ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

PG1 環境回復研究プログラム(平成 29年度)
Environmental Recovery Research Program

予算区分
AS 災害環境研究
研究課題コード
1620AS001
開始/終了年度
2016~2020年
キーワード(日本語)
環境放射能汚染,放射性物質,多媒体環境,生物・生態系影響,人曝露,管理システム,放射性物質汚染廃棄物
キーワード(英語)
Environmental radioactive contamination,Radioactive substances,Multimedia environment,Impacts on organisms and ecosystem,Human exposure,Management systems,Radioactively contaminated off-site wastes

研究概要

東日本大震災に伴う原子力災害からの環境回復を進める上で、放射性物質に汚染された廃棄物等の適切な保管・中間貯蔵及びこれらの減容・再生利用・処分に関する技術システムの構築、並びに、様々な環境中における放射性物質の長期的な動態把握と環境影響評価が重要な課題となっている。そこで、中間貯蔵と県外最終処分に向けた減容化技術等の研究開発に取り組むとともに、指定廃棄物等の処理処分に係る技術的課題解決のための研究開発を進める。また、森林・水域等の環境中に残存している放射性物質の環境動態に関する長期的観点からの調査・研究を実施する。さらに、帰還地域における長期的環境影響評価を行うとともに、生活者の安全安心な生活基盤確保のための生活環境リスク管理手法の構築、生態系サービスを含めた生態系アセスメントを実施する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

(1)放射性物質に汚染された廃棄物等の減容化・中間貯蔵技術等の確立
国の喫緊の最重要課題である中間貯蔵と県外最終処分に向けた減容化技術等の研究開発に取り組むとともに、指定廃棄物等の処理処分に係る技術的課題解決のための研究開発を進める。
1)放射性物質を含む廃棄物等の減容化技術の開発・高度化
対策地域内の仮設中間処理や中間貯蔵における焼成や溶融等の熱的減容化プロセス等における放射性セシウムの挙動を解明し、中間貯蔵で必要となる熱的減容化技術と県外最終処分に向けての高濃縮物の廃棄体作成等に関する技術開発に取り組むとともに、汚染廃棄物を取り扱う中間処理施設等の適正な維持管理及び解体手法を提示する。具体的には、2年後までに仮設中間処理施設等における被焼却物の性状に基づく放射性セシウムの挙動の類型化を行い、除染廃棄物等熱処理施設内の放射性セシウムの蓄積挙動を解明する。5年後までに、焼却シミュレータ、減容化技術及び廃棄体製造技術の開発と実証を行うとともに、同施設の安全な維持管理と解体法を確立する。これらを通じて、中間貯蔵施設の適正かつ円滑な運営に資する知見を提供する。
2)資源循環・廃棄物処理過程におけるフロー・ストックの適正化技術と管理手法の確立
放射性物質による汚染地域で発生する廃棄物・副産物の処理処分や再生利用で流通するフロー・ストックの定量化とデータベース化、及びリスクに応じた保管、処理、処分の方法、再生利用の用途を合理的に選択する手法を構築する。また、事故由来放射性物質の測定モニタリング手法の開発と検証及び福島第一原発近傍の廃棄物管理で必要となる放射性セシウム以外のα線、β線核種の評価方法を構築する。具体的には、2年後までにガイドライン等にある放射性セシウム測定方法を検証するとともに、放射性ストロンチウム測定法の開発と汚染状況や廃棄物処理過程での挙動を明らかにする。3年後までに、放射性セシウムのフロー・ストックモデル等を用いて廃棄物・副産物の発生地域と種類毎に安全な再生利用用途を示すとともに、大容量試料の簡易測定法を開発する。5年後を目処に、その他の核種の測定方法を開発する。 これらを通じて、汚染廃棄物の適正な管理と再生利用に資する知見を提供する。
3)低汚染廃棄物等の最終処分及び除去土壌等の中間貯蔵プロセスの適正化と長期管理手法の開発・提案。
汚染廃棄物が埋め立てられた最終処分場の長期管理、除染で発生する除去土壌等の仮置場での保管や搬出、中間貯蔵の方法や貯蔵後の長期管理等に関する技術を開発・提案する。また、除去土壌等の有効利用を目的とした品質評価や管理方法、汚染廃棄物の貯蔵や処分に用いられるコンクリートの耐久性維持管理について検討するとともに、埋立地浸出水中の放射性セシウムを極低濃度域で連続的にモニタリングするシステムを開発する。具体的には、2年を目処に汚染廃棄物が埋め立てられた最終処分場に用いる難透水性覆土の要件を把握し、固型化物からの溶出特性を明らかにして長期挙動を評価する数値モデルを作成するとともに、除去土壌を用いたカラム溶出試験とライシメーター試験を行い、汚濁物質等の溶出挙動等との比較を通じて実規模貯蔵施設における挙動予測を行う。また、浸出水において極低濃度の放射性セシウムを連続的にモニタリングする。3年後を目処に、数値シミュレーション等との比較・解析により、安全・安心な埋立地管理に資するアラートシステムを完成させるとともに、除染で発生した可燃物保管時の発熱機構を明らかにする。5年後を目処に、固型化物以外の廃棄物からの溶出特性と溶出した放射性セシウム等の土壌吸着特性を明らかにし、一連の結果をもとに汚染廃棄物を埋め立てた処分場の長期的管理要件をとりまとめるとともに、コンクリートの耐久性実証実験を行い、コンクリート維持管理資料を作成する。これらを通じて、特定一般廃棄物、特定産業廃棄物の最終処分場、指定廃棄物の最終処分場ならびに中間貯蔵施設の適正かつ円滑な設置と運営に資する知見を提供する。

