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全球水資源モデルとの統合を目的とした水需要モデル及び貿易モデルの開発と長期シナリオ分析への適用(平成 22年度)
Development of water demand and trade models for a global water resources model and their application to long term scenario analyses

予算区分
AG 特別研究
研究課題コード
0911AG003
開始/終了年度
2009~2011年
キーワード(日本語)
全球水資源モデル,工業用水需要モデル,生活用水需要モデル,貿易モデル,バーチャルウォーター,長期シナリオ分析
キーワード(英語)
Global Water Resources Model, Industrial Water Demand Model, Urban Water Demand Model, Trade Model, Virtual Water, Long Term Scenario Analyses

研究概要

国立環境研究所は東京大学とこれまで全球水資源モデルH08を開発してきた。全球水資源モデルは、自然の水循環と人間の水利用を統合的に扱い、地球温暖化が世界の水や食料に及ぼす影響を評価したり、人間と自然の水利用の競合を全球規模で評価することができる。H08を拡張し、世界の水資源評価の高度化を行うために、本研究では、(1)工業用水需要予測モデルおよび生活用水需要予測モデルを開発し、(2)農作物の貿易モデルを開発し、(3)これらのサブモデルをH08に組み入れることを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

本研究は、4つのサブテーマ構成で行うが、相互に連携しながら進める。

■サブテーマ1 地域別部門別工業用水の推計と将来需要予測モデルの開発
 応用一般均衡モデルAIM/CGEをベースに、(1)各サブテーマで使用するドライビングフォースを整合的に示し、(2)工業部門を対象に水需要を推計するためのモデルを開発し、21世紀末までの世界の地域・部門別の工業用水需要シナリオを構築することを目的とする。
(1)に対しては、各サブテーマで必要となる指標(ドライビングフォース)を反映させるようにモデル開発を行うとともに、IPCCの新シナリオをベースとした将来推計から、各指標を定量化し、その結果を各サブテーマに提供する。(2)では、日本をはじめ各国の統計から、工業用水の需要量を部門別に推計するためのモデルを開発する。また、(1)で得られたドライビングフォースをもとに、世界各地域の部門別工業用水需要量を推計する。最後に、各サブテーマや他の研究課題で明らかとなる生活用水や農業用水など水需要及び水資源制約の結果を取り込み、将来の水資源制約がもたらす社会経済への影響や水の高度利用が可能となるような世界モデルに向けて改良を行う。

■サブテーマ2 安全な水・衛生設備へのアクセスを考慮した生活用水の将来需要予測モデルの開発
 国連によって基本的人権と確認された安全な水・衛生設備へのアクセスを考慮した新しい生活用水需要予測モデルを開発し、サブテーマ1から提供されるドライビングフォースを組み込んだ、21世紀末までの世界の国別生活用水需要シナリオ構築を目的とする。
まず、UNICEFの国別・技術別データを基礎として各国の安全な水・衛生設備普及率を技術別(例えば安全な水は,水道,公共用水栓,井戸,泉など)に整備し、生活用水需要予測モデルを構築する.次に、安全な水・衛生設備へのアクセス目標( MDGsやVISION21など)を勘案した技術普及シナリオを開発し、国別に将来の生活用水需要推計を行う。最後に、持続可能な生活用水利用について検討するために、生活用水需要モデルに節水効果(施設の管理効率や節水技術の普及、節水行動など)を定量化するサブモデルの拡充を試みる.

■サブテーマ3 国際貿易と国家間の水資源利用に関する研究
(1)国際貿易モデルを開発し、将来の社会シナリオが将来の農畜産物の貿易フローをどのように変化させ、VW貿易を介して、各国の水資源にどのような影響を与えるかを分析する。並行して、(2)国際河川の管理制度が国家間の水資源配分に及ぼす影響を分析する。
(1)については、理論モデルを重力モデルに適用することで、研究対象とする農畜産物の貿易モデルを構築し、計量経済的手法を用いてパラメータ推計する。この貿易モデルにより、経済・社会変数(たとえば、GDPや人口、貿易の自由化など)が輸出入にどのような影響を与えるかを定量的に明らかにできる。これにVW原単位をかけることで、国際的なVW貿易フローとの関係を明らかにする。このモデルを用いて、社会シナリオ(将来のGDP、人口、貿易の自由化など)が、国際貿易(VW貿易フロー)を通して水資源の希少な国の水の逼迫を緩和させるかどうかを分析する。(2)については、主要な国際河川を対象に、その管理制度を調査し、水資源配分の問題点を分析する。

■サブテーマ4 全球水資源モデルへの成果の集約と水資源評価の高度化
 サブテーマ1〜3の進捗状況に応じてH08の入出力データや水の統計データを提供するとともに、全球水文・水資源学的な見地からの助言を行う。また、サブテーマ1〜3で開発された工業・生活用水モデル、国際貿易モデルをH08に組み込み、統合的な全球水資源シミュレーションを行う。この他に、全球水資源モデルが高度化するにあたり、水需給の季節変動性を緩和する貯水池、乾燥域での地下水利用、農業用水のシミュレーションの重要性がますます増大するため、これらの実装済みのサブモデルの検証と改良を進める。

今年度の研究概要

今年度は、下記の研究を実施する
1)部門別の工業用水需要モデルの開発を行う。また、世界CGEモデルを用いて、各サブテーマで必要な将来のドライビングフォースを提供する。
2)生活用水需要予測モデルを開発し、将来推計を行う.
3)農作物別の国際貿易モデルのパラメータを推計する。
4)工業・生活用水モデルをH08に組み込み、将来の水需給の評価を行う。

関連する研究課題
  • 0 : 領域プロジェクト

課題代表者

日引 聡

  • 社会システム領域
  • 連携研究グループ長
  • 経済学
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担当者