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胎児期ヒ素曝露により多世代にわたり増加する肝腫瘍への細胞老化の関与(平成 29年度)
The involvement of cellular senescence in hepatic tumors that increase through multiple generations by gestational arsenite exposure

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD012
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
無機ヒ素,発がん,細胞老化
キーワード(英語)
arsenite,carcinogenesis,cellular senescence

研究概要

 世界的に汚染が問題となっている環境化学物質であるヒ素は、慢性中毒により肝がんを引き起こすことが知られている。これまでに、自然発癌の系統であるC3Hオスマウスにおいて、胎児期に無機ヒ素を曝露することによって、生まれてきた仔(F1)、孫(F2)に肝腫瘍が増加する事が明らかになっている。しかしながら、なぜ胎児期のヒ素曝露がF1とF2の成長後に肝腫瘍を増加させるかは未解明である。
 本研究では腫瘍形成促進作用が疑われる細胞老化に着目する。老化した細胞は自身の増殖が停止するが、SASPと呼ばれる炎症性サイトカインなどの刺激によって、周囲の細胞の増殖を促進し、臓器レベルでがんを誘導することが報告されている。細胞老化による肝がん誘導機序としてはこれまでに、肝実質細胞、肝星細胞、クッパー細胞から産生されるSASPが肝癌発症を引き起こすことが報告されている。しかし、環境化学物質によって、肝臓のどの細胞が細胞老化をおこし、それが肝腫瘍の形成に関与するかは分かっていない。
 本研究では、肝臓を構成する細胞のうち、どの細胞に細胞老化がおこるか解明する。さらに、細胞老化を誘導する因子を経時的に観察し、どの因子がいつから変化するか、F1とF2に差異が認められるか明らかにする。
 細胞老化は人類全てに共通しておこる普遍の現象であることから、本研究によって、妊婦の環境化学物質曝露が次世代で細胞老化を促進するかという、ヒトの存亡に関わる重要な問題に取り組む。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

2015年
 初年度はまず、妊娠期の無機ヒ素曝露によってF1, F2で後発的に増加する肝腫瘍増加の際に細胞老化が増加しているのかを明らかにするための研究を行う。また、細胞老化が肝臓を構成するどの細胞でおきているか予備検討を行う。
2016年
 細胞老化が肝臓を構成する細胞のうち、どの細胞でおきるか本検討を行う。具体的にはH27年度に行った予備検討を基にサンプル数を増やし、妊娠期ヒ素曝露マウスのF1およびF2の肝臓及び対照群の肝臓の切片を用いて組織の染色を行う。
 また、細胞老化を引き起こす因子が、どの段階から変化するか検討するための準備を行う。具体的には平成27年度に交配を開始したマウスから引き続きサンプルの採取を行う。生まれたF1が約10週齢になった段階で、F1の雌雄12匹ずつを交配し、F2を得る。F2の胎児(F1の妊娠18日目4匹)、F1, F2の約10週齢、40週齢において雄8匹ずつを解剖し肝臓を得る。得た肝臓組織からRNA, DNA, タンパク質を抽出する。
2017年
 以上の実験により得られたサンプルを使用し、胎児期ヒ素曝露による細胞老化を誘導する因子のうち、特にテロメア長とテロメラーゼ活性を経時的に測定するための予備検討および本検討を行う。テロメア長に関してはDNAを使用したサザンブロット法、もしくはReal-time PCR法のうち、優れた方を使用して検出する。テロメラーゼ活性に関してはタンパク質抽出物と検出キットを使用し、Real-time PCR法によって検出する。

今年度の研究概要

本年度はミラー切片を用いてp15の局在を検討し、最終的な結論を出す。また、昨年度までに調製したサンプルを使用して、テロメア長およびテロメラーゼ活性を測定することによって、妊娠期ヒ素曝露によって後発的に増加する肝腫瘍の際に誘導される細胞老化へのテロメアの寄与を明らかにする。
さらに、alternative lengthening telomereに関わる遺伝子の発現変化に加え、テロメア以外の細胞老化に寄与する酸化ストレスやDNA損傷修復関連遺伝子の発現を検討し、多角的に細胞老化がおこる要因の検討を行う。

備考

関連研究
 安全確保研究プログラムPJ1

課題代表者

岡村 和幸

  • 環境リスク・健康研究センター
    病態分子解析研究室
  • 研究員
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