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《研究課題コ−ド》1115BA003
《研究課題名(日本語)》湖沼やため池における生物多様性損失の定量的評価に関する研究
《研究課題名(英語)》Evaluation of biodiversity loss in lakes and ponds
《予算区分》BA 環境-推進費(委託費) S-9-4
《研究経費》1000万円
《開始/終了年度》2011〜2015
《研究概要》
陸水生態系は、高い種多様性と固有性を維持し、豊富な恵み(生態系サービス)を供給してきた。しかし、近年の水資源開発、農地転用や富栄養化など様々な人間活動にともなう複合的な影響を強く受け、生物多様性の損失と生態系の劣化が顕著に現れている。これらの損失と劣化を緊急に食い止め早急な回復を促すためには、科学的根拠に基づいた生物多様性評価と予測による、効果的な保全政策の提案が急務である。本研究では、湖沼・ため池・水田などの淡水止水生態系を対象に、絶滅危惧生物の割合が極めて高い水生植物ならびに純淡水魚に着目し、生物多様性損失・生態系劣化の評価・監視手法を開発・改良する.そのために、水生植物ならびに純淡水魚について、過去の出現記録によるデータベースの作成に加え、最近の状況を把握するため新たな野外調査を実施する。必要に応じて、衛星画像の活用や、生物の分布予測推定のための統計モデルを構築する。さらに、生物多様性損失を引き起こす駆動因に関する情報を取得し、駆動因を明らかにすることで,それらの駆動因の軽減による回復を予測する.生物多様性の保全上重要なホットスポットを提示する.
《研究の性格》
主たるもの:応用科学研究
従たるもの:政策研究
《全体計画》
・ 対象とする湖沼やため池について、主に水生植物ならびに純淡水魚について、これまで調査された既存生物データの整理とデータベース化を実施する。
・ 生物多様性の駆動要因についての情報収集を行い、整理する。
・ 生物多様性の指標を、土地利用やその他の環境因子で説明するモデル式を作成する。また、生物多様性の損失を引き起こす駆動因を特定する。
・ 日本の広域を対象に、生物多様性の保全上重要なホットスポットを提示する.また、気候変動や土地利用の変化に伴う予測についても検討する。
《前年度の成果概要》
ため池における水生植物相の調査が継続的に実施されている兵庫県東播磨地方と東広島市の2地域を対象に、紙媒体に記録された調査結果のデジタル化と、調査を実施したため池の位置と形状のGISデータ化を実施した。
 兵庫県のため池64池の調査を基に、生物多様性の個別指標と複数の駆動因との相互の関係を定量化し、多数の生物多様性の個別指標の値を一括して推定可能な統合指標を開発した。その結果、富栄養化、コンクリート護岸率、ブルーギルの数が生物多様性の損失を引き起こす主因であることがわかった。
 ため池への侵略的外来魚(ブルーギル)の侵入しやすさを評価するために、兵庫県の64のため池を対象に、道路からの視認性とブルーギル侵入との関係を調べた。ブルーギルの在・不在は、上流のダムからの連結と道路からの視認性により予測できることが明らかとなった。統計モデルにより、兵庫県南西部でのブルーギルの侵入の程度を予測する地図を作成した。
 平成24年度は、東広島市西条盆地のため池群における水生植物の長期観測データ(全415池)をもとに、1974年から2011年にかけて記録された62種の水生植物(維管束植物及び車軸藻類)について、種ごとに時系列消長推移行列を作成し、それをもとに各種の池ごとの絶滅確率を500年先までシミュレーション推定した。さらに、推定した各種の池ごとの絶滅確率をもとに、「地域内の全ての種の絶滅確率の総和を最も効果的に最小化するように保全地を選択するツール(SPERS: Site Prioritizer based on Extinction RiskS)」を用いて、当該地の各ため池の保全優先順位を決定し、結果を地図化した。
 気象条件とため池周辺の土地利用を説明変数として用いたため池の生物多様性を広域に予測するモデルの予備的検討を実施した。また、春先に水田に産み落とされるアカガエルの卵塊を、衛星画像による周辺環境から説明する試みを実施した。
《今年度の研究概要》
兵庫県南西部のため池が多い地域を対象として、気象条件と周辺の土地利用を説明変数に入れた場合のため池の生物多様性の評価手法を検討し、将来的な気候変動や土地利用によるリスクを明らかにする。
広島県のため池に生息する水生植物62種のそれぞれについて埋土種子の寿命を考慮した絶滅確率を計算し、ため池の保全優先順位づけを行う。また、消失した個体群の再生を考える場合と考えない場合で、池の保全優先順位や各種の絶滅リスクがどのように変わるかを検討する。千葉県を対象地域として昨年度取り組んだニホンアカガエルの個体群衰退をもたらす駆動因に関する研究成果を論文化する。衛星画像を利用して、冬季水田における湛水状況を評価し、これを利用し、両棲類の分布推定モデルを構築する。
《外部との連携》
S-9 アジア規模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合的研究

S-9-4 陸水生態系における生物多様性損失の定量的評価に関する研究

テーマ代表:国立環境研究所、分担機関:筑波大学・大学院生命環境科学研究科、北海道大学・大学院農学研究院、北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター、九州大学・大学院工学研究院、京都大学・生態学研究センター、東邦大学・理学部
《備考》
共同研究者:作野裕司(広島大・助教)、赤坂宗光(東京農工大学・講師)、下田路子(富士常葉大学・教授)、角野康郎(神戸大学・教授)、志賀隆(新潟大学)、石田真也(新潟県)、竹中明夫(国立環境研究所)、木塚俊和(北海道立総合研究機構)
《課題代表者》高村典子
《担当者》○高村典子(生物・生態系環境研究センター),松崎慎一郎,小熊宏之,角谷拓,福森香代子,木寺法子
《キーワード(日本語)》
生物多様性,陸水生態系,保全
《キーワード(英語)》
biodiversity, freshwater ecosystem, conservation