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《研究課題コ−ド》9205AC264
《研究課題名(日本語)》地球環境モニタリング
《研究課題名(英語)》Global Environmental Monitoring
《予算区分》AC 地球センター
《開始/終了年度》1992〜2005
《研究目的・目標》
近年顕在化してきた様々な地球環境問題に対し、実効ある取り組みを行うためには、地球環境の観測・監視(モニタリング)と調査研究を強化し、人類の諸活動が地球環境に及ぼす影響の大きさやそのメカニズムを科学的に解明することが不可欠である。地球環境研究や行政施策に必要となる基礎的なデータを得るために、国内外関係機関と連携しつつ、地球規模での精緻で体系的かつ継続的な地球環境モニタリング(地球環境変動因子や地球環境変動による影響等の継続的監視)を行い、効果的な対策を講ずる上で必要な知見を得る。本モニタリングは、1)成層圏オゾンに係るモニタリング、2)対流圏の温室効果ガスに係るモニタリング、3)陸域生態系・海洋環境に係るモニタリング、4)水に関するモニタリング(特にGEMS/Water支援事業)の4つの分野に分けて、各分野ごとに以下に示す目的を持って観測を推進している。1)成層圏オゾンに係るモニタリング南極のオゾンホールの発生は良く知られた事実であるが、北半球中緯度でのオゾン層の変化は、人間活動に及ぼす影響がもっとも大きい事が懸念されるゆえ、ここではつくばや北海道域陸別に観測ポイントを設け観測を続ける。特に成層圏のオゾン層を高度別に観測し、どの高度帯での変化量が大きいか、どのような大気大循環があるかなど、大気科学的見地からもモニタリングを行う。同時に、オゾン層の破壊によって起こりうる紫外線の増加を検出すべく、各地に紫外線のモニタリング地点を展開し、B領域の紫外線量のモニタリングを行う。2)対流圏の温室効果ガスに係るモニタリング 地球の温暖化に係わる温室効果ガスの長期観測を行うべく、日本の南北に配置した2ヶ所のモニタリングステーション(沖縄県波照間島、北海道根室市落石岬)において、定常的な監視活動を行う。二酸化炭素、メタン、一酸化ニ窒素、フロン類、オゾンなどに加えエアロゾルや窒素酸化物、一酸化炭素などの汚染物質のモニタリングも行い、長距離輸送の観点からの解析などを行う。さらに、大きな規模での観測のために、シベリアにおける航空機を用いた3地点での鉛直濃度観測や太平洋上での定期貨物船を用いた大気の緯度別広域観測などを行う。これらの活動によって、地球規模的な観点からの、温室効果ガスの挙動が明らかになる事が期待される。3)陸域生態系、海洋環境に係るモニタリング森林生態系の観測システムの開発・評価を行う観測拠点を北海道苫小牧国有林のカラマツ林に整備し、森林-大気間の二酸化炭素、水蒸気などのガスフラックスをはじめとする森林生態系における炭素循環過程に係わる総合観測研究を実施する。また、森林の育林過程による炭素循環機能の変化を解明するために、北海道大学森林圏ステーション天塩研究林において、カラマツ造林地での炭素循環過程に係わる森林の諸機能を観測する。また、二酸化炭素吸収源としての森林機能等を評価するために、様々なリモートセンシング手法を用いて、森林植生の構造、バイオマス量、生理生態学的機能の評価手法を開発する。4)水環境に係るモニタリング陸水の汚染などの情報を収集・統合化するUNEPのプロジェクト(GEMS/Water)に、日本の中核拠点としてプロジェクトを支援・参画する。特に地方公共団体などの河川・湖沼における観測点(21地点)のデータの取りまとめ、およびGEMS本部との連絡・調整を行う。これに伴う分析精度管理のために作成した標準試料を内外関係機関へ配布し、各観測機関の分析データについて評価する。ベースラインモニタリングとして摩周湖を選定し、汚染物質や生物調査を長期的に行う。汚染度の比較的高い湖として霞ヶ浦を選定し、長期的な汚染の変遷を調べる。
《全体計画》
