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2016年11月4日

vol.4-2 亀山 康子 副センター長<後編>
COP22に向けて

インタビュー対象

引き続き亀山康子副センター長にお話を伺いました。後編ではCOP22や今後日本として必要なアクションなどについての話題です。

インタビュー内容<後編>

では、去年の12月にパリ協定が決まって、この1年間の世界の動きはどうみていますか。

期待した以上ですね。COP21のときから、早く発効させることが重要であることはどの国も分かっていました。大きな理由はアメリカの大統領選です。アメリカの大統領選でもしトランプ氏が勝った場合、アメリカは入らなくなってしまいます。トランプ氏は、温暖化はうそで、パリ協定は絶対に参加しないと公言していますからね。ただ、パリ協定の中にはちゃんと規定があって、1回発効さえすれば、その発効した状態ですでに批准した国は、そのあと抜けたくなっても3年間は抜けられないとする一文が入っています。それもアメリカのために入ってるんですけどね。とにかく今年中に発効さえすれば、来年以降、アメリカの大統領が誰になろうとも、少なくとも3年間は抜けられません。それがあって急いでいました。

 だけど、年内の発効に見通しが付くとは、それほど楽観的には思われていませんでした。ヨーロッパも、ヨーロッパとして40%を2030年までに減らしますとは言っていたけども、EUの中の28の加盟国それぞれが何%負担するかっていう内部の合意ができていませんでした。本来であれば内部の合意ができたあとで批准しようと思っていたのですが、やはり年内に実現しなければいけないと慌ててやることになりました。ヨーロッパが慌てることになった理由は、9月の初めにアメリカと中国が批准してしまったからです。発効したときにヨーロッパが入ってないのはまずいと思って慌てだして、そうするとあっという間に雪崩式に(各国が批准したことで)発効要件を満たす状態になり、結果としてCOP22に間に合うことになってしまいました。

なるほど。アメリカと中国の動きが大きかったんですね。中国もすんなり決めたんですか?

そうなんですよ。中国は、この30年間の歴史の中で温暖化には一番消極的な国でした。それが、この4~5年くらい前から急に態度を変えました。態度を変える理由はいくつかありますが、一つは今国内の大気汚染がひどくて、それを解決しようと思ったら結局いろんなエネルギーの効率を上げてかないといけません。それはすなわち温暖化対策と同じなんですよね。加えて、温暖化対策をやっているとアメリカから技術協力をしてもらえる。それはアメリカがオバマ政権だったからですが、中国はアメリカからかなり支援してもらっています。こうした理由で、中国がリーダーシップを取る国になってきています。

ちなみに日本では、批准が遅れていますね。

そうなんですよね。国会でほかに審議しなきゃいけない議題が多そうで、COP22には間に合いませんでした。

日本として今後必要なアクションは何ですか?

いくつかあって、1つは、各国が提出している2030年目標の見直しです。今はまだ仮の案の段階です。その案を確定するための参考となる活動が2018年にあって、各国の2030年目標をもう一回合計して2度目標にどれぐらい近づいているのかをチェックするというものです。そうすると、実際は2度目標には全然足りませんね、という結論が出てくると思いますが、そうなったときに各国がもう少し頑張ろうという展開になるかどうか、国際的な動きが出てこないと、2度目標達成は危うくなります。

 もう1つは、2030年とか2040年に向けた中期的な目標以外に、もっと長いスパンの戦略を立ててくださいという規定がパリ協定にはあります。2050年目標といわれるものです。同じくパリ協定の規定で、今世紀末までには人間起源の排出量と、森林で吸収する量が等しくなり、実質的な排出量をゼロにしなければならないことになっています。日本としても2100年に向けて日本の排出量をゼロにしていくための戦略を立てないといけません。その長期戦略をできるだけ2020年までに公表することも決められていて、加えてこの前の伊勢志摩サミットでは、そのサミットの参加国である主要先進国は2020年まで待たず、ちゃんとリーダーシップを取って早めに出そうという決定もありました。

 日本ではその長期目標をどう考えるのかを政府内で議論しているところですね。

長期目標が重要なんですね。

2030年目標(2013年比で26%減)だけしかないと、そこまでにやることしか頭に思い浮かびませんよね。そうなると予算もそこに至るぎりぎりまでしか付かないし、本当はそのあとまでつながる対策を取らないといけないので、長期的なビジョンはすごく大切ですよね。

では、11月7日から開催されるCOP22の争点や課題はなんですか?

1年前に想像していたよりもだいぶ早く発効してしまいそうなので、本当は発効したあとで決めればいいと考えていたことを、早く決めなきゃいけなくなりましたね。その多くはすごく手続き的なことやテクニカルなことなので、一般的な報道には乗りにくい話が多いと思います。それと、ここまで話したことは、あくまで排出削減という緩和策のほうの話でしたが、他方では適応策がより重要になっていますよね。既にいろいろなところで影響が起きてしまっているので、それらに人類としてどのように適応していくのか、あるいはもう適応もしきれなくなって被害が出てしまっているエリアをどう支援していくのか。これはロス&ダメージ(損失と被害)という議題で話し合われていて、排出削減策とは独立した話として、特に途上国のほうが話を進めたがっているテーマです。

 今回、モロッコのマラケシュで開催されますが、途上国側でホストするCOPなので、途上国や、特にアフリカの人たちにとって強い関心のある議題を取り上げたがるでしょう。そういった話題がクローズアップされると思います。

適応策については、途上国側が早くどうにかしたいということですね。

本当は日本も考えないといけないですよね。適応は途上国の問題と意識されていたら、それ自体が問題。肱岡さんたちも言っていますね。例えば、日本で去年、鬼怒川の氾濫がありましたけど、堤防を建てれば良いと考えているのではすごく危険です。今後あれだけの集中豪雨はどんどん増えていくので、より長期的な展望まで見た上で対策を考えないといけません。もうその近くには住まないようにするとか。もちろんそこに土地を持っていらっしゃる方に対してはそれなりの移住の支援などを政府がする必要があります。そういった点まで含めて、これから私たちはどこに住むのかとか、本当は適応の観点から日本国内でも話を進めていく必要がありますね。

最後に今後の研究について抱負があれば教えてください。

日本人にとっては、どうしたら2度目標に達成するかとかいう話よりも、「アメリカではこんなことやっています」とか、「ヨーロッパではすでにここまで進んでいて、やっていないのは日本人だけですよ」、と言われると急に焦り始めるところがあります。逆に、日本ですごく進んでいる先駆的な取り組みもあるのにそれが海外に知られていなかったりします。今まで私はずっとそういう国際的な大きな話を中心に研究をしてきましたが、だんだんミクロな方向に関心が向いていて、それぞれの国で、ある政策が受け入れられやすい、あるいは受け入れられにくいときに、どういう理由で「受け入れられやすさ」が発生しているのかに興味があります。温暖化以外の社会問題とか経済問題とか、ほかの副次的な益を伴う政策は受け入れられやすいです。それぞれの国で、今、この状態になっている国だったらこんな政策が受け入れられやすいですよ、というような話の仕方ができるといいと思います。

これからも頑張ってください。ありがとうございました。

第4回スタッフインタビューは、亀山康子副センター長にパリ協定やCOP22について伺いました。

(聞き手:杦本友里(社会環境システム研究センター)、2016年10月3日インタビュー実施)
(撮影:成田正司(企画部広報室))

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