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樹状ナノ粒子(デンドリマー)の生体影響評価に関する研究(平成 25年度)
Health Assessment of PAMAM dendrimer

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1214CD009
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
ナノマテリアル,樹状分子,PAMAM
キーワード(英語)
nanomaterial, dendrimer, PAMAM

研究概要

樹状ナノ粒子(デンドリマー)は、3 次元的に広がる枝分かれ構造を持った球状の超分子である。他のナノ粒子と異なり、その形状の特異さから高い構造上の自由度を持つことが知られており、医療ドラッグデリバリー剤から電子デバイスの基盤にいたるまで工業的に多用されている。一方、その有用性とはうらはらに、高い生物活性に起因する生体毒性の可能性が懸念されているが、デンドリマーの毒性評価に関する研究はほとんど実施されていないのが現状である。そこで、本研究では、デンドリマーの1種であるPAMAM(ポリアミドアミン)デンドリマーを研究対象として、デンドリマーの水環境(液相)における挙動と液相としての生体への影響について、分子レベル、細胞レベル及び個体レベルで調べる。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

Poly(amidoamine) (PAMAM)デンドリマーを材料に、粒形、表面基の違いによる分散性、安定性、体内動態、細胞内動態を調べる。特に、実際の曝露に近い濃度、状態での水系(体液、環境水など)におけるPAMAMデンドリマーの物性を明らかにする。さらに、PAMAMデンドリマーどのように細胞や組織と反応するのか明らかにするために、培養細胞や動物を用いた試験を行う。 PAMAMデンドリマーの粒形、表面基の違いによる細胞毒性、細胞活性を調べる。
 以下の3つのサブ課題を設定する。
(1)樹状ナノ粒子の液相での物性に関する研究
(2)樹状ナノ粒子の体内分布に関する研究
(3)樹状ナノ粒子の細胞レベルでの分布・反応に関する研究

今年度の研究概要

サブ課題(1)樹状ナノ粒子の液相での物性に関する研究、1-1)体液中での凝集、拡散・沈降に関する研究:前年度に調べた手法を用いて、体液と似た組成の液相に懸濁した状態でデンドリマーがどのような比率・時間経過で凝集、拡散・沈降するかを詳細に調べる。デンドリマー自体の物性(サイズ、比表面積、表面電荷、フラクタル次元、細孔性など)を変えたうえで計測をくりかえす。1-2)環境液中での凝集、拡散・沈降に関する研究:認証標準物質の河川水(有害金属分析用−添加−)(7202-a)を用いて、1-1)の体液の場合と同様に、さまざまな実行濃度、時間経過での計測を実施する。
サブ課題(2)樹状ナノ粒子の体内分布に関する研究、2-1)体内分布の実測(鼻脳軸・血液内負荷)蛍光標識及び非蛍光標識のデンドリマーを成獣に単回で腹腔内もしくは血液内投与し、主要臓器(脳、肝臓、腎臓、生殖器など)ごとの分布を調べる。さらに、マイクロアレイもしくはPCRアレイにより臓器ごとのゲノミクス解析を行う。また、末梢血を用いて血中半減期を計測し、さらにメタボノミクス法により全身代謝への影響を調べる。
2-2)模擬試験系における動態の計測2-2-1)血液-脳関門(BBB)の通過:BBBのモデル培養(ラット由来の血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトで3層シートを形成してBBBを模したキット)を用い、蛍光標識デンドリマーの通過の度合いと物性との関連を調べる。2-2-2)神経を介した移動:ニューロン培養系の培地中に蛍光標識デンドリマーを添加し、ニューロンにおけるデンドリマーの軸索内移動を蛍光顕微鏡で観察する。
サブ課題3)樹状ナノ粒子の細胞レベルでの分布・反応に関する研究3-1)細胞内分布に関する研究:蛍光物質を表面に結合させたデンドリマーを培養系に添加し、デンドリマーの細胞内分布を蛍光顕微鏡、共焦点蛍光顕微鏡で調べる。3-2)培養細胞への影響に関する研究:多能性細胞(ES細胞及びiPS細胞)の未分化時期にデンドリマーを培養液に添加し、細胞の変化の量反応関係及び経時変化を観察する。影響の指標には、細胞数、細胞形態、成熟細胞への分化度、DNA傷害性については、小核試験、アポトーシスを調べる。mRNA遺伝子発現変化及びエピゲノム変化については、PCR技術による96プレート様式のアレイ解析法を用いる。

課題代表者

曽根 秀子

担当者