(1)つくばにおける成層圏オゾンモニタリング所内に設置したオゾンレーザーレーダー及びミリ波放射計により、高度15~70Kmの成層圏から中間圏に渡るオゾンの鉛直分布を観測し、成層圏オゾンの変動を監視する。NDSC(成層圏変動探査ネットワーク)と連携し、データの公開および我が国のコアセンターとして活動する。(2)北域成層圏総合モニタリング 北極極渦の中緯度域へのオゾン層破壊への影響を明らかにするために、名古屋大学太陽地球環境研究所と共同で北海道陸別町の町立天体観測施設を利用して、ミリ波放射計によるオゾン鉛直分布の観測、精密紫外分光計による地上紫外線強度・オゾン全量の観測、オゾン層破壊関連物質の観測(名大太陽研担当)を行う。(3)有害紫外線モニタリングネットワーク有害紫外線(B領域紫外線)の増加による生物影響の基礎データを整備するために、東京霞ヶ関を含めた6ケ所の地球環境研究センターの観測拠点を中核拠点として、広く研究機関・大学などの参画を得て、全国にまたがる帯域型B領域紫外線計を用いた有害紫外線観測網を構築し、観測データの共有・データベース化を進める。(4)地上ステーション(波照間・落石岬)モニタリングわが国の南北端に位置する沖縄県波照間島及び北海道落石岬に設置した無人観測局で、温室効果ガスのベースライン濃度を長期連続観測する。両観測局では、二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素などの温室効果ガスのほか、オゾン・窒素酸化物・硫黄酸化物・粒子状物質・ラドン・気象因子なども観測する。なお、落石岬局では、東アジア酸性雨モニタリングネットワークのルーラルサイトとしての酸性雨モニタリングに協力する。(5)定期船舶を利用した太平洋温室効果ガスモニタリング海洋の炭素循環機能を把握するために、民間船舶の協力を得て、太平洋海域において洋上大気の温室効果ガス濃度、並びに大気-海洋間の二酸化炭素交換収支量などを観測する。観測海域は太平洋の二酸化炭素収支観測の国際的分担として、西太平洋の南北方向(日~豪航路)と北太平洋の東西方向(日~米西海岸)で観測する。(6)シベリア上空における温室効果ガスに係る航空機モニタリング温室効果ガスの全球的挙動において、森林や湿地・凍土地帯が続くロシア・シベリア地方の役割を評価・解明するために、民間航空機を借り上げて、シベリアの3地点(スルグート、ノボシビルスク、ヤクーツク)の上空で、温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素)濃度の鉛直分布を時系列的に観測する。(7)北方林の温室効果ガスフラックスモニタリング森林生態系のガスフラックス観測システムの開発・評価を行う観測拠点を北海道苫小牧国有林のカラマツ林に整備し、森林-大気間のガスフラックスをはじめとする森林生態系における炭素循環過程に係わる総合観測研究を実施する。また、森林の育林過程による炭素循環機能の変化を解明するために、北海道大学森林圏ステーション天塩研究林において、カラマツ造林地での炭素循環過程に係わる森林の諸機能を観測する。また、アジアの二酸化炭素フラックス観測のネットワーク(Asia Flux)のコアオフィスになり、観測手法の検証、データセンターとしての活動を展開する。(8)リモートセンシングを用いた森林の構造と機能の評価に関するモニタリング地球温暖化防止における二酸化炭素吸収源としての森林機能等を評価するために、様々なリモートセンシング手法を用いて、森林植生の構造、バイオマス量、生理生態学的機能の評価手法を開発する。特に、光合成量が測定できるリモートセンシングのモニタリングを苫小牧の演習林にて行う。(9)GEMS/Water支援事業・ナショナルセンター:わが国のGEMS/Water事務局として、地方公共団体などの河川・湖沼における観測点(21地点)のデータの取りまとめ、およびGEMS本部との連絡・調整を行う。・リファレンスラボラトリー:GEMS/Waterにおける分析精度管理のために、作成した標準試料を内外関係機関へ配布し、各観測機関の分析データについて評価する。・摩周湖ベースラインモニタリング:人為的汚染の影響の少ない北海道摩周湖を陸水のベースライン観測点として位置づけ、定期観測を年1回実施し、水質調査を行う。・霞ヶ浦トレンドステーションモニタリング:旧来から研究所の観測研究の一環として実施してきた霞ヶ浦水質調査を引継ぎ、トレンドステーションとして、霞ヶ浦10地点で月1回採水・調査を行い、水質調査を行う。
