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2016年12月28日

vol.5-2 松橋 啓介 室長<後編>
多様な価値観を認める社会

インタビュー対象

5人目のインタビューは、環境政策研究室の松橋啓介室長にお話を伺います。
後編では、「持続可能社会転換方策研究プログラム」の中で提示された2つの社会像と、この研究が今後どのように発展していくかということについて聞いてみました。

インタビュー内容<後編>

持続可能社会転換方策研究プログラム(略称:持続プログラム)で2つの社会像が出てきています。「ゆたかな噴水型社会」(経済発展重視)はなんとなくすぐにイメージがつくんですけど、「虹色のシャワー型社会」(多様性重視)のほうで言う多様性というのは、例えばどういう多様性でしょうか。

あらゆる多様性だと思います。人間関係とか、健康とか、いろいろなものをお金に換算してその最大化を図るということが、最近強まり過ぎて、多くの問題(マルチ商法とか、ブラック企業とか)を起こしているように感じます。そこで、ほかの価値観も大事にしようということが言えると思います。いろんな価値観を大事にすることは当然だと思うんですけど、仕事第一の価値観に染まってしまうと多様な価値観を受け入れられなくなってしまうということが起きってしまっていると思うんですね。

お金以外のものも大事にするということですね。

そうですね、お金とか、あとは効率性が大事にされ過ぎているかもしれませんね。とにかく早く終わらせようとする。それもお金からきているところもあると思いますが、効率的にやることが第一という価値観ですね。お金だけを目の敵にするようで変なふうに受け取られてしまいそうですが、お金がまったくないことをイメージしているわけではありません。先ほど言ったように「なんでもかんでも全て貨幣換算してしまって、(他の価値観に対する)重みを全部みえなくしてしまうのはちょっとおかしい」ということはたぶん伝わると思います。そこはバランスを取っていったほうがいいと誰しも直感で分かっていると思いますが、それがなかなかできていない。そのバランスを取っていく中で環境を大事にすることも一緒に考えてもらうことが大事かなと思っています。

 たとえば森さん(社会環境システム研究センター)が研究対象としていた「スポーツGOMI拾い」(http://www.spogomi.or.jp/)では、人々が集まって活動することで、仲間づくりや健康づくりに役立つことと環境問題の解決とが組み合わされて構成されています。こうした活動をうまく評価するための枠組みとしても今後役に立っていくと良いと思います。

だいぶイメージが膨らみました。ありがとうございます。その2つの社会像について、もう1つ聞こうと思ったのが、どうなったらそういう社会になれるのかという点です。

たとえば国や自治体の環境基本計画でどういうものを目指したらいいかを考えるときに、健康や生きがいといった個人の側面とか、あるいは社会の側面とかを環境と一緒に考えていったほうが良いと位置づけて盛り込んでいくという方法があります。ただし、環境政策だけだと限界があるので、長期的で総合的な公共政策としてやっていく必要があります。それを具体的にリードするのが環境省なのか、まちづくりに関する都市計画なのか、あるいは自治体の総合計画なのか、分かりませんが、おそらく、複合的に協働して取り組んでいく必要があると思います。そうして社会が移っていくことを期待しています。

 他には環境指標や、持続可能な発展目標(SDGs)にも、関連すると思います。今回、報告書の中で自治体の総合計画に出てくる目標を持続可能な発展の面から分析して、いろいろな側面がきちんと入っているかどうかを評価しています。(参考:論文要旨)(政策として)バランス良くやっていく必要があって、環境保全も自治体の目標に入れましょうという話になっていくと思います。
 
 指標や評価は重要です。一定規模以上の開発をするときには環境アセスメントがありますが、今は古典的な環境問題の面で見られている感じが強いです。一方で、持続可能性の観点から、より幅広く見ていったほうがいいという考えもあります。そうすると開発が地域にとってどういう影響を与えるか、という話をより幅広い面でチェックできるようになります。今は儲かるかどうか、つまり、土地が一番高く売れるようにするためにあんまり規制がないように、というほうに向かいがちで、思いやりのないまちになってしまいかねません。そうならないためにどう考えたらいいかという意味でも、方向性を示せるかなと思います。

