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《研究課題コ−ド》0508BD966
《研究課題名(日本語)》健全な湖沼生態系再生のための新しい湖沼管理評価軸の開発
《研究課題名(英語)》Towards lake restoration: development of a means to assess and improve ecosystem health
《予算区分》BD
《研究経費》 26990000万円
《開始/終了年度》2005〜2007
《研究目的・目標》
日本の湖沼の水質は、様々な施策にかかわらず改善の兆しがみえない状況にある。湖沼環境の真の再生には、自然科学的な研究に人文社会学的な研究を加え、湖沼環境の変化と人間の意識や意思決定のカップリングについての理解が必要である。本研究では、生態学と社会学の研究成果を利用し、生態系ダイナミズムと人文社会的ダイナミズムがカップリングした結果起こる現象を明らかにする。
《全体計画》
霞ヶ浦・諏訪湖・釧路湿原達古武沼などの比較的浅い湖沼を対象とし、湖沼の流域・沿岸域・沖域の3つの空間スケールから湖沼生態系の健全性を取り戻すための要因を明らかにする。流域では水の浸透率、沿岸域では植生帯、沖域ではプランクトンに着目し、調査、野外実験、GISや衛星画像などを活用し、生物・非生物的環境要因と生態系過程の関係解析を行なう。一方、湖沼環境にかかわる人間の認識・行動と教育あるいは社会・歴史的な背景の関係性を分析する。そして、湖沼生態系を人文社会的要素のダイナミックスと自然科学的要素のそれが結びついたものととらえた数理生態系モデルを構築する。これらの結果を総合し、健全な湖沼生態系再生のための新しい湖沼管理の評価軸を提示する。
《前年度の成果概要》
水田、畑、森林、ゴルフ場、造成地において、水分含有率変化の連続測定を行った。また、同地点で土壌物性、振動ノズル式散水装置を用いた浸透能などを直接測定した。こうした結果を用いて、それぞれの土地利用・被覆での水の浸透率・表面流出の時間変化を解析し、造成地とゴルフ場では雨水が土壌に浸透しにくいことを定量的に示した。底泥撹乱魚(コイ)が浅い湖沼のレジームシフトを引き起こす過程を、実験隔離水界を用いて再現した。そして、物理的底泥撹乱と排泄のうち、排泄効果がレジームシフトを引き起こす主因であることがわかった。選択型実験を用い、北海道および全国の一般市民を対象にインターネット調査を10月に実施し、各々442、425サンプルの有効回答を得た。選択型実験の結果から推定された支払意志額は、水質改善>種の絶滅の回避>生物多様性の回復の順に減少した。北海道には、生物多様性の再生を高く評価するグループ(75%)とそれには価値を見出さず、水質改善やレクレーション利用を評価するグループ(25%)が存在することが明らかになった。湖沼生態系の富栄養化への反応と人々の行動、双方の履歴効果を加味したモデルを開発し、水質の回復に必要な社会的要因について検討した。その結果、リンの減少を促すためには、経済的コストを減らすことや社会的関心を大きくすることが重要であった。しかし、リンを減少させ、かつ人の協力のレベルを高く保つためには、同調性が必要であることがわかった。湖のリン濃度の度合いに関わらず協力のレベルが高いと、たとえ湖にストレスが生じてもリンの上昇がおきにくい頑強な状態になる。この結果から、湖の水質改善には周辺住民の合意形成や結束が重要だということが明らかになった。
《今年度の研究概要》
衛星画像を用いた流域の土地利用・被覆、不浸透率、水指標、土壌水分分布推定手法を霞ヶ浦流域において確立する。そうした特性量の最近20年程度の長期変化を解析し、水の浸透率、水流出、負荷量変化に及ぼす影響を評価することから、こうした特性量をもとに流域環境の健全性に関する指標を提案する。植物の発芽・定着条件に対する湖の水位変動の影響に関する知見を総合し、生物多様性の保全上価値が高い植生帯の保全・再生に必要な、水位管理、地形再生、水質改善の目標に関する具体的な提案を霞ヶ浦について行う。沿岸域や沖域の健全性を指標とできる生態特性を用いた適切な湖沼の生態系指標の検討を行なう。環境評価手法(選択型実験)により人々が湖沼の再生に対してどれだけの価値をおいているかを評価する。環境意識、認識、経験が環境の価値に与える影響を明らかにする。湖沼生態系の生活知の実態を生業、マイナーサブシステンス、遊びを中心に資料調査、聴き取り調査、参与観察で明らかにする<基礎調査>。人々の営みと湖沼環境との相互関係(関わりや生活知の変容過程や変容要因)の動態とその意味を関係論二次元モデルにより分析する<関係論的分析>。人々(生活知)と専門家(科学知)の協働による湖沼生態系の評価管理手法の理念、基本的枠組みを示す。上流と下流といった立場に非対称性のある2集落において、どのような汚染状況が生まれるかとともに、それぞれでの水質への関心や環境への関心の喚起、環境教育、地域放送を通じての広報などがどのような効果を持つかを数理的に調べる。?地域の住民が伝統行事をつうじ、もしくは水へのアクセスをつうじて親しむことが、水質改善にどれだけの効果をもつか、さらには人々の間の接触の頻繁さを通じて、それが間接的に水質改善にもつ効果などに注目して数理モデルを解析する。
《備考》
共同研究機関(共同研究者):九州大学(巌佐庸)、総合研究大学院大学(長谷川真理子)、東京大学(鬼頭秀一)、筑波大学(福島武彦)、信州大学(花里孝幸)
《課題代表者》高村典子
《担当者》○高村典子(環境リスク研究センター),田中嘉成
《キーワード(日本語)》
流域,湖沼の自然再生,数理モデル,生物多様性,生態学と社会
《キーワード(英語)》
WATERSHED, LAKE RESTORATION, MATHEMATICAL MODELLING, BIODIVERSITY, ECOLOGY AND SOCIETY
《関連先》
重点3ー中核4 生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評価手法の開発