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2016年3月3日

第12回アジア・太平洋エコビジネスフォーラム
参加報告

2016年2月18日 とどろきアリーナ サブアリーナ研修室

1.イントロダクション

2016年2月18日、第12回アジア太平洋エコビジネスフォーラムが主催:川崎市、共催:国際連合環境計画(UNEP)、国立環境研究所(NIES)で開催されました。本フォーラムの目的は、環境と産業が調和した持続可能な都市モデル形成のための先進的な環境技術・戦略の情報交換にあります。環境技術のビジネスマッチングを目的とした川崎国際環境技術展2016と同時開催されました。これらの企画は様々なステークホルダー間のコミュニケーションを深め、有用な成果をもたらしました。
NIESは、本フォーラムの中で「川崎環境都市モデルを東南アジアに展開する産官学連携にむけて—産業と都市が共生する川崎の経験と知識をアジアのイノベーションに—」と題するセッションを主催しました。中国・瀋陽市、インドネシア・バンドン市、マレーシア・ペナン市などからの海外24名を含む60名の参加者があり、川崎市立地企業、国内外自治体、研究機関、国際NGO間でパネルディスカッションを実施した。また、福田紀彦川崎市長による挨拶もありました。

写真1:フォーラム関係者の集合写真

2.パネルディスカッション

登壇者の発表

国立環境研究所社会環境システム研究センター藤井実主任研究員によるコーディネートのもと、産官学の各分野から5名の登壇者が発表、議論に参加しました。

  • 藤田 壮 氏
    国立環境研究所 社会環境システム研究センター センター長
  • ウチョク・W・R・シアジアン 氏
    バンドン工科大学 エネルギー政策研究所 副所長
  • 有山 俊朗 氏
    富士通株式会社 テクニカルコンピューティングソリューション事業本部
    TCフロンティアセンター シニアマネージャー 
  • 林 考昌 氏
    一般社団法人資源循環ネットワーク 代表理事 
  • レミ・チャンドラン 氏
    オランダ・トゥウェンテ大学 地理情報科学・地球観測学部 研究員
    国立環境研究所 社会環境システム研究センター 准特別研究員 

藤井主任研究員は、コーディネーターとしてセッションの背景と趣旨を以下の通り、説明しました。
「アジアにおける低炭素の推進や環境汚染の克服と、経済成長の両立に向けた取り組みが求められている。川崎市では、エコタウン事業などを通じ地域振興と先進的な環境調和型のまちづくりの推進を両立している。このような経験を活用してアジアに展開するために、川崎市はエコタウンワークショップ、川崎グリーンイノベーション事業などを実施してきた。この動きを加速させるためには、技術、政策、市民の協力など、多面的な取り組みが必要になる。本セッションでは、モニタリングによる状況把握、診断、計画作成、実行、効果検証などのプロセスを通して、持続可能な環境産業都市の構築を進める産学官連携の取り組みについて議論する。」

   
写真2(左)藤井主任研究員、写真3(右)パネリストの5名

藤田 壮 氏
「川崎エコタウンからのエコ産業ネットワークへの挑戦」

写真4:藤田氏の発表の様子

藤田氏は、廃棄物/副産物、エネルギー、水の循環利用が実現しているエコタウンを紹介し、技術と法制度、補助制度、社会システムの組み合わせが重要な鍵になると説明しました。そして、NIESは、学術的な観点から指標と方法論を利用して、このような循環システムがどの程度温室効果ガスを減らし、どのような利点があるのかを明らかにしており、分析結果からこれまでの物質循環に加えて、エネルギーの地域利用高度化を目指すことが望ましいと提言してきました。川崎は、今後ビッグデータと情報共有のためのICTを活用して、スマートなエコシティを実現する必要があり、そのために、NIESは、アジア工科大学、IGES、東京大学らと連携しアジアでのスマートシステムの開発に取り組み始めており、スマートなエコシティの設計と評価のためのハブとなることを目指していると報告しました。

