- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1517CD002
- 開始/終了年度
- 2015~2017年
- キーワード(日本語)
- 温室効果ガス,衛星観測,データ検証,データ補正
- キーワード(英語)
- greenhouse gases, satellite observation, data validation, data correction
研究概要
日本の温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)は、短波長赤外域の反射光スペクトルを観測し、対流圏から大気上端までの温室効果ガスのカラム平均濃度を導出する世界初の専用衛星であり、観測が継続され6 年分以上の観測データが公開されている。GOSAT により、衛星を用いた短波長赤外スペクトルからの高精度温室効果ガス導出法、データ質検証法、大気輸送モデルの逆計算による地表面フラックス推定法が確立され、幅広い研究に道を開いた。よりインパクトがあり高品質な研究成果を得るためには、更なるGOSAT データの高精度化が必須であるが、導出手法の改良には大きな労力を要する。本研究は比較的短時間に高精度化が実現可能な、衛星データ検証・補正手法の問題点の洗い直しと高度化のための手法開発に関する研究を行うことを目的とする。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
衛星データ検証・補正手法の問題点として、検証データと衛星データのデータ質、相関解析における衛星データと検証データの同期条件、相関解析では互いの精度が同程度であるために両方の重みを考慮しない解析では不十分である可能性があることなどが挙げられる。
本研究では、検証データ、特にTCCON データのデータ質の解析とデータスクリーニング法の開発、相関解析におけるデータセット同期方法と解析手法の改善、補正手法の改良を行う。次に、GOSAT データを用いてどの程度改善することが出来たのか確認を行う。更に、改善されたデータの詳細解析による特異現象(anomaly)の検出を試みる。
今年度の研究概要
(1) 検証及び衛星データのデータ質の解析とデータスクリーニング法の開発
GOSATデータのデータ質は全球で一様ではないことが分かっているため、その要因を解析してGOSATデータの特性を理解する。検証データであるTCCON データのデータ質は二酸化炭素については幾分知られているものの、その他の温室効果ガスについては殆ど分かっていない。気象データを組み合わせた解析・要因分析を行い、Outlier として除外するか、誤差として考慮するべきか判断する。
(2) 相関解析におけるデータセット同期方法と相関解析手法の改善
衛星データと検証データを同期する方法は幾つか提案されているが、空間代表性の妥当性、容易に実施出来るか等の功罪があるので、これを明らかにして、必要な機能を取り込む。Column averaging kernelも考慮する。
相関解析では、衛星データと検証データの精度が同程度である場合、互いの重みを考慮した相関解析(York fit)を行うことが必要であることが分かっており、これを適用する。
(3) 補正手法の改良
温室効果ガス導出時には、短波長赤外スペクトルの説明変数となる他の物理量を同時に導出しているが、この際、温室効果ガスと相関がないことが期待される物理量との間に擬似的な相関関係が生じてしまうことがある。
補正手法としては、これらの物理量との相関関係を調べ、その相関がないようにデータを補正する重回帰分析が用いられている。この時、何を真値にするか検討を行う必要がある。それぞれの功罪を調査・検討し、総合的に機能を取り組む。
衛星データと検証データの精度が同程度である場合、単回帰分析では互いの重みを考慮した解析(York fit)の必要性が指摘されているが、重回帰分析への拡張が可能か実現性を理論的に検討し、可能であれば実装する。誤差伝搬の機能も入れる。
外部との連携
所外研究分担者: 秋田県立大学井上誠准教授
備考
当課題と「温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)観測データ検証業務」(課題コード1115BY002(環境-委託請負))が、地球環境研究センター独自のプロジェクトとしての「国環研GOSATプロジェクト」を構成する。
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