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成層圏突然昇温現象が熱帯対流圏に及ぼす影響(平成 22年度)
Impact of Stratospheric Sudden Warming on the tropical troposphere

予算区分
AC 地球センター
研究課題コード
1010AC001
開始/終了年度
2010~2010年
キーワード(日本語)
気候,成層圏突然昇温,熱帯対流圏界面遷移層,巻雲,水蒸気,成層圏対流圏間物質交換,大気循環
キーワード(英語)
climate, stratospheric sudden warming, tropical transition layer, cirrus cloud, water vapor, stratosphere-troposphere exchange, atmospheric general circulation

研究概要

平成20年度から平成21年度まで実施してきた同課題名の研究を継続する。前年度までは3例の成層圏突然昇温現象に着目し、南北両半球極域で発生した突然昇温の熱帯域の積雲対流活動や絹雲の形成機構、および成層圏対流圏間交換過程への影響を定性的に明らかにした。しかし、熱帯の季節や経年的な背景場の違いによってその影響の度合いと出方が異なるため、突然昇温の熱帯への影響の定量的かつ体系的な理解には至っていない。そこで、近年データが蓄積されてきた高精度の衛星観測データとその精度が向上してきた高分解能の数値実験データを用いて、両半球極域の成層圏突然昇温現象による、熱帯域の (1) 積雲対流の発生・消滅機構、(2) 対流圏界面付近の水蒸気と巻雲の変動機構、 (3) 成層圏-対流圏間の物質交換過程を明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

目的の遂行のために、前年度までと同様に衛星観測データを用いた事例解析を進めるとともに、観測データでは取得が困難な積雲対流活動を表す物理量 (鉛直流、潜熱等) と時空間分解能の高い気象要素データ (風、気温、湿度等) を信頼のおける数値実験結果から得ることで、突然昇温時の積雲対流の発生・消滅機構、成層圏と対流圏間の力学的結合関係を定量的に調査する。

今年度の研究概要

これまでの解析から突然昇温現象の熱帯への影響は熱帯対流圏界面領域に顕著に現れることが明らかにされつつある。そのため、解析には高鉛直分解能、観測頻度の高い最新の衛星観測 (EOS MLS, CALIOP, CloudSat, SMILES等) から熱帯対流圏界面領域での絹雲、積雲データや水蒸気、オゾン等の微量気体成分のデータを用いる。また観測では捉えにくいが、対流活動等を議論する上で必要な物理量データ (上昇流、潜熱等) を全球雲解像モデルNICAM (Nonhydrostatic ICosahedral. Atmospheric Model) より得る [Satoh et al., 2008]。既に複数北半球冬季分の計算がなされており、熱帯域での雲の再現性の確からしさが確認されつつある。
具体的には、2006年、2009年、2010年の冬季に発生した突然昇温時の事例解析を実施する。特に、2006、2009年昇温現象時に熱帯域の大循環場が大きく遷移していたためその原因と、それを組織する積雲対流の形成機構を詳しく調査する。また、循環場や積雲対流の変化による熱帯対流圏界面近傍での成層圏対流圏間の物質交換過程が活発な地域の特定とそこでの交換過程の機構を調べる。

備考

平成20年度、21年度からの継続研究であるが、予算区分の変更に伴い、新規研究課題として登録した。旧課題コードは 0809CD006 である。

関連する研究課題
  • 0 : 地球環境研究センターにおける研究活動

課題代表者

江口 菜穂