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都市大気中の浮遊粒子成分が動物体内で示す変異原性と次世代影響の評価(平成 21年度)
Assessment of in vivo mutagenicity and trans-generational effect of compounds contained in suspended particulate matter in urban air

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0911CD004
開始/終了年度
2009~2011年
キーワード(日本語)
環境質定量化・予測,人間生活環境,有害化学物質,遺伝子,癌
キーワード(英語)
environmental measurement and assessment, human environment, toxic chemical, gene, cancer

研究概要

大気中に存在する浮遊粒子成分が体内で示す変異原性とそのメカニズムは未解明な点が多く、環境衛生学上の重要な課題である。本研究では、これまでの研究成果を発展させ、体内変異原性検出用に開発された遺伝子導入マウスを用いて、実際の都市大気中の浮遊粒子に含まれる成分が総体として標的臓器である肺、および精巣や精子で発揮する変異原性や次世代影響を評価し、健康リスク評価に資する知見を得る。具体的には、変異原性検出用遺伝子導入マウス(gpt deltaマウス;標的遺伝子・大腸菌gpt遺伝子を載せたシャトルベクターをゲノムDNAに導入したマウス)を用い、都市大気から採取した浮遊粒子より得た多環芳香族化合物等の抽出物(浮遊粒子抽出物)などの試供化合物が示す体内変異原性を評価する。特に実際の曝露経路を想定し、試供化合物のマウスへの曝露は主に肺中への経気道投与により行う。必要に応じてディーゼル排気由来ナノ粒子のマウスへの曝露など浮遊粒子曝露のモデル実験も実施しつつ、大気浮遊粒子中の多環芳香族化合物等が肺や精巣・精子のゲノム上で引き起こす突然変異の発生頻度や、突然変異スペクトル(塩基置換の種類や欠失の大きさなど突然変異の性質)の変化を明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

都市大気中の浮遊粒子が体内で示す変異原性を明らかにするために、gpt deltaマウス(変異原性検出用標的遺伝子・大腸菌gpt遺伝子をシャトルベクター(λEG10)に載せてゲノムDNAに導入したマウス)に、大気から採取した浮遊粒子より抽出した多環芳香族化合物等の成分を、実際の曝露経路を想定し、肺中へ経気道投与する。必要に応じてディーゼル排気由来ナノ粒子のマウスへの曝露など浮遊粒子曝露のモデル実験も実施する。浮遊粒子成分の作用により肺や精巣・精子などの標的臓器で突然変異発生頻度がどの程度上昇するか明らかにし、このデータを基に、都市大気が標的臓器内で示す変異原性を評価する。また、浮遊粒子抽出物を加齢動物の肺へ投与し、突然変異の発生頻度が高い時期(月齢)を明らかにする。突然変異が誘導された標的遺伝子(gpt遺伝子)の塩基配列を決定して、浮遊粒子の突然変異スペクトル(塩基置換の種類や欠失の大きさなど突然変異の性質)を求める。さらに、既知の変異原物質の突然変異スペクトルと比較して、浮遊粒子中の主要な作用を示す変異原物質、および肺や精巣・精子での変異原性発現メカニズムを推定する。本研究で得られた成果を健康リスク評価への活用するため、浮遊粒子成分が肺で示す体内変異原性のデータから浮遊粒子の発がん性を推定する。年次計画は下記の通り
平成21年度
都市大気中の浮遊粒子の成分抽出と分析
浮遊粒子抽出物がgpt deltaマウス肺中で示す変異原性の評価
gpt deltaマウス精子からのDNA抽出法の検討
平成22年度
浮遊粒子抽出物を投与した肺の突然変異スペクトルの解析
多環芳香族化合物・浮遊粒子抽出物が精巣・精子で発揮する変異原性の評価
平成23年度
精巣・精子に発生した突然変異スペクトルの解析
浮遊粒子抽出物が肺中で示す変異原性の加齢に伴う変化

今年度の研究概要

○都市大気中の浮遊粒子の成分抽出と分析
 ハイボリューム・エアサンプラーを用いて、東京圏の大気を吸引し浮遊粒子をフィルター上に捕集する。捕集した浮遊粒子から多環芳香族化合物などを含む炭化水素画分を、ソーレックス抽出器等を用い、ジクロロメタンなどの溶剤により抽出する。この画分を浮遊粒子抽出物とする。ガスクロマトグラフ/質量分析計等を用い、浮遊粒子抽出物中の多環芳香族化合物の含量を定量する。同時に、細菌を用いた種々の形式のエイムス試験により変異原性を調べる。
○浮遊粒子抽出物がgpt deltaマウス肺中で示す変異原性の評価
 gpt deltaマウスの肺中に界面活性剤に溶解した浮遊粒子抽出物を、ハロセン麻酔下に経気道投与する。変異原物質がDNAに結合し、さらに突然変異(塩基置換・欠失)が発生するまでの期間(肺の場合約2週間)を置いた後に、肺および突然変異が発生する可能性のある臓器(肝臓、腎臓など)を採取する。また、浮遊粒子曝露のモデル実験として、曝露チェンバー内でマウスにディーゼル排気由来ナノ粒子を長期間(12-24週間)曝露し、肺への影響を評価する。肺からゲノムDNAを高分子状態で抽出し、gpt遺伝子をゲノムDNAから大腸菌に回収し、突然変異の発生したgpt遺伝子を検出する。この変異体gpt遺伝子の出現頻度をもって、ゲノムDNA上の突然変異発生頻度とする。この結果を基に、投与した浮遊粒子抽出物量当りの突然変異頻度を算定し、さらに吸入大気量や浮遊粒子の体内負荷量当りの突然変異頻度を求めて都市大気が肺中で示す体内変異原性を評価する。浮遊粒子抽出物の肺への投与で充分な変異原性が検出されなかった場合は、すでに変異原性の知見が得られているディーゼル排気粒子の曝露を中心としたモデル実験により検討を進める。

備考

共同研究者 国立医薬品食品衛生研究所 能美健彦

課題代表者

青木 康展

  • 環境リスク・健康研究センター
  • フェロー
  • 薬学博士
  • 薬学,生化学,生物学
portrait

担当者

  • 松本 理環境リスク・健康研究センター
  • portrait
    中島 大介環境リスク・健康研究センター
  • 影山 志保