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ヒ素の生体影響においてDNAメチル化率は分子マーカーとして使えるのか?(平成 16年度)
DNA Methylation Changes May Be Useful As A Biomarker In Arsenic-Induced Health Effects?

予算区分
AF 奨励
研究課題コード
0405AF788
開始/終了年度
2004~2005年
キーワード(日本語)
ヒ素,DNAメチル化,バイオマーカー,エピジェネティクス
キーワード(英語)
ARSENIC, DNA METHYLATION, BIOMARKER, EPIGENETICS

研究概要

DNAメチル化率を指標としたヒ素の生体影響評価の構築ヒ素の生体におけるDNAメチル化率変化を分子指標として開発・構築することを目的とする。さらに、DNAメチル化率同定によって分子レベルでヒ素の発癌、制癌両面性を明らかにすることで、将来的に健康リスク評価に結びつける。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

ここ数十年以来飲料水中ヒ素汚染によって、発癌を含む多臓器疾患を起こすことが知られ、その被害規模は大きい。その一方、近年、薬剤耐性になった難治性の急性前骨髄性白血病に亜ヒ酸が著効することが中国のグループなどから報告され、ヒ素のヒト健康に与える両面性影響を持つ特徴が分かる。無機ヒ素は体内に吸収されてから、代謝によってメチル化ヒ素になる一方、DNA損傷や遺伝子発現異常を引き起こす(Cui X et al., Tox Path 2004)。最近、われわれはラットの胆汁から中間体として毒性の高い3価ジメチルヒ素グルタチオン抱合体と思われる代謝物を検出した(Cui X et al., Tox Sci 2004)。ヒ素は遺伝子メチル基を供給するS-アデノシルメチオニンを枯渇させ、広範囲のDNAの脱メチル化を促進する。DNAのメチル化は、ゲノム中の各座位の遺伝子発現を制御していることから、分子レベルでのDNAメチル化異常は発癌をもたらしている。よって、ヒ素は癌関連遺伝子のメチル化に影響し、DNAメチル化率の変化によって発癌か制癌の方向に働くものと考えられ、ヒ素の生体影響においてDNAのメチル化率変化を分子指標として開発・構築する価値は非常に大きいと考えられる。ヒ素の発癌方向の研究においては、C3Hマウスにヒ素を投与し、肝癌発生におけるヒ素によるゲノムワイドなメチル化の異常を同定する。ヒ素の制癌方向の研究においては、肝癌細胞株を用いてヒ素投与による、高メチル化により失活したp16 、RASSF1A、hMLH1など主要癌関連遺伝子のメチル化率変化、DNAメチル化酵素1(DNMT1)遺伝子発現や活性変化をを調べる。価ジメチルヒ素グルタチオン抱合体と思われる代謝物を検出した(Cui X et al., Tox Sci 2004)。ヒ素は遺伝子メチル基を供給するS-アデノシルメチオニンを枯渇させ、広範囲のDNAの脱メチル化を促進する。DNAのメチル化は、ゲノム中の各座位の遺伝子発現を制御していることから、分子レベルでのDNAメチル化異常は発癌をもたらしている。よって、ヒ素は癌関連遺伝子のメチル化に影響し、DNAメチル化率の変化によって発癌か制癌の方向に働くものと考えられ、ヒ素の生体影響においてDNAのメチル化率変化を分子指標として開発・構築する価値は非常に大きいと考えられる。本プロジェクトにて、ヒ素の発癌方向の研究においては、肝癌ができやすいC3Hマウスにヒ素を投与し、肝癌発生におけるヒ素によるゲノムワイドなメチル化の異常(CpG island methylator phenotype CIMP)を同定する。ヒ素の制癌方向の研究においては、多くの癌細胞で癌抑制遺伝子が機能を失っていて、そのメカニズムの一つは遺伝子のプロモーター領域の高メチル化によって癌抑制遺伝子発現が妨げられていることから、肝癌細胞株を用いてヒ素投与による、高メチル化により失活したp16 、RASSF1A、hMLH1など主要癌関連遺伝子のメチル化率変化、DNAメチル化酵素1(DNMT1)遺伝子発現や活性変化をを調べる。2)ヒ素による発癌・制癌作用の分子メカニズムの解析ヒ素化合物は生体内に吸収されると還元およびメチル化を経て体外に排泄される。ヒ素代謝によって生体内のメチル基のバランスが崩れ、その結果分子レベルでもDNAのメチル化に影響を与えている。現在報告されているヒ素の発癌や制癌メカニズムに関しては不明な点が多い。そこで、DNAメチル化率を用いた癌関連遺伝子のメチル化率を解析し、ヒ素による各主要遺伝子のプロモーター領域のメチル化率及びその遺伝子のmRNAの発現を調べる。次に、得られたこれらの情報から発癌方向や制癌方向に働く分子レベルの指標を定める。DNAメチル化率同定によって分子レベルでヒ素の発癌、制癌両面性を明らかにすることで、将来的に健康リスク評価に結びつける。

今年度の研究概要

無機ヒ素は体内に吸収されてから、代謝によってメチル化ヒ素になる一方、DNA損傷や遺伝子発現異常を引き起こす。最近、われわれはHPLC-ICP MS装置を用いてラットの胆汁から中間体として毒性の高い3価ジメチルヒ素グルタチオン抱合体と思われる代謝物を検出した(Cui X et al., Tox Sci 2004)。ヒ素は生体内でメチル基を消耗することによって癌関連遺伝子のメチル化に影響し、DNAメチル化率の変化によって発癌か制癌の方向に働くものと考えられる。従って、ヒ素の生体影響においてDNAのメチル化率変化を分子指標として開発・構築する価値は非常に大きいと考えられる。

課題代表者

崔 星

担当者

  • 平野 靖史郎