ウチョク・W・R・シアジアン 氏 
「インドネシアの環境都市の構築における産、官、学の役割」

写真5:ウチョク氏の発表の様子

ウチョク氏は、エコシティの定義と評価指標を紹介し、指標の中に健康、経済成長、資源管理、環境負荷低減、廃棄物ゼロシステム、文化的価値、教育などの観点を取り入れることを提言しました。エコシティに関する近年のトレンドは、特にエネルギーセクターの温室効果ガス削減が焦点になっており、MRV(測定、報告および検証)事業などを活用してエネルギー使用量を減らすことを目指しています。バンドン工科大学とNIESは電力消費のモニタリングおよび低炭素都市のシミュレーションに関して強い連携をとっており、この挑戦の成功は、異なるモデルをどのように地域に適用させるかにかかっていると報告しました。

有山 俊朗 氏
「アジアにおける環境都市の推進に向けて、国際IT企業の果たす役割」

写真6:有山氏の発表の様子

有山氏は、ICTを用いた空間的、時間的なデータを集める技術を紹介しました。収集したデータは、エコシティづくりの設計と研究のための重要な基礎データとなります。実践例として、サウジアラビアでの汚染物質のモニタリングシステムを概説し、現地の産業団地統括機関であるMODONでのデータ収集から解決策の提案につながるプロセスを紹介しました。現在、NIESと連携しインドネシアにおいてICTを活用した電力モニタリングシステムを開発しており、すでに住宅、オフィス、商業施設などに機器を設置し、産業団地への拡張を検討しています。今後は都市の低炭素化に向けて、エネルギー消費の需要側の管理を支援する仕組みを構築していくことを目指すと報告しました。

林 考昌 氏
「川崎発グリーンイノベーション」

写真7:林氏の発表の様子

林氏は、リサイクルビジネスを成功させるには、産業、学術機関、地域の充実した社会システムの相互連携が重要だという認識を示しました。日本および海外のエコ産業団地の事例の分析から、川崎市は、コーディネーターの存在、エコビジネスの集積、公共セクターからの支援の面で他と比較して強みを持っていると説明しました。さらに、川崎市はグリーンイノベーション事業を通じて新たな環境技術のイノベーションと国際貢献を進めています。事例として、昭和電工株式会社による廃プラスチックからの水素製造システムを紹介し、その成功要因である産官学の連携とその役割を分析し、水素利用の都市への展開、国際貢献の可能性を論じました。

レミ・チャンドラン氏
「低炭素技術の実装に向けての産官学連携の可能性と制約」

写真8:チャンドラン氏の発表の様子

チャンドラン氏は、政策の観点から技術移転の難しさを事例に基づき報告しました。例えば、インドネシア・ジョクジャカルタ市の埋立地の建設では、立派なものが建ったが運営がうまくいきませんでした。インドネシア・ボゴール市の交通管理計画では、科学的・技術的なイノベーションを取り入れない政策のためにとん挫しました。そのため、技術移転にともなう間接的な要因が重要であり、政策担当者、科学者、コンサルタント、産業界の技術者、政府・非政府組織の研究者からなるエキスパートネットワークの形成が鍵となると報告しました。

討議内容

登壇者と会場参加者は、エコシティづくりにおける産官学連携の促進方法について活発に議論しました。そして、①異なるステークホルダー間での課題の特定、②課題を認識しながら関係者間を橋渡しするプラットフォームの構築、③それぞれの立ち位置を明確にしつつ、互いから真摯に学ぶ姿勢と雰囲気づくりの中で解決策を見つけるプロセス、の重要性を共有しました。 会場からの質疑やコーディネーターからの質問に対し、グリーン・技術・社会イノベーションの重要性、長期的な展望に立った投資戦略とそれを支える教育基盤、産官学の革新的な連携枠組み、技術的なファクトの見える化とシミュレーションによる意思決定支援の観点から議論が展開しました。最後に、コーディネーター藤井氏が、セッションでの討議をもとに、産官学間の連携の鍵を整理し、川崎の技術の海外移転にむけた技術・社会イノベーションの重要性を提起し、閉会しました。

   
写真9(左):会場の質問者、写真10(中央):質問に答えるチャンドラン氏、写真11(右):討議に参加するパネリスト
  
写真12(左)、写真13(中央)、写真14(右):討議に参加するパネリスト

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