(2)放射性物質の環境動態・環境影響評価と環境保全手法の構築
森林・水域等の環境中に残存している放射性物質の環境動態に関する長期的観点からの調査・研究と、帰還地域における長期的環境影響評価及び、生活者の安全安心な生活基盤確保のための生活環境リスク管理手法の構築、生態系サービスを含めた生態系アセスメントを実施する。
1)環境動態計測とモデリングによる多媒体環境における放射性物質の動態解明及び将来予測
主に福島県浜通り北部地方において、放射能汚染の状況が異なる複数の河川流域を対象とした放射性セシウム動態計測と水生生物調査等を実施し、調査・実験データの解析に基づく放射性セシウムの移動・集積や生物移行に係る機構解明や将来予測を行う。また、大気における事故直後の放射性物質動態と再飛散推計の精緻化、流域詳細モデルと陸域広域モデルの構築、及び沿岸海域・閉鎖性水域における放射性セシウムの長期動態予測を行う。さらに、動態計測による測定データや解析結果に基づいた各種シナリオの構築・適用により、放射性物質動態に係る再現計算や将来予測を行う。具体的には、2年後までに森林域やダム湖における可給態セシウムの挙動特性と淡水生態系における放射性セシウムの移行特性を明らかにする。3年目までに帰還予定地域における土地利用変化等による環境変動が可給態セシウムの挙動に及ぼす影響を把握するとともに、森林ならびに水界生態系における中長期的な放射性セシウムの移行状況を予測する。また、放射性セシウムの大気中への再飛散の寄与評価、陸域での除染対策の評価、松川浦等の閉鎖性水域の堆積量の評価・予測及び沿岸海域モデルの改良・精緻化を実施する。5年後までに大気起源の被ばく量推計、陸域での精度の高い将来予測及びフロー・ストックの時空間変動予測、沿岸域における海底土のホットスポットの長期予測を実施するとともに、長期的な環境モニタリングの在り方の提示と原子力災害への初動・初期対応としてのモニタリングや環境管理手法を提案する。 これらを通じて、森林やダム湖、沿岸域等における放射性物質の環境動態に関する科学的知見の更なる集積を進め、今後の環境回復の取組に貢献する。また、帰還地域の長期的環境影響評価と生活環境リスク管理手法の構築によって、住民の安全・安心な生活環境の確保と地域振興のための環境回復ロードマップ作成に貢献する。さらに、閉鎖性水域や沿岸域の放射性セシウムの堆積状況の把握とその将来予測により、地域住民のニーズが高い水源、漁場、親水空間に関する科学的知見を提示する。
2)環境放射線と人為的攪乱による生物・生態系への影響評価
帰還困難区域内外における現地調査、野生生物あるいは実験生物を用いた実証実験及びこれらのデータを用いた数値モデルを開発することにより、放射線等による直接的あるいは間接的な生物・生態系影響を把握する。具体的には、2年後を目処に避難指示による人為活動の変化が生態系や景観に与える影響を長期生態系モニタリングにより把握し、オープンデータ化する体制を構築するとともに、野生げっ歯類や高等植物を用いた遺伝子等への放射線影響について科学的知見の集積を進める。3年後を目処に、モニタリングデータを介した地域住民との協働のためのITツール群を開発・実装し、自動撮影技術等によるモニタリング手法の改良を行うとともに、車載カメラ・衛星画像等の費用対効果の高い土地被覆調査手法を確立する。また、放射線による生物影響の知見をわかりやすく提供する事により生活者の安全・安心な日常活動の確保に貢献するとともに、福島県沿岸域及び湖沼における漁獲対象種を含む魚介類の資源量(棲息量)と放射性物質の蓄積量の把握及びその将来予測を行う。4年後を目処に、生態系モニタリングにより帰還地域で増加傾向が見られた野生動物種について人獣共通感染症の保有状況の実態把握を行う。5年後を目処に、土地被覆変化モデルを構築するとともに、避難指示区域内外の生態系を再現するモデルを構築して生態系管理シナリオによる予測を行う。また、帰還予定地の感染症リスクマップを作成する。 これらを通じて、モデルによる生態系管理政策の意思決定支援と害獣等の管理目標策定に貢献するとともに、産業復興と風評被害払拭に貢献するための科学的知見を提供する。
3)生活圏における人への被ばく線量と化学物質曝露の評価。
モニタリングとモデリングを組み合わせることにより、放射性物質による被ばく線量を推計・予測するとともに、放射性物質以外のリスク要因も考慮した総合的な健康リスク評価を行う。具体的には、3年後を目処に帰還地域において、室内汚染状況の把握、自主清掃・除染による室内汚染低減効果の検証と追加線量の評価、自治体・住民・NPOと協働した生活環境の継時的モニタリングなどを実施して、追加被ばく線量を推計するとともに、実行可能な線量低下方法を提案する。また、原発事故によって引き起こされた健康リスク要因(追加被ばく、喫煙、飲酒、運動量、肥満度など)の変化を総合的に考慮した疫学モデルを用いて、被災地域の過剰相対リスクを推計し、健康リスク低減策の策定に資する情報を提供する。4年後を目処に、事故直後の大気からの追加被ばく線量や除染・積雪・ウェザリング等の影響を考慮するとともに、事故後の住民の行動パターンを組み込んだ線量推計モデルを構築する。5年後を目処に、得られた知見を総合して、将来の災害時(地震、洪水、火山噴火など)の健康影響推計モデルを構築する。 これらを通じて、帰還住民が安心して生活できるようにする取組を支援する。

