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パリ協定気候目標と持続可能開発目標の同時実現に向けた気候政策の統合分析(平成 30年度)
Integrated Analyses of Climate Policies for Simultaneous Realization of the Paris Agreement and the SDGs

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 2-1702
研究課題コード
1719BA010
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
パリ協定,持続可能開発目標,統合評価モデル
キーワード(英語)
Paris Agreement,SDGs,integrated assessment model

研究概要

パリ協定では全球気温上昇を工業化前比2℃/1.5℃に抑制する気候目標が合意された。しかし、同目標の達成に向けて必要な世界規模での気候政策(排出経路等)、及びそれに整合的な我が国の中長期の気候政策についての包括的検討は足りていない。そこで本研究では、長期気候目標・持続可能開発目標の同時実現に向けた世界規模及び我が国の気候政策の統合分析に取り組む。
サブテーマ1では、主に二つの統合評価ツールを用いる。第一は全球排出経路モデルであり、最新の気候科学ならびにGHG削減費用の知見をふまえ、目標達成に必要な全球排出経路とその不確実性を分析する。第二は世界経済モデルであり、気候以外の開発目標の定量分析のための拡張を施し、2℃/1.5℃の気候目標について、21世紀末までの社会経済・土地利用・GHG排出・持続可能性指標の統合シナリオを提示する。サブテーマ2では、国内サービス需要モデル(輸送、家計消費等)と国内経済モデルを改良し、炭素税等を含む包括的な政策オプションの検討を実施し、サブテーマ1が描く全球気候政策に整合的な形で、我が国でのゼロ排出実現に向けたシナリオを提示する。また、他サブテーマと連携してステークホルダー対話を実施し、将来シナリオをより政策検討に資するものに発展させる。サブテーマ3では、日本技術モデルの改良および技術情報の拡充を通じて、サブテーマ1が描く全球気候政策に整合的な形で、我が国でのゼロ排出実現に向けたエネルギー技術対策の定量化を実施する。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:

全体計画

初年度には、IPCC1.5℃特別報告書への寄与を企図した1.5℃目標に関する緩和シナリオの定量化を実施する。また、ゼロ排出気候政策検討のための日本を対象にした緩和分析モデル群の拡張を行う。二年度目には、2℃/1.5℃目標に整合的な排出経路ならびにその持続可能開発への含意を描くための、世界を対象にした緩和分析モデル群の拡張を行う。また、初年度に拡張した日本を対象にした緩和分析モデル群を用いて、日本のゼロ排出気候政策の検討を開始する。最終年度には、初年度〜2年度目までに拡張したモデル群を利用し、世界規模に関しては2℃/1.5℃目標の困難性の明確化とその克服のための施策の検討を、日本に関しては2℃/1.5℃目標に整合的な国内排出目標達成のためのロードマップの提示を行い、グローバルストックテイク・約束草案見直しに係る国際・国内の政策検討への知見提供を行う。

今年度の研究概要

サブテーマ1では、全球排出経路モデルの高度化を実施し、複数社会経済発展想定の下での2.0℃/1.5℃目標達成への排出経路について、炭素循環・気候感度等の不確実性を考慮した分析を実施する。世界経済モデルについて、飢餓リスク以外の持続可能開発目標の評価のためのモデル拡張を実施する。当面拡張を想定しているのは、水需要、エネルギー安全保障、大気汚染、健康、生態系である。これらの指標を推計するにあたっては地理的分布を考慮する必要があるものも存在し、その場合には、グリッド別の土地利用や排出分布などを、既開発のモデル群を用いて推計する。当該拡張モデルを用いた評価結果を、国際的な統合評価モデル比較プロジェクトに提供する。
サブテーマ2では、改良した日本経済モデルを用いて、日本のGHG排出量を21世紀後半に実質ゼロにする排出経路の検討を行い、その結果を国内サービス需要モデルや日本技術モデル(サブテーマ3)に提供する。国内サービス需要モデルでは、日本経済モデルの結果を受けて、排出削減の追加検討を行う。また、バックキャストモデルを用いて、そうした対策の経路の妥当性について分析を行う。さらに、一連の分析結果を行政・産業部門・国民等のステークホルダーに提供し、多様な立場から、分析結果の実現可能性や受容可能性について意見を収集する。
サブテーマ3では、日本のGHG排出量を21世紀後半に実質ゼロにするための、エネルギー技術の定量分析を行うため、日本技術モデルの計算期間を、従来の2050年までから、21世紀後半までに拡張する。併せて、省エネルギー・再生可能エネルギー・原子力・CCS等の既存技術のパラメータ(効率・価格・ポテンシャル等)についても、21世紀後半までの拡張を行い、日本技術モデルや日本経済モデル(サブテーマ2)に提供する。

外部との連携

サブテーマ1とサブテーマ2を国立環境研究所が、サブテーマ3をみずほ情報総研株式会社が担当し、連携して研究を実施する。

課題代表者

高橋 潔

  • 社会システム領域
  • 副領域長
  • 博士(工学)
  • 土木工学,工学
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担当者