《前年度の成果概要》
(1)つくばにおける成層圏オゾンモニタリングオゾンレーザーレーダー及びミリ波放射計により、高度15~70kmの成層圏から中間圏に渡る成層圏全域にまたがるオゾンの鉛直分布を観測できる体制を整備し観測を継続した。つくば上空におけるオゾン濃度のトレンドとしての際立った減少は見られなかった。季節変化に関しては、高度毎に異なった周期の季節変化が見られ、そのメカニズムに関しての検討を進めた。(2)北域成層圏総合モニタリング 北極極渦の中緯度域へのオゾン層破壊への影響を明らかにするために、名古屋大学太陽地球環境研究所と共同で北海道陸別町の町立天体観測施設を利用して、両機関がそれぞれの得意とする観測システムを用いて総合観測を行った。これまで、つくば上空では見られなかった年のスケールでのオゾン濃度変動が観測されたが、その原因はまだあきらかではない。(3)有害紫外線モニタリングネットワーク有害紫外線(B領域紫外線)の増加による生物影響の基礎データを整備するために、広く研究機関・大学などのボランティア参画を得て、全国に観測ネットワークを構築し、平成13年度からネットワークとしての活動を開始した。(4)地上ステーション(波照間・落石岬)モニタリング波照間、落石において温室効果ガスのベースライン濃度を長期連続観測し、それらのデータは世界的な温室効果ガスのデータセンターに提出した。これまでの、濃度変動は、二酸化炭素においては観測以来、10ppm以上増加し両地点で375ppmに達した。また、年々変動がエルニーニョの年に大きく出る事がわかった。メタンの増加はここ数年でとどまっており、発生量が増加していないことが推察された。N2Oや代替フロンに関しては増加傾向が続いており警戒が必要である。(5)定期船舶を利用した太平洋温室効果ガスモニタリング海洋の二酸化炭素吸収機能を把握するために、日本-カナダ、日本-オーストラリア間を運行する定期貨物船の協力を得て、太平洋海域において洋上大気の温室効果ガス濃度、並びに大気-海洋間の二酸化炭素交換収支量などを観測した。14年度は特に定期貨物船の路線変更に伴い、代わりの船舶を選定し機器の乗せ替えなどを行った。二酸化炭素の緯度分布が観測され、北半球中緯度での二酸化炭素の高濃度や、メタン、亜酸化窒素の緯度分布が測定された。北太平洋では、二酸化炭素の海洋での吸収の面的、季節的変化などが観測された。(6)シベリア上空における温室効果ガスに係る航空機モニタリングシベリアの3地点の上空で観測した温室効果ガス濃度の鉛直分布の時系列データが観測され、シベリアでの森林吸収の影響などが、エルニーニョによる温度異常に関連し見られることがわかった。また、湿地からの夏季のメタンの発生冬季の人為起源のメタン発生の影響などが観察された。(7)北方林の温室効果ガスフラックスモニタリング北海道苫小牧国有林のカラマツ林に整備し、森林-大気間のガスフラックスをはじめとする森林生態系における炭素循環過程に係わる総合観測研究を平成12年夏から開始した。この苫小牧フラックス観測が引き金となって、アジア地域のフラックス観測ネットワーク、AsiaFluxが発足し、当観測地がネットワークの基幹拠点と位置づけられている。また、森林の生育過程に伴う炭素循環機能の推移を長期観測するために、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター、北海道電力株式会社と当センターの共同研究として、天塩北海道天塩郡幌延町に所在する北海道大学天塩研究林に観測林を設定し、観測を開始した。(8)リモートセンシングを用いた森林の構造と機能の評価に関するモニタリング陸域植生の構造と機能を評価するために、苫小牧フラックスリサーチサイトにて、レーザープロファイラーによる森林構造解析とマルチスペクトルカメラによる森林の生理生態学的機能の評価に着手した。(9)GEMS/Water支援事業GEMS/Waterプロジェクトに、東アジア・太平洋域の中核拠点としてプロジェクトを支援・参画するとともに、当研究所の旧来からの観測湖沼であった北海道摩周湖と茨城県霞ヶ浦での観測を継続している。約25年にわたる霞ヶ浦調査の膨大なデータをデータベース化し、湖沼観測研究の貴重な資料として国内外に情報発信した。
