent Organic Pollutants, plastic additives, low POP content, brominated flame retardants, chlorinated paraffins

研究概要

残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)はPCBsや農薬などを対象に2004年に発効し、近年ではプラスチック添加剤も新たな対象物質(新規POPs)として追加されている(表1)。POPs含有廃棄物はバーゼル条約の下で作成されるテクニカルガイドラインに則って処理されるが、新規POPsについてはガイドラインの土台となる適正処理の対象とする濃度基準(LPC)の策定および検定方法の確立など国際的に多くの課題が残されている。
また新規POPsを含有するプラスチック製品は多岐にわたり、含有製品や廃棄物の国際的な流通、リサイクルなど循環利用に伴うPOPsの希釈・拡散、および廃棄に伴う環境流出が懸念される。特に今年に入り、使用済みプラスチックの資源循環の要を担ってきた中国で輸入禁止措置がとられ、POPs含有プラスチック資源の国際的な流通に変化が生じている。新たな受け入れ国となった近隣国は、POPs含有プラスチックの適正処理技術だけでなく、分析評価の基盤も脆弱であり、新規POPs汚染実態把握や、検定技術・調査プロトコルの供与、およびそれらを通した途上国の環境問題意識の向上は喫緊の課題である。加えて、最近話題となっている海洋プラスチック問題についても、プラスチック添加剤であるPOPsの環境流出や拡散の観点からの知見は極めて乏しく、実態把握への早急な対応が望まれる。
本申請課題では、新規POPs含有廃棄物の検定方法について、国内外の相互検定を通して国際的にコンセンサスの得られた方法の開発を目指すとともに、将来的な国際標準化も念頭においた分析基盤の整備を目的とする。また、アジア途上国を含めた諸外国の新規POPs含有プラスチック廃棄物の処理や循環利用の実態の比較、さらには海洋を含めた環境流出の挙動解明を試み、環境上適正な管理に向けた新たなPOPs分析評価技術のニーズの探索を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

本申請課題では、環境政策上重要であるPOPs条約新規対象物質について、学術的知見の不足しているプラスチック製品ライフサイクル静脈側に特化した調査研究を実施する。具体的には、分析上の課題の解決や途上国への導入も念頭においたPOPs含有プラスチック廃棄物の検定方法の検討・標準化を推進するとともに、各国で共通して発生するプラスチック廃棄物の標準試料を作成し、新規POPs含有量の国際相互検定を実施する。また、新規POPs含有プラスチック廃棄物の処理や循環利用の実態、環境流出に関する知見を集積するとともに、プラスチック風化過程でのPOPs溶出挙動などを各種模擬試験で把握し、将来的な分析評価方法のニーズを明確化する。以上の結果をもとに、プラスチック廃棄物を対象としたPOPs分析を国際的にリードし、国内の環境行政支援および条約ガイドラインへの情報提示を進める。国内外の研究機関のみならず、技術やノウハウを有し、近年アジアの途上国にも拠点を形成しつつある日本の関連業界等との連携や意見交換を通じ、国際展開・貢献を目指した新規POPs分析技術の基盤整備の方向性を提示する。

今年度の研究概要

サブテーマ?プラスチック廃棄物に特化した検定方法の開発および妥当性評価では、臭素系難燃剤(PBDE、HBCD)について、プラスチック廃棄物を対象とした簡便な一斉分析法を検討する。短鎖塩素化パラフィン(SCCP)含有廃棄物の判定を目的とした標準検定法の開発に挑戦する。適用事例のある各手法の比較や課題の洗い出しとともに、SCCP関連物質として、より鎖長の長い中鎖・長鎖塩素化パラフィン(MCCP・LCCP)も対象に加えた検討にも着手する。サブテーマ?プラスチック廃棄物試料を用いた試験所間国際相互検定と標準化の推進では、初年度は、試料中夾雑物の影響を排除するため、PBDEおよびHBCDの標準溶液を用いて相互検定を実施し、測定に使用した装置の種類や条件の違いによるデータのばらつき等を評価する。つづいて、廃製品抽出液を対象に相互検定を実施し、前処理等に伴うばらつきを含めてデータを評価する。二年目に配布するテレビケースや断熱材の標準試料の調製に着手する。サブテーマ?POPs含有プラスチック廃棄物の処理・循環実態解明および排出動態探索では、各国の新規POPs含有プラスチック廃棄物の処理や循環利用、環境流出の事例を収集し、とくに途上国で処理等が滞っているなど課題のある処理工程を抽出する。その際、サブテーマ?の相互検定参画国等を対象にヒアリング調査も実施する。また、新規POPs含有プラスチック廃棄物の処理・再資源化施設や最終処分場が、POPs含有マイクロプラスチックの陸域発生源として寄与しているか明らかにするため、国内の廃棄物処理施設を対象とした発見的、探索的フィールド研究に着手する。

外部との連携

千葉大学、いであ株式会社 環境創造研究所

課題代表者

梶原 夏子

  • 資源循環領域
    試験評価・適正管理研究室
  • 主幹研究員
  • 博士 (学術)
  • 化学
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担当者