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2016年5月13日

vol.2-2 金森 有子 主任研究員<後編>
身近なものから見えること、ライフスタイルの将来

インタビュー対象

昨年9月に環境科学会奨励賞を受賞された、金森有子主任研究員にインタビューを行いました。

後編はライフスタイルの将来について、お届けしたいと思います。

インタビュー内容<後編>

(杦本)今ライフスタイルって、世代によって全然違うと思うのですけど、今後どういうものが主流になっていくでしょうか?

(金森)主流が無くなると思う。

主流が無くなる???

皆こうしているよねとか、もっと古く言うと、今そういう時代では無くなってきているけど、「一億総中流時代」とか、そういう言葉があったじゃない。あれはある歳になったら結婚して、4人家族で子供は2人、皆会社務めして、子供は高校とか大学に行く。どの家にも、テレビ、冷蔵庫といった家電はそろっている。すごく貧乏もいない、飛び抜けた金持ちもいない、「一億総中流」というスタイルが日本人っぽさだったと言われてきた。でもこれからはもう総中流が無くなって、まあまあの生活ができる人とまあまあの生活も苦しい人に分かれちゃうと言われている。 夫婦だけの家庭、子供が1人の家庭、2人の家庭、といったように色々な世帯が混ざってくるはず。子供っていっても、学生のような子供ではなくて、例えば80歳の夫婦と50歳の子供なんていう家庭も増えるかも。こういう様々な形の家族形態が増えれば生活も色々異なってくると思う。でも一方で本当にそうなるのかなと思う自分もいる。私は日本の文化的なものとか、歴史的なものからくる共通した日本人らしさみたいのがあるような気がしていて。例えば、あまり(主流から)外れるのは怖いというか、怖がる様な民族の様な気がするのだけどね。社会学者は皆バラけていくと言っていて、納得する部分もあるけど、私は日本人は外れるのが好きじゃない人達じゃないかなと思っているところもあるので、今後どうなっていくのかなと思ってる。

今後環境負荷の低いライフスタイルの人が増えるという動きはないですかね?

環境負荷の低いライフスタイルにならないか、なるか…なったら良いなと思うけど、多分あまり簡単じゃないと思う。宣伝するとか、色んなキャンペーンするとかだけだと限界があると思っている。理由は皆既にできることはやっていると思っている気がするから。「もう分別をしているけど?」、「エアコンの温度1度上げたけど・下げたけど?」と、思っている人は結構多いじゃないかと思う。でもそれがどれほどの効果があったかというのは皆よくわかってない。やれと言われているし、それが良い事のように言われているから、やっているのだと思う。身の回りにある環境への配慮行動を全くしていない人の方が少ない。
省エネに関して言えば、現状と比べてから明らかな効果が表れるかは、別のステップだよね。
皆していると思っているだけに、さらにさせるのは大変だと思う。楽な事は多分既にしていると思うな。

ライフスタイルに関しては今後どうなっていくのでしょうか?

どうだろう?研究的にはすごく難しい。例えば、統計で出て来る数字を見た時に統計で出てきた数字を表現できる理論があったり、過去の状況を再現出来る様なモデルを作ったりする訳じゃない。学問の世界において過去に示された理論や考えにはまらなくなって来ているからすごく難しい。それが一番、モデルを使って考える上では難しい。

はまらなくなって来ているとは具体的にどういう例がありますか?

