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前鰓類のインポセックス誘導機構の解明:レチノイド X 受容体(RXR)を介した有機スズ化合物の作用機序の解析(平成 18年度)
Elucidation of induction mechanism of imposex in prosobranch gastropods: Analysis of a mode of action of organotin compounds mediated by the retinoid X receptor (RXR)

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0506CD909
開始/終了年度
2005~2006年
キーワード(日本語)
巻貝類,インポセックス,誘導機構,有機スズ化合物,レチノイドX受容体
キーワード(英語)
GASTROPODS, IMPOSEX, INDUCTION MECHANISM, ORGANOTIN COMPOUNDS, RETINOID X RECEPTOR

研究概要

 本研究では、現在までに蓄積されてきた知見をさらに発展させて前鰓類におけるインポセックスの誘導機構をより詳細に解析することを目的とする。すなわち、以下の諸点を検討し、明らかにする。
1) 前鰓類における生殖輸管の形成及び発達過程に関する組織学的検討、
2) RXRとインポセックス発症との関係:用量-反応性の検討、形成されたペニス及び輸精管の雄の組織構造との比較、抗RXR抗体を用いた免疫染色によるRXRタンパクの組織内分布、
3) RXR遺伝子発現部位の特定:組織・部位別発現量の比較、発現細胞の特定、
4) RXR遺伝子の有機スズに対する応答性の検討:有機スズ曝露に伴うRXR遺伝子発現の経時変化、
5) 有機スズ化合物に応答する遺伝子の検索、
6) RXRと結合する遺伝子配列のクローニングによるRXRの標的遺伝子の検索

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

 われわれがこれまでにイボニシを用いて行ってきた実験的検討の結果、インポセックスの発症及び症状の増進においてレチノイドX受容体(RXR)がきわめて重要な役割を演じていることが明らかとなった(Nishikawa et al., Environ. Sci. & Technol., 38: 6271-6276, 2004.)。本研究では、現在までに蓄積されてきた知見をさらに発展させて前鰓類におけるインポセックスの誘導機構をより詳細に解析することを目的とする。すなわち、RXRとインポセックス発症との関係を用量-反応性、形成されたペニス及び輸精管の雄の組織構造との比較の観点で精査し、抗RXR抗体を用いた免疫染色によるRXRタンパクの組織内分布を明らかにする。並行して、前鰓類における生殖輸管の形成及び発達過程に関する組織学的な基礎的知見の獲得を目指す。またRXRがリガンド結合性の転写制御因子であることに着目して、RXR遺伝子の発現組織・細胞の特定、RXR遺伝子の有機スズ化合物(TBT及びTPT)に対する応答性、有機スズ化合物に応答する遺伝子の検索、及びRXRの標的遺伝子の検索を行う。

今年度の研究概要

1) 有機スズ化合物に応答する遺伝子の検索

 有機スズによる汚染レベルが軽微な海域で採集されたイボニシを国立環境研究所の実験室で人工海水を用いて1ヵ月以上馴化し、有機スズの流水式連続曝露を行う。対照区にはアセトン・DMSO混液を用いる。曝露後3日もしくは3週間後に供試個体を取り上げ、それらのイボニシの対象組織を摘出して氷上でホモゲナイズしmRNAを抽出する。mRNAを鋳型にしてcDNAを合成し、PCR法を用いてcDNAの増幅を行う。対照区のサンプルについても同様の操作によりcDNAを増幅し、ゲル電気泳動によって増幅したcDNAを展開させ対照区と曝露区との間で泳動パターンを比較する。展開したcDNAの挙動が異なっているバンドを有機スズ応答遺伝子として選択する。この過程で得られるDNA断片は応答遺伝子の一部である。全長をクローニングするためにcDNAライブラリーを作製し、得られた遺伝子断片をプローブにしてプラークハイブリダイゼーションを行い、応答遺伝子の全長クローニングを行う。クローニング後は得られた遺伝子が有機スズ応答遺伝子であることを、real time RT-PCRによって確認する。

2) RXRと結合する遺伝子配列のクローニングによるRXRの標的遺伝子の検索

 核内受容体は標的遺伝子の上流(調節領域)に結合して転写の制御を行うことが知られているため、本研究ではRXRに結合する遺伝子領域をクローニングすることによって、RXRの標的遺伝子の検索を行うことを目的とする。そのために、RXRと結合するDNA断片(標的遺伝子の調節領域)のクローニング、調節領域をプローブとした、ゲノムライブラリーからの標的遺伝子(一部)のクローニング、及び標的遺伝子の一部をプローブとした、cDNAライブラリーからの標的遺伝子全長のクローニングの3段階の実験によって標的遺伝子のクローニングを行う。

3) 総括

 本研究で得られる結果を総合することにより、イボニシを含む前鰓類において有機スズ化合物により引き起こされるインポセックスの誘導機構を分子レベルで解析し、その全体像の解明に向けた検討を進める。

備考

太田康彦(鳥取大学農学部)

課題代表者

堀口 敏宏

  • 環境リスク・健康研究センター
    生態系影響評価研究室
  • 室長
  • 博士(農学)
  • 水産学,生物学,解剖学
portrait

担当者

  • 白石 寛明環境リスク・健康研究センター
  • 西川 智浩