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重点6. 大気中微小粒子状物質(PM2.5)・ディーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価(平成 16年度)
6. Study on environmental behaviour and health effects of PM2.5・DEP

研究課題コード
0105SP061
開始/終了年度
2001~2005年
キーワード(日本語)
PM2.5, DEP, 大気中微小粒子状物質, 健康影響
キーワード(英語)
PM2.5, DEP, AIRBORNE FINE PARTICULATE MATTER, HEALTH EFFECTS

研究概要

大都市部や幹線道路沿いにおいて大気中浮遊粒子状物質が環境基準を満たせない状態が続いている。この浮遊粒子状物質のうちで健康影響が大きいとされる微小粒子状物質の濃度が増加すると死亡率が増加するとの疫学調査の結果が米国をはじめとして各国で出て来ている。また微小粒子状物質に対する高感受性群として呼吸機能や循環機能に障害を持つ人や老人などが挙げられてきた。しかし微小粒子状物質が死亡率を上げる機構についての科学的知見は殆ど無い。都市大気中におけるPM2.5やDEPを中心とした粒子状物質による大気汚染を改善するためには、発生源の把握、環境濃度との関連性の解析、並びに疫学・曝露評価、毒性・影響評価を行う必要がある。浮遊粒子状物質等の都市大気汚染の発生源特性の把握、測定方法の開発、環境大気中での挙動の解明、地域濃度分布及び人への曝露量の予測、動物曝露実験による閾値の推定、発生源対策シナリオについて検討を研究の目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

(1)トンネル調査や沿道調査等の手法を用いて、実走行状態での発生源特性を明らかにする。これとともにシャシーダイナモ実験を実施し、ディーゼル排気成分の排出特性を明らかにする。また、固定発生源からの粒子状物質発生量を調査し、固定・移動発生源からの都市、沿道PM・DEP発生量を明らかにする。さらにPM・DEP対策の視点から交通・物流システムの改善策とその効果について大都市圏を対象に検討する。(2)風洞実験、航空機観測、モデル解析、データ解析手法を確立し、沿道スケールから地域スケールの環境大気中における二次生成粒子状物質を含む粒子状物質の動態を立体的に把握する。具体的には広域PM2.5・DEPモデル、及び都市・沿道PM2.5・DEPモデルを検証し、都市・沿道大気汚染予測システムを構築する。このモデルを用いて発生源と環境濃度との関連性を定量的に明らかにする。(3)ガス状成分、粒子状物質計測のための各種測定手法を比較評価し、発生源と環境における粒径別粒子状物質やガス状物質の組成や濃度を把握する。(4)曝露量・健康影響評価のために地理情報システム(GIS)を運用し、PM2.5・DEPの地域分布の予測を行う。この結果を統計解析し、それぞれの地域における曝露量を予測する。さらに、GISを利用した全国・地域PM2.5・DEP曝露予測結果と疫学データとの関連性を解析し、健康リスク評価に関する資料を提供する。(5)実験的研究を実施して、PM特にDEPの健康影響に関する知見を集積する。ディーゼル排気全体の呼吸 - 循環系への影響を明らかし、次にディーゼル排気中成分の曝露実験を行い、排気中の粒子あるいはガス成分の呼吸器系への影響並びに循環器系への影響を順次解明する。これらの結果を基に、ディーゼル排気曝露の動物への濃度 - 影響関係から閾値の算定を行う。

今年度の研究概要

今年度は、これまでに行った研究を発展させ各研究分野における研究の蓄積を図る。特に、測定機器精度の実験室およびフィールドにおける検証と、測定方法の確立を行う。また、野外観測、室内実験結果の解析を行い、この知見をもとに特定の地域をターゲットとした対策シナリオを検討する。また、大気環境中ナノ粒子の研究を実施する。具体的には大気環境中ナノ粒子の組成・形態・粒径分布等の測定方法、環境動態の把握、に関する検討を実施する。
平成16年度からは研究のとりまとめの段階に入るため、これ迄の個別的研究課題を、
(1)排出実態と環境動態の把握及び計測法に関する研究、(2)曝露量に基づく対策評価モデル等に関する研究、(3)健康影響の評価に関する研究に整理統合し、それぞれ、以下の研究を実施する。(1)発生特性の把握と環境における挙動を明らかにする。実際の走行実態を重視し、リアルワールドの発生量を把握する。フィールド観測や室内実験結果を基に濃度予測モデルを開発する。大気浮遊微小・超微小粒子の計測法法を定め、発生源と環境濃度の関連性を把握する。(2)曝露量を推計するモデルを構築し、各種の対策を実施した場合の環境濃度と曝露量を明らかにする。(3)大気微小粒子の健康影響を、疫学と毒性学の手法を用いて評価する。
研究を進めるにあたっては、国立環境研究所内の関連研究プロジェクトや国内外の国公立研究機関、大学、民間、並びにJCAP2プロジェクト等、外部との研究協力・共同研究を行う。



課題代表者

若松 伸司