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重点4. 生物多様性の減少機構の解明と保全(平成 17年度)
4. Biodiversity conservation research project

研究課題コード
0105SP041
開始/終了年度
2001~2005年
キーワード(日本語)
生物多様性, 遺伝子, 種, 生態系, 侵入生物, 遺伝子組換え生物
キーワード(英語)
BIODIVERSITY, GENETICS, SPECIES, ECOSYSTEM, BIOLOGICAL INVASION, GMO

研究概要

生息地の破壊・分断化と侵入生物・遺伝子組換え生物による地域生態系の生物多様性への影響を解明し、保全手法を開発するため、在来の野生生物について遺伝子,種,生態系(群集)の3つのレベルで地域の生物多様性の特性を明らかにするとともに、種分布の分断化や侵入生物・組換え生物による撹乱の状況を地図情報化する。さらに、地理空間情報と種の繁殖様式情報を統合した種間競争モデル化によって、在来種を駆逐する危険性の高い侵入生物の特性や多種共存のメカニズムを明らかにする。また、絶滅の危機に瀕する野生生物の保全や動態把握に不可欠な技術及び手法の開発研究を実施する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

13年度3種類の異なった空間スケールにおける生物多様性評価手法の開発に着手する。地域スケールでは、これまでに構築した関東中北部のGISを利用して、現状の植生分布等と野生生物分布の重ね会わせから生息可能な環境を割り出す手法を開発する。流域スケールでは河川流域における生態系多様性の成立要因を明らかにするために、単位となる局所生態系を生物群集構造から分類する手法を開発する。局所生態系スケールでは森林生態系での物理的・生物的撹乱による生物多様性の変動を予測するモデルのフレームワーク開発を行う。また、侵入生物/遺伝子組換え生物の生態影響に関する基礎情報を整備するために、侵入生物種については種のリストアップと文献情報の収集を行い、遺伝子組換え生物については環境浄化または組換え体の挙動調査に有用な生物および遺伝的マーカーを探索・単離するとともに、それを導入した組換え植物・微生物を作成する。
 14年度海外の研究者の協力をえて、東アジア地域の地形・植生・土地利用・野生生物の分布情報を収集するとともに、フィールド調査を行う。流域スケールとフィールド調査に重点をおき、単位生態系内の生物群集構成を明らかにする。個体ベースモデルに使うデータおよびパラメータの感度や影響の大きさの検討を行う。侵入生物の情報収集を国内各地の研究者の協力をえておこなう。遺伝子組換え生物については、マイクロアレイ法による安全性検査手法の開発を行う。
 15年度前年度の研究を継続して行う。
 16年度地域スケールと流域スケールにおいて、植生、土地利用、緯度、経度,標高などの条件と野生生物の分布との対応関係を分析する。局所生態系スケールでは多種競争系の動態を記述する個体ベースモデルを開発する。遺伝子組換え生物は半野外実験系でマメ科植物の交雑および選抜実験を行い,種間の遺伝子伝搬を検証する。
 17年度土地改変や気候変動の歴史的情報をもとに、野生生物の潜在生息地の過去や未来を地図上に記述する手法を開発する。前年度開発した個体ベースモデルを用いて生息地の分断、侵入生物等のパラメータを導入し、それらの影響の程度を解析する。侵入生物による遺伝的撹乱が心配される野生生物のDNA解析により、遺伝子侵食の実態を調査する。

今年度の研究概要

(1)これまでに蓄積された野生生物の分布情報を用いて置換不能度を計算し、保全の重要地点を抽出する。また、動物地理学的区分と、保全を目的とした地理区分との比較検討を行う。
 (2) 流域スケールで開発した生息適地を評価するモデルをもとに、流域全体の生物多様性を保全することを目標とするモデルへと発展させる。ため池の調査データの解析から、現在のため池の生物多様性を決定している幾つか重要なパラメタの特定ができたので、具体的なため池の保全地区の設定手法の開発を行う。
 (3)北海道の河川形状の大正時代から現在までの変遷とその淡水魚類への影響解析を進め、生物多様性の減少を招いた景観要因の解析を行う。
 (4) 侵入生物の実態解明でえられた成果をもとに、生態リスク評価手法を開発する。そのために、上記で開発した生息適地分布モデルを適用する。また、侵入種の分布拡大パターンの解析を行う。
 (5)組換えナタネの遺伝子移行に関する調査を行う。
 (6)環境中での標的微生物の機能を解析するためにmRNAのモニタリングを行う。
 (7)森林の樹木の多種共存メカニズム解明のために開発したモデルをベースに、現場調査でのモデルの検証を行う。生物多様性変動機構解明のための食物網モデルの更なる解析を進める。

課題代表者

椿 宜高