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山を動かすバイオマス利活用による地域環境創生に関する研究(平成 29年度)
Studies on regional environmental renovation by using woody biomass

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1719CD019
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
木質バイオマス,影響評価,福島県
キーワード(英語)
Woody Biomass, Impact Assessment, Fukushima Prefecture

研究概要

森林資源の持続的な利用は、中山間地域の地域創生の有力な方法と考えられるが、生産から消費までの一貫した技術と影響評価が一体となった学術的根拠のある「パッケージ」が必ずしも提示されていない。本研究では、木質バイオマスの持続的かつ先進的な利活用方法の開発、及びその利活用がもたらす社会・経済・環境への影響評価を行う。具体的には、これまで各研究参画者らが構築してきた木質バイオマスに関する要素技術を一連のモデルシステムを統合させ、大災害を経験し、再生可能エネルギーに関する将来ビジョンの策定が急務となる福島県の自治体における社会実装を念頭に、具体にバイオマスを利活用した地域デザインが定量的かつ空間的に可能となる、「山をうごかす」パッケージを提案することを目的としている。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

本研究では、対象地域の地域情報収集・データ整備を実施し、これまで研究参画者が個別に研究してきたテーマを統合することで、中長期の地域のフレームワークを記述するシナリオを構築する。また、バイオマスのエネルギー転換に関する実験を実施し、技術特性を明らかにするともに国内材利用の問題点を整理する。以上の知見に基づき、奥会津地域の自治体との連携のもと地域ニーズを考慮した、木質バイオマス資源を有効活用した中山間地域における持続可能集落のパイロットケースをデザインする。また、一連のデータベースとモデル、システムを他地域においても利用可能なよう一般化・敷衍し、地域特性とシステムの関係をとりまとめる。
 本研究は5つのサブテーマより構成する。まず、(1)これまで構築してきた福島県および市町村との連携関係に基づき、奥会津地域、中通り地域の情報を収集しつつ、2050年までの代替的な地域シナリオを設定し、人口フレーム、エネルギー需要等を地区単位で推計する。また、(2)森林モデルに活用して地域における木質バイオマス賦存量および利用可能量を推計する。同時に、(3)木質バイオマスのエネルギー転換においてキーとなる技術であるガス化システムに関する実験を実施し、その技術特性を明らかにする。さらに、(4)分散型エネルギーシステム設計支援システムを用いてバイオマスのエネルギーとしての利活用効果を検証する。最後に、(5)木質バイオマスの利用拡大等が関連施策と併せて地域の環境・経済・社会の持続性に与える影響を評価するためのフレームワークを構築する。

今年度の研究概要

(1)地域における将来にわたる社会・経済フレーム、エネルギー需要の推計
三島町との連携関係に基づき、住民や事業者に対してヒアリング調査・アンケート調査を実施し、建物ストック・設備の状況やエネルギー利用の実態、および、今後の居住や設備更新等の意向を調査する。また、研究参画者らが開発し、三島町内の住宅において実装を進めている地域ICTシステム(「くらしアシストタブレット」)を活用して時間別のエネルギー消費量や太陽光パネルによる発電量等に関する基礎的データを取得する。これらを統合して、福島県の中山間地域におけるエネルギー利用の実態を明らかにする。それらを、GISを活用した空間データベースとして整備する。さらに、コーホート要因法により、小地区単位で2050年までの人口動態を予測しエネルギー需要を推計する。以上を通じて、他のサブテーマに社会・経済フレームやエネルギー需要に関する基礎的な情報を提供する。

(2)森林モデルを利用した持続可能な森林管理シナリオの開発
研究代表者らがこれまで開発してきた森林モデルを活用して、多様な社会・経済シナリオのもとでのバイオマス資源の賦存量および生産量を推計する。また、バイオマスの生産が森林の多面的機能に与える影響を評価するために基礎的な検討に着手する。さらに、木質バイオマス資源の生産から消費に至るプロセスを検討するために、製材所等の立地分布に関するデータベースを構築するとともにその輸送プロセスをモデル化する。これにより、木質バイオマスのチップ・ペレット生産にかかるコストを地域特性を考慮して推計する。

(3)バイオマスガス化炉による基礎的実測と分析、課題抽出
地域単位での小規模なシステムを念頭に置いた場合、木質バイオマス資源の電力エネルギー転換において、ガス化技術は中核的な役割を担うことが期待されている。しかしこれまで、燃料となるチップの安定的な確保等の課題のため、国内においては十分に普及してこなかった。本研究では、研究分担者らがこれまで開発してきたバイオマスガス化実験施設を拡張し、ガス化に供する原料の水分調整を実施した場合や未利用材の利用がガス化反応挙動に与える影響を明らかにする。これにより、生成ガスおよびタールの発熱量測定や成分分析を行う。初年度は、実験施設の整備と基礎的な実験を実施する。

(4)経済性も考慮した最適化モデルを用いた地域エネルギーシステム設計
これまで研究分担者らは、地域特性に応じた分散型エネルギーシステム設計プロセスのモデルの基本的なフレームワークを開発してきた。これまで、地域の需給条件に応じた天然ガスコジェネシステムの設計支援等を実施してきた。本研究では、これを拡張して、中山間地域での評価ができるよう木質バイオマス資源に関連するシステムを考慮できるようにする。また、比較検討ができるように太陽光発電等の代替的な再生可能エネルギーについても検討できるように拡張する。さらに、バイオマスのエネルギー転換に関する機器の情報を収集し、技術インベントリデータベースとして整備する。対象地域における適正なバイオマスエネルギーシステムのプロトタイプをデザインする。

(5)木質バイオマス利用がもたらす地域循環・経済圏への波及効果の推計
地域において、雇用創出やビジネス創出は環境投資の重要な意思決定要因である。ここでは、地域の木質バイオマス資源の利用促進が地域の産業連関構造に与える影響を定量的に計測する。そのため、関連する統計資料の収集や現地調査を通じて、三島町の物質・エネルギー循環および経済循環の実態を定量的に明らかにする。これにより、十分な精度を持った三島町の産業連関表を構築する。さらに、産業連関分析のフレームワークに基づき、木質バイオマス資源の利用促進が地域循環・経済圏へ与える波及効果を評価する。

外部との連携

東北大学、産業技術総合研究所

関連する研究課題

課題代表者

大場 真

担当者