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前鰓類におけるレチノイドX受容体の機能解析:雄性生殖器の分化・成長との関係(平成 20年度)
Analysis of physiological functions of the retinoid X receptor in prosobranch gastropods

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0708CD301
開始/終了年度
2007~2008年
キーワード(日本語)
前鰓類,インポセックス,レチノイドX受容体,雄性生殖器
キーワード(英語)
PROSOBRANCH GASTROPODS, IMPOSEX, RETINOID X RECEPTOR, MALE REPRODUCTIVE ORGANS

研究概要

 前鰓類におけるインポセックスは、船底防汚塗料由来の有機スズ(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))化合物によって特異的に惹起される。インポセックス誘導メカニズムとして、アロマターゼ阻害説をはじめとする4つの仮説が提起されてきたが、追試の結果、これらは十分に再現されなかった。一方、我々は、核内受容体の一種・レチノイドX受容体(RXR)が前鰓類のインポセックスの発症に極めて重要な役割を演じていることを見出した。本研究では、雄性生殖器の分化・成長との観点でRXRの機能解析を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

 前鰓類におけるインポセックス(雌に対する雄性生殖器(ペニスと輸精管)の形成並びに発達)は、船底防汚塗料などとして世界各地で使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT)化合物)によって特異的に引き起こされる内分泌かく乱現象であることが知られている。また、有機スズの水中作用濃度がpptレベルのごく低濃度であること、年齢に関係なく有機スズ曝露に伴ってインポセックスが発症すること、インポセックス症状は不可逆的であること、重症の場合には陰門閉塞や卵巣の精巣化などに伴って産卵不能となること、などの特徴がある。インポセックスは、世界中の前鰓類のうちの少なくとも150種以上で確認されており、各地でインポセックスが主因となって個体群の減少や消滅が観察されてきたことから、前鰓類の生態にきわめて重篤な影響を及ぼしてきたことが明らかである。一方、ごく微量の有機スズによって雌が雄に性転換する現象と考えられるインポセックスは、生物学的にはきわめてユニークな現象と受け止められてきた。有機スズ化合物が前鰓類にインポセックスを引き起こすメカニズムとして、これまでに?アロマターゼ阻害説、?アンドロゲン排出阻害説、?脳神経節障害説、及び?APGWamide関与説という4つの仮説が提起されてきた。しかし、我々の追試の結果、これらはいずれも十分に再現されなかった。メカニズム解明を困難にしている理由の一つは、前鰓類の生殖生理に関する基礎的知見が欠落している点にある。そうした中で、我々は、核内受容体の一種であるレチノイドX受容体(RXR)が前鰓類のインポセックスの発症に極めて重要な役割を演じていることを見出した。本研究では、前鰓類の生殖生理に関する基礎的知見の獲得と蓄積を進めるとともに、RXR関与説をさらに発展させることを目的として、RXRの機能解析に関する研究を行う。

今年度の研究概要

1)TBT曝露に伴うペニス形成部位の形態観察及び遺伝子発現の経時観察
 佐渡産の正常雌イボニシにTBTを筋肉注射し、毎週取り上げて右触角後部(ペニス形成部位)から陰門に至る部位を採材して組織標本の検鏡とともにRXRの遺伝子発現を追跡する。
2)ペニスの成長や退縮に関わる遺伝子の探索
 1)で観察対象とする個体を用いて、ディファレンシャル・ディスプレイ法による解析を行い、ペニスの成長及び退縮に関わると考えられる遺伝子の探索を行なう。いくつかの遺伝子が見出された場合、ジーンバンク登録遺伝子との照合を試みる。
3)全生活環での飼育技術が確立されているバイにおける生殖輸管形成機序の観察
 1)で述べたように、現時点では初期生活史段階のイボニシを対象とした実験を行なうことは困難であるため、種苗生産施設で全生活環での飼育技術が確立されているバイを用いて、孵化後2〜3年間継続して、生殖輸管形成機序の観察を行う。
4)バイ(エゾバイ科)におけるRXRの組織内分布の検討並びにイボニシとの比較
 3)で用いるバイを対象に、免疫組織化学染色法により、RXRの組織内分布を明らかにし、イボニシと比較して、類似点と相違点を検討する。
5)ヨーロッパチヂミボラ(アクキガイ科)及びヨーロッパアラムシロガイ(オリイレヨフバイ科)に対する9-cis レチノイン酸(9CRA)の筋肉注射試験
 ヨーロッパでインポセックス研究に広く使用されてきたヨーロッパチヂミボラ及びヨーロッパアラムシロガイを対象に、9CRAの筋肉注射試験を行い、インポセックスの誘導及び発達に対する効果を評価する。また、イボニシにおける既往知見と比較して、類似点と相違点を検討する。
 これにより、ペニスのみならず、輸精管の形成機序を明らかにし、それへのRXRの関与を調べ、同時にペニスと輸精管の分化あるいは発達に関わるinducerやpromoter、RXRとヘテロダイマーを形成する可能性がある核内受容体などの周辺情報を整理し、種差についても検討を進める。

備考

太田康彦(鳥取大学農学部獣医学科)
Ana Sousa(ポルトガル・アベイロ大学)

課題代表者

堀口 敏宏

  • 環境リスク・健康研究センター
    生態系影響評価研究室
  • 室長
  • 博士(農学)
  • 水産学,生物学,解剖学
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担当者