廃棄物処理をIoTで効率的に:「廃棄物処理リサイクルIoT導入促進協議会」について

vol.9-2 藤井 実 室長<中編>
2019.11.5
 9人目のインタビュー、続いては藤井室長が座長を務める「廃棄物処理リサイクルIoT導入促進協議会」についてお話しを伺いました。IoT(Internet of Things;モノのインターネット)と廃棄物処理がどのように結びつくのでしょうか。
 

<中編>廃棄物処理をIoTで効率的に:「廃棄物処理リサイクルIoT導入促進協議会」について

藤井さんが座長をされている「廃棄物処理リサイクルIoT導入促進協議会」の方も発想的には産業スマートエネルギーシェアリングと似ているのかなという印象ですが、そちらはどういった状況ですか。

 もともとの発端は少子高齢化で今まさに廃棄物処理産業では人手不足になっているという状況、特に廃棄物関係は誰しもが憧れる職業では正直ないので、どうしても人が足りなくなりがちなので、そういう中でいかに業務を効率化して、少ない人数でもちゃんとやっていけるようにできるかというのが大きなニーズとしてありました。

 一方では国もソサエティー5.0とか、国際的にも第四次産業革命とかいろいろ言っている中で、これからは情報技術を更に高度に使っていく時代ですが、廃棄物分野では導入が遅れ気味というところはあるようにも思っていて、そういうところで廃棄物に関係する皆さんがまず集まって、どんなところにどんな情報技術を利用できるかについて勉強を始めつつ、何か話がまとまったところから実際にプロジェクトをちょっとずつ始めていくというような、そんな仕組みができてきていると思います。

 今企業の会員が50社ぐらいで、かつ自治体が10件ちょっとくらい、それからあと環境省、経産省とかのオブザーバーが何件かという感じで、結構な人数が集まっているという感じではありますね。

そういった方々はどうやって集まったんでしょうか?

そうですね、もともと事務局の人が頑張って人を集めたというのはあるんですが、活動が認知されると、私がお付き合いのある方で入ってくださった方もいますし、評判を聞いて入ってくださった方もいますね。

関心は高まってきているのでしょうか。

高まっているというよりは、もともと高くて、それが維持されている状況です。ただ、幾つかのパイロット事業が始まってはいますが、なかなかまだ目に見える、ものすごく大きな成果が得られているという訳ではない中で、みんなもどうしたらよいかが明確には見えていないという状況でしょうね。

まさにこれからということでしょうか。

そうですね。ただ一方で、こういう技術って進みだすと進化速度が早いところもありますし、まさにこれから、本当に何か見える成果を出していかなきゃいけない段階にきてるのかなという気はしますね。

具体的にどういう仕組みで廃棄物処理にIoTを使うのでしょうか?

 まず、廃棄物が排出される所から始まって、集める過程があって、それを選別したりといった前処理の工程を経て最終的に使う、リサイクルするとか焼却するとか、埋立てる段階まであります。例えば廃棄物を出す段階では、まず廃棄物の量を把握するというのは一番誰しも思い付くことで、ごみ箱であれば距離センサーみたいなものがあれば、満タンになりそうになったら通知される仕組みができたり、もし倉庫みたいな所にごみを積み重ねて置いているのであれば、カメラも用いて計量したりすます。

 今までは決められたルートで集めに行っても空振りということがあったりするわけです。あるいは、担当の人が見回って「あ、いっぱいになってるから集めに来てね」と電話してきてもらう方法だったのが、どこにどれだけごみがあって、もうここは取りに行かないと駄目だとか分かるわけです。ルート回収と言って、少量ずつごみが出るようなケースだと何カ所か回っていくわけなんですが、最も効率的なルートで集めることができるようになるということが一つですね。

 それから、選別の段階では、今までは割と手作業でやっていたのが、だんだんロボット化が進んでいて、かつどんな組成のものがどれだけ入ってるかという情報がシェアされれば、それを使いたい人にも、これだったらこういう用途に使えるということが分かるので、情報を活かして用途を最適化することができます。今はそんな情報を共有する仕組みまではなかなかできてないですけど、そんなものができてくるとより適切に廃棄物がリサイクルされるようになってくるのかなと思いますね。

 あとは先ほどの話のように、廃棄物をエネルギーとして使うということです。安定してエネルギーが供給できることが大事なので、「明日は、明後日はこれぐらい廃棄物が集まりますよ」という情報をしばらく先まで集めておいて、例えば1週間ぐらいの計画を立てて、「ここの部分は足りなくなりそうだからこっちから持ってこよう」とか、そういうやりとりをして安定供給をできるようにするといいですね。

 産業廃棄物のマニフェストというのがあって、要は廃棄物がちゃんと、その辺に放置されないで処理されたことを追い掛けていく仕組みがあるんですが、それは以前は紙で記録していたんですね。それを電子化するというのが最近の動きとしてあります。別に協議会がやっているわけではなくて、前からそういう流れがあるんですが、そういった仕組みもある種IoT化と言えるかもしれません。電子化されると共有しやすくなるので、それをうまく活用しようという話は協議会の中でも議論しているところです。

後編へ

 廃棄物処理にIoTを導入することでいろいろな課題を同時に解決できそうです。
最後の後編では、今後必要な「イノベーション」についてどのようにとらえているか、お話しを伺いました。