今年度の研究概要

(1)放射性物質に汚染された廃棄物等の減容化・中間貯蔵技術等の確立
1)放射性物質を含む廃棄物等の減容化技術の開発・高度化
除染廃棄物等の熱処理施設内における放射性セシウムの化学形態の解明、再生利用を目指した熱的減容化技術の開発、熱処理施設の適切な管理・解体撤去方法の提示を行う。また、セメント技術を適用し、副産物の削減技術と利活用について検討するとともに、副産物のさらなる減容化のためフェロシアン化物による放射性セシウムの抽出とジオポリマーによる最終廃棄体化技術の開発を行う。
2)資源循環・廃棄物処理過程におけるフロー・ストックの適正化技術と管理手法の確立
福島県内外の経時的な廃棄物・副産物のフロー・ストックを示すとともに被ばく線量評価により適正な処分・再生利用方法を提示する。また、排水処理の測定方法の評価、表層土壌等に含有される放射性セシウムの挙動把握、α線やβ線核種の評価等を進める。
3)低汚染廃棄物等の最終処分及び除去土壌等の中間貯蔵プロセスの適正化と長期管理手法の開発・提案。
セメント固型化物からの放射性セシウム等の溶出特性や膨張抑制機能等の評価を行い、長期的な安定性について検討する。また、ライシメーターを用いた除去土壌の貯蔵模擬試験を実施し、浸出水やガス等の発生挙動について評価する。更に、浸出水中の放射性セシウムのモニタリング方法について実証研究を進める。コンクリートの汚染解析と鉄筋コンクリート製廃棄物処分施設や最終処分施設のコンクリート耐久性確保の研究を行う。
(2)放射性物質の環境動態・環境影響評価と環境保全手法の構築
1)環境動態計測とモデリングによる多媒体環境における放射性物質の動態解明及び将来予測
福島県浜通り北部地方において、放射能汚染の状況が異なる複数の河川流域を対象とした調査・実験によって主に森林域やダム湖における可給態セシウムの挙動解明とそれに基づくリスク評価と、河川やダム湖における水生生物調査等と安定同位体を用いた食物網解析に基づくセシウム移行特性を評価する。また、放射性セシウムの大気中への初期拡散シミュレーションの精緻化、陸域由来の再飛散のモデル構築、陸域での宇多川流域を対象とした土壌浸透モデルの精緻化、及び松川浦を対象とした放射性物質動態モデルの詳細な検証・改良を進めるとともに、海底土の放射性物質の長期動態を解明する。
2)環境放射線と人為的攪乱による生物・生態系への影響評価
避難指示による人為活動の変化が生態系や景観に与える影響を把握するために長期生態系モニタリングを続けるとともに、データのオープン化、土地被覆変化モデル及び避難指示区域内外の生態系を再現するモデルの構築を行う。また、放射線影響による生物影響を調べるために、次世代シーケンサーを用いた野生げっ歯類(アカネズミ)の遺伝的変異の解析を行うとともに、モニタリング植物を用いて野外でのDNA損傷(修復)についての評価を行う。さらに、潮間帯生物と浅海域の底棲魚介類の棲息密度等に関する調査を継続し、潮間帯生物の種数と棲息量の減少要因の究明に向けて作用メカニズムの解析等を図る。
3)生活圏における人への被ばく線量と化学物質曝露の評価。
帰還地域において、さらに数軒程度の室内汚染状況を測定し、自主清掃効果の実験的検討と線量評価、生活環境の継続モニタリングを実施する。また、原発事故によって引き起こされた健康リスク要因(追加被ばく、喫煙、飲酒、運動量、肥満度など)の変化を総合的に考慮した疫学モデルに関する検討を引き続き行う。

外部との連携

福島県、日本原子力研究開発機構など多数

課題代表者

林 誠二

  • 福島支部
  • 研究グループ長
  • 博士(工学)
  • 土木工学,林学
portrait

担当者