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アジアの森林土壌有機炭素放出の温暖化影響とフィードバック効果に関する包括的研究(平成 29年度)
A Comprehensive Study on Response and Feedback of Asian Forest Soil Carbon Flux to Global Warming

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 2-1705
研究課題コード
1719BA001
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
地球温暖化,土壌有機炭素,チャンバーネットワーク,温暖化操作実験,土壌微生物,土壌放射性炭素(14C)
キーワード(英語)
global warming,soil organic carbon (SOC),automated chamber network,soil warming experiment,soil microbial,soil radiocarbon (14C)

研究概要

現在、全球規模では、植物由来の有機炭素は土壌中に約3000 Gt蓄積されている。この有機炭素は、大気中の炭素の約3倍、全陸域植物バイオマスの8倍以上にも相当する。一方で、土壌微生物による有機物の分解、いわゆる微生物呼吸によって、年間約70 Gt(2008年時点)の有機炭素が大気中に放出されている。この微生物呼吸の量は、人為起源の放出量の約10倍に相当するものである。そのため、温暖化によってわずかでも温度が上昇すれば、有機炭素の分解速度が顕著に増加し、地球温暖化に拍車をかけるという悪循環(正のフィードバック効果)が懸念されている。そこで、本研究内容としては、(1)国立環境研究所が開発・推進している世界最大規模のチャンバー観測ネットワークを用いて、北海道の最北端(北緯45°)から本州・九州・台湾・中国及び赤道付近のマレーシアまでの広域トランセクトに沿って、代表的な森林生態系における土壌呼吸の連続測定を実施する。それによって、気候変動や攪乱が、各森林生態系の炭素循環に与える影響を定量的に把握する。(2)一部のサイトにおいて赤外線ヒーターを用いた温暖化操作実験を行い、土壌有機炭素分解の温暖化に対する反応を定量的に評価する。(3) 環境DNA法を用いて、気候帯や温暖化処理の有無が土壌微生物相やその動態に及ぼす影響を把握し、温暖化効果の長期維持メカニズムを解明する。(4) 土壌放射性炭素(14C)の分析から、土壌の画分毎の有機炭素の蓄積歴及び長期的な温暖化環境下での分解メカニズムを解明する。(5)多地点の長期観測データと土壌有機炭素分解に関する詳細な情報を基に、複数の既存土壌呼吸モデルの比較解析を行い、気候変動や攪乱に対する陸域炭素循環の応答、フィードバック効果の将来予測精度向上に役立てる。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

 H29年度では、すべてのサブテーマは本課題の代表(国立環境研究所)を中心として開発・推進しているチャンバーネットワークを研究プラットフォームとして活用し、北海道の最北端から赤道付近のマレーシアまでの広域トランセクトに沿って、モンスーンアジアの代表的な冷温帯林・温帯林・亜熱帯林及び熱帯多雨林における土壌有機炭素分解の時間・空間的変動に関するオリジナルデータの取得・解析を早急に開始する。また、アドバイザリーボード会合を通して、サブテーマ間の個別結果を比較分析(交換)した上で、次年度の研究体制を確立する。さらに、海外サイト(マレーシア・中国・台湾3カ国)の共同研究者を日本に招聘し、フィールドの測定技術及び観測データの解析方法などについてのキャパシティ・ビルディングを行う。
 H30年度では、確立・強化されたチャンバー研究ネットワークを活用し、国内及び海外の土壌呼吸・温暖化操作実験サイトにおいて土壌呼吸を中心とした定常測定を継続する。また、土壌環境DNA及び土壌14Cの測定を海外サイトに展開することで、これらの分析結果による海外森林土壌と日本森林土壌の有機炭素の質と分解特性を比較する。また、アドバイザリーボード会合を通して、サブテーマ間の個別結果を比較分析(交換)しながら、研究成果の外部発信(学会発表・論文公表など)を積極的に実施する。さらに、海外サイト(マレーシア・中国・台湾3カ国)の共同研究者を日本に招聘し、フィールドの測定技術及び観測データの解析方法などについてのキャパシティ・ビルディングを行う。
 H31年度では、チャンバーネットワークによる国内及び海外サイトにおける観測研究の体制を維持しながら、課題終了に向けて、研究結果の統合解析を行う。また、海外サイトにおける土壌環境DNA及び土壌14Cの測定結果を、これまでに国内サイトで得られた結果と比較し、異なる地域における土壌有機炭素の蓄積及び長期的な温暖化環境下での分解メカニズムを定量的に評価する。さらに、本プロジェクトで得られる多面的な実観測データに基づいて、複数の土壌呼吸モデルを検証・改良し、土壌有機物分解の温暖化応答とフィードバック効果を高精度化する。また、海外サイトの共同研究者を日本に招聘し、国際セミナー(ワークショップ)を開催する。

今年度の研究概要

 サブテーマ1(国立環境研究所):国内5つの代表的な森林生態系及び中国南部の2つの代表的な亜熱帯林に設置された温暖化操作実験システムを改良・整備し、統一されたプロトコルによる初年度の測定データを既存関連データと合わせて解析する事で、土壌有機炭素放出における温暖化に対する反応の地域(生態系)特性を把握する。また、プロジェクト全体の進捗状況を把握し、サブテーマ間の連携機能を発揮する。
 サブテーマ2(北海道大学):サブテーマ1との連携をしながら、国内及び海外の森林CO2フラックス観測サイトに設置された土壌呼吸連続測定装置を改良・整備し、チャンバー観測ネットワークによる土壌呼吸を中心とした森林炭素循環観測の体制を確立する。
 サブテーマ3(広島大学):サブテーマ1および2と連携をしながら、チャンバー観測ネットワークにおける国内の代表的な生態系において土壌サンプリングを開始し、環境DNA法を用いて土壌有機物の分解に強く寄与する土壌微生物の多様性やバイオマスの地域特性を把握する。
 サブテーマ4(日本原子力研究開発機構):サブテーマ1と2と連携をしながら、チャンバー観測ネットワークにおける国内の代表的な生態系における土壌や土壌呼吸ガスのサンプリングを早急に開始し、土壌有機炭素の分画と14C同位体比分析を組み合わせた手法により、有機炭素の分解性や蓄積プロファイルの地域特性を把握する。

外部との連携

北海道大学
広島大学
日本原子力研究開発機構
弘前大学
宮崎大学
国立台湾大学
中国科学院西双版納熱帯植物園
マレーシア森林研究所(FRIM)

課題代表者

梁 乃申

  • 地球環境研究センター
    炭素循環研究室
  • 主任研究員
  • 学術博士
  • 林学
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