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熱赤外リモートセンシングと地表面熱収支モデルを併用した都市域の蒸発散量推定(平成 22年度)
Estimation of Evapotranspiration in Urban Area Using Thermal Remote Sensing Data and a Surface Heat Budget Model

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0810CD012
開始/終了年度
2008~2010年
キーワード(日本語)
都市熱環境,地表面温度,熱慣性,衛星リモートセンシング
キーワード(英語)
urban thermal environment, surface temperature, thermal inertia, satellite remote sensing

研究概要

本研究の目的は国内の主要都市域を対象とし、衛星リモートセンシングにより蒸発散量の推定を行うことである。衛星観測による表面温度と一次元熱収支モデルから、経験式ではなく物理的な計算に基づいて地表面熱収支を計算する手法を確立し、地表面熱収支と植生活性度の両面から信頼性のある蒸発散量推定を行う。本研究の成果は例えば植生による都市ヒートアイランド緩和効果の評価へ応用できる。また本研究において構築する手法により、マクロな大気・水循環の解明や気象シミュレーションの高精度化などへの貢献も期待できる。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

平成20年度:衛星同期観測による開発手法の検証・精緻化 — 本研究において開発する地表面温度データを用いて蒸発散量を推定する手法について、人工衛星の通過と同期した地上観測により検証・精緻化を行う。ただし機材設置等の関係上、この観測では広域の蒸発散量を直接計測することは困難であるため、地表面温度や各種気象要素の検証データを得ることを目的とする。
平成21年度:衛星リモートセンシングによる手法検討 — 本研究における開発している熱赤外バンドを用いた方法については、日中と夜間の熱赤外リモートセンシングのデータと熱収支・熱伝導モデルから蒸発効率と熱慣性のパラメータを導出する。利用データは、高精度・高分解能であるTerra衛星ASTERの関東付近のデータを用いる予定である。併せて、既存手法として既存の植生指標を用いた手法により蒸発散量を推定する。植生指標による蒸発散量推定は多数の既往研究があるが、必ずしも適用性や信頼性は明らかではないので、まずこれらの相互比較により精査する。
平成22年度:汎用的手法提案と蒸発散量・蒸発効率の推定 — まず衛星同期観測と対応した東京および大阪にテストフィールドを設定し、植生指標と蒸発散が概ね対応する盛夏期のデータを用いて上述の各手法や地上観測の結果との整合性を確認する。その上でこれらの結果を統合して各都市における数十kmスケールの季節別平均蒸発散量の分布図を作成する。

今年度の研究概要

現在開発を進めている熱赤外リモートセンシングによる地表面パラメータ導出と熱収支シミュレーションの手法に改良を加え、汎用的手法として完成させる。この手法では、連続した日中と夜間の表面温度データを用い、これと1次元熱収支・熱伝導モデルとを結びつけることにより、経験式ではなく物理的な計算に基づいてパラメータを取得する。この方法を適用し、まず蒸発効率と熱慣性のパラメータを導出し、次にこれらのパラメータを用いて、地表面熱収支のシミュレーションを行なう。利用データは、高精度・高分解能であるTerra衛星ASTERの関東付近のデータを用いる予定である。アルベドや射出率もASTERデータから取得する。ただしASTERデータでは日中・夜間のデータが同時期に取得できるとは限らないため、多時期の解析を行なう上では、高頻度であるTerra/Aqua衛星MODISデータやNOAA衛星AVHRRデータなどを用いることを検討している。この地表面熱収支のシミュレーションから算出した潜熱フラックスと、従来法である植生指標を組み込んだメソスケール気象モデルのシミュレーションの結果とを比較し、精度検証を行なう。これらの結果に基づき、典型的な気象条件での都市域における季節別平均蒸発散量の分布図と、局地気象モデルの地表面境界条件として利用できる蒸発効率のデータを作成する。

課題代表者

平野 勇二郎

  • 社会システム領域
    システムイノベーション研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(工学)
  • 工学,土木工学,建築学
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