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《研究課題コ−ド》1518CD002
《研究課題名(日本語)》次世代型生態系観測技術の確立と湖沼生態系への適用
《研究課題名(英語)》Establishment and application to lake ecosystem of next generation monitoring system
《予算区分》CD 文科-科研費
《研究経費》840万円
《開始/終了年度》2015〜2018
《研究概要》
本研究は、野外生態系調査から得られる生態系動態に関する情報を飛躍的に増加させるために、最新の生物観測技術(次世代DNAシーケンス技術・安定同位体比分析技術)とデータ解析技術(食物網構造推定のためのベイズ統計解析・因果関係推定解析)を統合的に活用することで「次世代型生態系観測技術」を確立することを目的とする。特に、次世代DNAシーケンス技術を活用し、野外生態系における生物分類やそれらの分布・動態情報の取得を大幅に簡便化することで、高精度かつ高解像度の生態系動態に関する情報を継続的に取得することを可能にする。さらに、この次世代型生態系観測技術を活用し、実際の湖沼生態系におけるモニタリングの高度化や生態系管理のための新規性の高い指標の開発を行う。
《研究の性格》
主たるもの:技術開発・評価
従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
《全体計画》
(サブテーマ1)遺伝子解析技術(サンガー法ならびにNGS解析)を活用し、霞ヶ浦に生息する微小生物から大型魚類にいたる生物群の多様性を網羅的・経時的に把握する。こうした情報を活用し、環境DNAによる新しい生物多様性モニタリング手法の実施可能性を検討する。
(サブテーマ2)霞ヶ浦生態系の主要な湖沼生物を対象に、安定同位体分析や胃内容物のDNAシーケンシングなどの手法を活用して、湖沼生態系の主要な生物間の相互作用を明らかにする。
(サブテーマ3)霞ヶ浦長期モニタリングデータならびに、サブテーマ1と2の結果を加え、データ解析技術(食物網構造推定のためのベイズ統計解析・因果関係推定解析)を統合的に活用することにより、実際の湖沼生態系におけるモニタリングの高度化や生態系管理のための新規性の高い指標の開発を行う。
《前年度の成果概要》
1.湖沼の主要な生物間相互作用である「植物プランクトン−動物プランクトン−プランクトン食魚」の関係を、魚類の胃内容物のDNAシーケンシングから詳細に明らかにするため、本年度は、夏季に3回、霞ヶ浦の高浜入りにおいて、プランクトン類、ベントスと魚類を採集した。
2.霞ヶ浦流域から魚類を採集し、ミトコンドリアDNAのCOI領域および12S領域の塩基配列を決定した。COI領域について42種(157個体)、12S領域について42種(172個体)の配列情報を得た。また、霞ケ浦湖内で採集した動物プランクトン51タクサ、貧毛類11種、軟体動物1種、ユスリカを除く節足動物15種についてCOI塩基配列を取得し、データベース作成を進めた。
 一方、NGSを用いた湖水環境DNAからのCOI塩基配列検出について条件検討を行い、湖水をガラス繊維ろ紙(粒子保持能2.7m)でろ過することで動物プランクトンについては高い配列多様性を得られること、底生生物ユスリカや魚類の配列も得られることがわかった。しかし、魚類など大型生物の検出率は低く、魚類については目的遺伝子や使用プライマーの再検討が必要であることを確認した。
3.時系列因果関係解析の最新の手法であるCCM(Convergent Cross Mapping)を用いて、国立環境研究所の霞ヶ浦長期モニタリングデータの一部を試行的に解析した。長期モニタリングのデータペーパー「Photosynthesis and primary production in Lake Kasumigaura (Japan) monitored monthly since 1981」を投稿した。
《今年度の研究概要》
(サブテーマ1)昨年度に引き続き、霞ヶ浦の藻類、従属栄養プロチスタを対象に16Sおよび18S rRNA遺伝子アンプリコン解析により、種構成のトレンドを把握する。また、昨年度までに作成した霞ヶ浦産未同定藻類培養株のDNAバーコーディングを進める。DNAバーコーディングが終わった培養株については、形態による種同定との突き合わせを行い、これまでの形態によるモニタリングデータの検討をおこなう。動物プランクトン、ベントスおよび魚類ではCOIを補完する18S rRNAや12S rRNAなどの遺伝子情報を取得し、NGS解析の照会用データベースをアップデートする。
(サブテーマ2)昨年度に引き続き、霞ヶ浦のプランクトン食魚、イサザアミ、プランクトン等の採集を行う。動物プランクトン、イサザアミ、プランクトン食魚の消化管内容物について、DNAシーケンシングを行い、詳細な餌資源利用や生物間相互作用を明らかにする。また、季節的な変動や個体差などを考慮し、多検体の試料を採集・分析する。
(サブテーマ3)CCM(Convergent Cross Mapping)法による長期モニタリングデータの分析を行い、生物間相互作用の因果関係を明らかにする。サブテーマ2で得られた食性解析の結果ともすり合わせ、より詳細な食物網構造について考察する。さらに、それらの情報にもとづいて動的な食物網モデルを構成し、安定性などの食物網特性の分析を行う。国立環境研究所が40年近く継続してきた長期モニタリングデータの統合・データベース化を継続しながら、プランクトンの長期データについては、すべてデータペーパーとして公表する。
《外部との連携》
筑波大学 生命環境系 中山剛、東北大学 生命科学研究科 牧野渡、国立科学博物館 植物研究部 辻彰洋
《課題代表者》高村典子
《担当者》○高村典子(生物・生態系環境研究センター),今藤夏子,角谷拓,松崎慎一郎,山口晴代
《キーワード(日本語)》
生態系観測,霞ヶ浦,次世代シーケンサー,食物網
《キーワード(英語)》
ecosystem monitoring, Lake Kasumigaura, NGS analysis, food web