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遺伝構造の空間パターン再現モデルの開発(平成 30年度)
Development of simulation model to regenerate spatial genetic structure

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1618CD015
開始/終了年度
2016~2018年
キーワード(日本語)
遺伝構造,シミュレーションモデル,維管束植物
キーワード(英語)
genetic structure, simulation model, vascular plants

研究概要

遺伝的多様性は、生物多様性の重要な要素の1つである。しかし、保護区選定などの際には、種内の空間的な遺伝子の分布パターンである、遺伝構造はほとんど考慮されていないのが現状である。これは主に、遺伝構造に関する実測データが不足していることによる。
本研究では、遺伝構造の情報不足をモデル補完することをめざし、日本列島での植物の空間的遺伝構造のパターンを再現するシミュレーションモデルを構築する。モデルには、現在の遺伝構造に影響を与える、過去の気候変動に伴う分布変遷や移動分散プロセスを組み込み、実測データを参照しながらパラメータチューニングを行うことにより、現実的なパターンの再現を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

現実的な遺伝構造を再現するため、古気候変動やそれに伴う分布変遷・移動分散過程、突然変異などを組み込んだシミュレーションモデルを構築する。最初に、最も単純なモデルでどこまで現実的な遺伝構造を再現できるか明らかにする。次に、単純なモデルでは再現できないパターンの形成に最も影響していると考えられるプロセスを順次組み込み、シミュレーション実験を繰り返すことで、現実的なパターン生成に重要な要因を明らかにする。
この基本要素のみを組み込んだモデルで、移動分散能力や突然変異率、種の起源地等の設定を変えてシミュレーション実験を行い、どんな遺伝構造パターンが生じうるか明らかにする。また、遺伝構造の実測値も収集し、パターン抽出した上で、シミュレーションの結果と比較する。再現できないのであれば、適応遺伝子、大陸からの移入、種分化、種間交雑などのうちから、影響している可能性が高い要因を順次、モデルに組み込み、シミュレーション実験を繰り返すことで、パターン生成に特に重要な要因を明らかにする。

今年度の研究概要

現実の日本列島の地形と過去80万年程度の古気候を導入したモデルで、遺伝子散布・対立遺伝子数・可塑性の大きさなどのパラメータを変えながら、反復シミュレーションを行う。これにより、生成された多数の遺伝構造に対し、平成28年度に開発したパターン抽出法を適用し、収集された実測データと比較・検証を行う。実測値は種数や地点数が限られているため、モデルのパターンすべてが実測値で観察される必要はないが、実測値で見られた主要なパターンは、データ不足によるエラーと思われるもの以外は全て、モデルが再現できる必要がある。モデルが実測値のパターンを一部しか再現できない場合、再現できるように入力データの改善、パラメータの調整やモデル構造の改変を行う。具体的には、突然変異、適応遺伝子、大陸からの移入、種分化、気温以外の気候要因、などのプロセスを追加で組み込む。
引き続き、文献等から実測された遺伝構造のデータおよび種ごとの生態特性に関する情報の収集を行い、GISデータ化・データベース整備を行う。パターン抽出方法についても、実際に適用してみて判明した問題点などに対応した改良を行う。

外部との連携

研究分担者: 岩崎貴也(神奈川大学)

課題代表者

石濱 史子

  • 生物多様性領域
    生物多様性評価・予測研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(学術)
  • 生物学
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担当者