《今年度の研究概要》
(1)つくばにおける成層圏オゾンモニタリングミリ波放射計の観測範囲の広帯域化(下部成層圏までの観測が可能となる)を進めるとともに、NDSCのわが国のコアセンターとしての機能を強化する。(2)北域成層圏総合モニタリング 北海道陸別町で成層圏オゾン・有害紫外線等の観測を継続する。(3)有害紫外線モニタリングネットワーク有害紫外線(UV-B)観測網での観測の定常化を目指し、情報発信体制を整備する。(4)地上ステーション(波照間・落石岬)モニタリング波照間局及び落石岬局での温室効果ガスのベースライン濃度の長期連続観測を継続する。また、最新の研究情勢に対応した観測項目を強化するとともに、観測設備類の高度化、ネットワークの強化による管理体制の向上、データ解析・公表の体制の確立を進める。(5)定期船舶を利用した太平洋温室効果ガスモニタリング太平洋の2海域(日-米、日-豪)において温室効果ガス等の観測を継続する。なお、日~豪間を航行する観測協力船(トランスワールド;(株)フジトランス)を、新たな観測協力船を選定し、観測が開始する。また、日~米間を航行する自動車運搬船(ピクシス号、トヨフジ海運(株))に加え、さらに高緯度に航海する観測船の選定などを行う。(6)シベリア上空における温室効果ガスに係る航空機モニタリングシベリアの3地点で高度別(500~7000m)に温室効果ガス濃度の時系列的な観測を継続する。また、温室効果ガスの連続観測システムの開発・データ解析体制の整備を進める。(7)北方林の温室効果ガスフラックスモニタリング森林生態系機能の総合的な観測研究の定常化を目指し、観測体制の拠点整備を進める。また、わが国をはじめとするアジア地域のフラックス観測ネットワーク(Asia Flux)の基幹拠点機能を担うべく、観測手法の検証・データセンター機能を持つコアオフィス機能を強化する。(8)衛星リモートセンシングを用いた森林の構造と機能の評価に関するモニタリング苫小牧フラックスリサーチサイトでのレーザープロファイラーとマルチスペクトルカメラによる森林の構造・バイオマス、生理生態学的機能の評価手法の実用化を目指す。(9)GEMS/Water支援事業わが国を含む東アジア・太平洋地域の中核拠点としてプロジェクトの支援・参画を継続する。また、霞ヶ浦・摩周湖を含むわが国のネットワーク観測拠点で得られたデータのデータベース化・解析を進める。
《課題代表者》藤沼康実
《担当者》○藤沼康実(地球環境研究センター),向井人史,中根英昭,松井一郎,杉本伸夫,小野雅司,遠嶋康徳,横内陽子,谷本浩志,野尻幸宏,町田敏暢,高橋善幸,犬飼孔,小熊宏之,田中敦,今井章雄,稲葉一穂,岩崎一弘,松重一夫,上野隆平,高村典子,冨岡典子,柴田康行,西川雅高,勝本正之
《キーワード(日本語)》
地球環境,モニタリング,成層圏,オゾン層破壊,オゾンレーザーレーダー,ミリ波放射計,有害紫外線,波照間島,落石岬,温室効果ガス,シベリア,フラックス,炭素循環,船舶,海洋環境,リモートセンシング,NOAA/AVHRR,地球環境モニタリング計画(GEMS)
《キーワード(英語)》
GLOBAL ENVIRONMENT, MONITORING, STRATOSPHERE, OZONE DEPLETION, OZONE LASER RADAR, MILLIMETER WAVE RADIOMETER, UV-B, HATERUMA ISLAND, CAPE OCHI-ISHI, GREENHOUSE GASES, SIBERIA, FLUX, CARBON CYCLE, VOLUNTEER SHIP, MARINE ENVIRONMENT, REMOTE SENSING, NOAA/AVHRR, GLOBAL ENVIRONMENTAL MONITORING SYSTEM(GEMS)