例えば家で何かを買うのにお金をかけますか?というのを考えた時にめちゃくちゃ貧乏だったら、まず生きる為に食を得る事、つまり食べ物を得る事と、住まいを確保する“箱”と、あと洋服。衣食住、まさにこれが最低限。そこからおしゃれな物を着たいとか、食べ物も貧しかったけどもう少し色んな物を食べたいとかなっていく。さらにそこから発展していくと、もっと便利さや快適な生活をしたいよねってなったはず。例えば、テレビを見たいとか、冷蔵庫を持ちたいとか。日本はとっくにその段階を超えているから、多くの家庭がテレビ、冷蔵庫を持っているし、他にもいろいろな機器を持っている。もちろんまだまだもっと買いたいと思う人がいるかもしれないけど、でも実際のところ大分行き渡っているじゃない。そこまではモデルで再現出来る。過去にどこの国でも発展の過程で見られた現象だから。具体的に言えば消費支出の中で食費の割合が減って来て、他の割合が増えてきた。日本はもっと発展しているから、さらにどこにお金を使おうかという段階になりつつある。ここから先が訳が分からなくなって、モデルで再現しづらい。食事をもっと高級にする人もいる。めちゃくちゃ食に関心があって、材料をめちゃくめちゃ高い野菜を買うとか、外食をめちゃくちゃする人がいる。中には洋服に興味があって、めちゃくちゃ高いブランドの服を持つことにお金をかける人もいる。ひたすら高性能な機器の購入に興味がいく人もいる。生きるためとか快適にするためを超えると、そこからは個人の嗜好が出ちゃうんだよね。皆が目指すべき方向は無くなってしまって、今までよくいわれてきた理論がデータでは見づらくなってしまった。すると計算できない、パラメーターが決まらないということが起きる。それがすごく難しい。

そこはどう立ち向かうのですか?

まさにどうしようかと思っているところ。すごく曖昧な回答だけど、どうしようか、本当に思っている。

今後の研究のチャレンジとしてはどうですか?

元々廃棄物、家庭ごみからスタートして、エネルギーとか、水とか一通り家庭の活動による環境負荷はみてきた。日本もアジア、少しだけ世界についても解析してみた。どれも、すごく難しい。難しさのタイプが違う。海外であれば、例えば私自身が日本以外の文化、慣習を理解していないから、データの解釈も不十分だろうという難しさもあるし、そもそもデータや文章を読もうにも、英語以外は読むのも一苦労、読めないものもある。そもそもデータがないこともある。ただ、やはり途上国はこれまでデータがなかったこともあり、まだまだ色々な解析・分析ができると思う。どのような発展をしていくのか、そこに住む人はどんな生活をするのか、というのはすごく面白い。日本に関してはもう少し様子を見てみたいな、というのが本音。例えばあと10年とか。日本の人口が減り出した。収入もそんなに伸びなくなった。家族の中で子供が減って来た。こういった今までと違う部分が「変化」だけれど、もう少し経つとそれが落ち着いて、当たり前になる。色々な変化が落ち着けば、その状況に人々が慣れてくる。10年とか経って、そんなに給料って増えないんだよ、みたいな生活に、人々が慣れてくれば、「日本人らしいライフスタイル」が変わるかもしれない。 今まで当り前だったローンはみんな組まなくなるかもしれないし、組み方をすごく変えるかもしれないし。だって、組んだらやっていけない可能性があるから。そういうのが後10年位すると、今子供だった人が社会人とかになり出して、そういう生活に慣れた人達が沢山溢れ出すかも知れない。 そうなって来ると何か新しいスタイルというのが出来ると、また、何かの理論とか、何かの式で説明できる可能性はあるよね。今までとは違うかもしれないし、同じかもしれないけど。

ありがとうございました。 最後に、読者の方々へのメッセージがあればお願いします。

仕事として環境問題を考えだしてもうすぐ8年半が経ちました。研究を通じ色々な経験をして分かったことは、環境に関心が全くない人はほとんどいないということ。ごみを分別するとか当たり前のように認知されていることも環境への関心の現れだと思う。「ごみの分別は、環境への関心ではなく周りの目を気にしているだけ」、と考えるかもしれない。でも環境の問題は、「自分が楽をしたい、得をしたいから、汚いもの、汚いことを周りのことを考えずにまき散らかす」ことで起きていることが多くあるのではないか。周りの目をお隣さんだけでなく、地域、国、地球全体に広げてみて欲しい。周りの生活を大切に思った行動をすればもっと多くの問題が解決するはず。人のためを思って行動できるのが日本人のいい所だと思う。この精神で多くの環境問題が改善、解決の方向に進むことを信じて、私はこれからも研究者の立場から環境問題に係り多くの人に分かりやすい環境問題の情報を提供していきたいと思っています。読者の皆さんには是非皆さんの生活と環境問題との係わりについて考えみて欲しいです。

第2回インタビューは、金森有子主任研究員お相手に、ライフスタイルについての話題でお送りしました。
(聞き手:杦本友里(社会環境システム研究センター)、2015年9月28日インタビュー実施)
(撮影:成田正司(企画部広報室))