 あとは、メーカーさんと一緒にシナリオ作りをした部分が、青柳さん(社会環境システム研究センター)の研究にあるので、そこからも社会に普及、波及していくことを期待しています。共同研究をしている機関からも、面白いという反応が得られているので、研究仲間を介して研究が広がっていくといいなと思っています。

なるほど。様々な波及の相手がいて、それが今度どうなっていくかっていうところなんですね。

そうですね。あとは、統合研究プログラムでやることがあると思います。これまでの5年間は先導研究プログラムとして、重点研究プログラムに比べると応用性は高くないというか、まだ十分に注目されてないけど、研究したほうが良いだろうという位置づけでやってきていました。これからに期待してください。

統合プログラムの話が出ましたが、今度どうつながっていくのかという点について、もし何かあれば教えてください。

合意形成をどうするかという点について、人が場面に応じた選択をすることと、まちづくりや仕組み作りとの関係について考察を深めるための研究に着手しています。

 これも今まであまりやらなかった内容なので、難しいと言われながらやっています。ただ、市民参加や、まちづくりに関心はあったので、大本からは外れていません。それに関するツールとか専門的な知識は十分に持っていないかもしれないので、勉強しています。
 
 今後は、生活や交通といった身近なところで、どうしていったら低炭素に—持続可能に—うまくやっていけるのかというのを具体的なイメージとして示していきたいですね。コンパクトシティの研究でも、数字の上ではこう集まったらいいということは言っていたんですけど、では具体的にどういう人がどんな暮らしをしていたら良さそうか見えるように、あるいは評価できるようになるといいかなと思っています。

続いて、さっき市民参加という言葉が出ましたが、研究に市民的意見を取り入れるとか、聞いていくことについて松橋さんはご関心がありますよね。実際市民参加に関してどう思われているのか、また具体的に取り組まれていることがあれば教えてください。

まちづくり的には、多くの人に、きちんと通じるような内容で話をできるようにしたいです。分かりやすく伝えられるほうがいいし、分かりやすく言ってもインパクトが伝わるような仕事ができるといいなと思っています。たぶんそのほうが問題意識も整理されると思います。あと、(社会の)役に立つ仕事をやっていくということなのかなと思います。

つくば市のまちづくりも応援しているそうですが、具体的にどういうことをやってらっしゃるんですか。

いくつかの委員会に出ています。例えば、モビリティロボット特区に関する協議会に入って、規制緩和の応援をしています。最近は、つくば市以外でもモビリティロボットを走らせられるようになりました。他には、自転車のまちづくり、バスに関する公共交通活性化協議会。それと、環境都市推進委員会といって、環境モデル都市に応募して、環境モデル都市としてどういうことをやるかを決める委員会です。あとは都市計画マスタープランといって、10年後につくば市のここはこういう用途に使いましょうという話合いをする委員会に参加しました。最近は低炭素まちづくりのガイドラインを作る委員会に参加しています。

つくば市は変わってきましたか。

まあ変わってきました。例えば、「つくば3Eフォーラム」というのを筑波大が中心になって始めて、2030年につくば市のCO2排出量半減という目標を立てました。それは大きな影響を与えたかなと思います。職員に若い人が増えてきたこともあって、雰囲気が変わってきていると思います。

なるほど。最後に、今後どんな研究活動をしていきたいでしょうか。

やりたいことは大体やれていますし、ここでお話ししたことの他には特にありません。自分はやりたいようにやれているんですけど、次の若い世代の人たちもこの分野で同じようにやりたいことをできるように、意識して育成や引継ぎをやっていきたいですね。
来たれ若人、ですかね。

来たれ若人。わかりました。以上です。ありがとうございました。

ありがとうございました。

第5回スタッフインタビューは、松橋啓介室長に、持続可能な社会の在り方や多様な価値観の重要性について話していただきました。

第6回にも乞うご期待!

●過去のインタビューはこちら

(聞き手:杦本友里 社会環境システム研究センター)
(撮影:成田正司 企画部広報室)
インタビュー実施:2016年12月5日