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環境化学物質による脂肪肝の増悪とその機構解明に関する研究(平成 21年度)
Studies on the enhancing effets of environmental chemicals on fatty liver

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0809CD008
開始/終了年度
2008~2009年
キーワード(日本語)
環境化学物質,脂肪肝
キーワード(英語)
environmental chemicals, fatty liver

研究概要

経口的に人体に曝露されうる環境化学物質の中から、異物や脂質代謝に関連の深い核内受容体・転写因子に作用する物質を選択し、それらの低用量曝露(が、肥満、糖尿病を伴う脂肪肝に与える影響とその内在機構を明らかにする。また増悪メカニズムを分子レベルで解明し、ヒトにおける健康影響評価に外挿する。さらに、健康影響評価に適用可能な指標(バイオマーカー)、特に、早期に変動する健康影響指標(予防的バイオマーカー)を探索し、未然防止に資することをめざす。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

本研究では、(1) 経口(経消化管)的に人体に曝露されうる環境化学物質や大気中の微小粒子(鼻腔に沈着するため、沈着物の嚥下による経消化管的曝露が存在する。)に含有される環境化学物質の中から、異物や脂質代謝に関連の深い核内受容体・転写因子であるaryl hydrocarbon receptor (AhR)、nuclear factor-E2-related factor 2 (Nrf2)、peroxisome proliferators-activated receptor(PPAR)に作用する物質を選択し、それらの低用量曝露が、肥満、糖尿病を伴う脂肪肝に与える影響とその内在機構を明らかにする。また、(2) 最近注目を集めている非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis :NASH)にそれらの環境化学物質が与える影響についても明らかにする。ついで、(3)増悪メカニズムを分子レベルで解明し、ヒトにおける健康影響評価に外挿する。さらに、(4)健康影響評価に適用可能な指標(バイオマーカー)、特に、早期に変動する健康影響指標(予防的バイオマーカー)を探索し、未然防止に資することをめざす。なお、メカニズムの解明とバイオマーカーの探索にあたっては、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現の包括的スクリーニングを活用する。また、同時に、酸化ストレスやカルボニルストレスによるタンパクや脂質の修飾・変性に注目する。
対象とする環境化学物質としては、(1) 抗酸化剤として使用され、Nrf2とその後の遺伝子発現を活性化するbutylated hydroxyanisole (BHA)、(2) 食品包装や食品容器に使用され、PPARとその後の遺伝子発現を活性化するDi(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)等のフタル酸エステル類、Perfluorooctanoic acid (PFOA)、Perfluorooctane sulfonate (PFOS)、及び、(3) 大気中の微小粒子の代表で、AhRとその後の遺伝子発現を活性化するデイーゼル排気微粒子に含まれる化学物質(ベンツピレン、キノン等)を選択する。

今年度の研究概要

1.環境化学物質による脂肪肝の増悪に関する研究
 平成20年度に続き、複数の環境化学物質を用いて、生活習慣病に関連する脂肪肝に及ぼす悪影響を明らかにする。C57BL/KSJ db/dbマウス(db/db)とC57BL/KSJ db/+mマウス(db/+m)(5週令で導入)を用い、下記の実験群で、投与(曝露)を施行する。
1. db/+m—vehicle曝露群(環境化学物質を溶解した溶媒のみを投与する。)
2. db/+m—環境化学物質曝露群 (少なくとも3用量曝露群を設定する。)
3. db/db—vehicle曝露群(環境化学物質を溶解した溶媒のみを投与する。)
4. db/db—環境化学物質曝露群 (少なくとも3用量程度の曝露群を設定する。)
Vehicleもしくは環境化学物質は、6週齢より18週齢までを目処に、週に1回、曝露を施行する。最終曝露の24時間後まで、以下の検討を経時的に行う。
[検討項目]
 経時的評価項目:死亡率、体重、臓器重量、摂食量、摂水量、血液・尿に関する生化学的検討、肝機能、脂質、血糖、インスリン、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、腎機能等。
 解剖時評価項目:組織学的検討。病変については、病理組織像の画像所見を数量化し、各群間で定量的な比較・検討を行う。また、タンパク質の一部とカルボニルストレスによる変性タンパク質・脂質に関しては、免疫組織学的検討も行う。
2.環境化学物質が脂肪肝を増悪するメカニズムの解明とバイオマーカーの探索に関する研究
 脂肪肝に対して、影響を認めた化学物質につき、増悪メカニズムを分子レベルで解明する。また、当該健康影響の評価に適用が可能で、かつ、適切なバイオマーカー、特に、予防的バイオマーカーを探索する。これらを達成するため、DNAマイクロアレイを用いた包括的な発現遺伝子解析を進める。また、酸化ストレス、カルボニルストレスマーカーの変動にも注目し、両者より、メカニズムの解明とバイオマーカーの探索を目指す。具体的には、肝臓のサンプルを用い、下記の分子を主たる対象とし、DNAマイクロアレイ(Affymetrix, GeneChip)を用いた包括的遺伝子解析を行う。また、対応するタンパク質の発現変動を、Western blotting、あるいはELISA法を用いて検討する。さらに、これらの遺伝子の転写に関わる核内レセプターと転写因子についても、併せて検討する。

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

高野 裕久

担当者