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《研究課題コ−ド》1618BA007
《研究課題名(日本語)》大気中の二次汚染物質に対する発生源寄与推計と対策立案に資する規範的モデルの確立
《研究課題名(英語)》Establishment of a Reference Modeling for Source Apportionment and Effective Strategy Making to Suppress Secondary Air Pollutants
《予算区分》BA 環境-推進費(委託費) 5-1601
《研究経費》1232.2万円
《開始/終了年度》2016〜2018
《研究概要》
 微小粒子状物質(PM2.5)と光化学オキシダント(Ox)の環境基準の達成率は低い状況にあり、早急な対策が求められている。費用対効果の高い対策を立案するためには、PM2.5やOxに対する寄与の高い発生源を見出す必要がある。しかしながら、PM2.5の大半やOxは、大気中での複雑な光化学反応を経て二次的に生成される汚染物質(二次汚染物質)であるため、発生源寄与を求めるのは容易ではない。あらゆる発生源からの原因物質の排出実態を正確に表現した排出インベントリと、大気中での二次汚染物質の物理化学的挙動を正確に表現できる大気質モデルが必要になる。大気質モデルを用いた発生源寄与割合の推計は既に行われてきているが、モデルが抱える問題点が適切に考慮されているとは言い難い。例えば、現行のモデルでは、二次汚染物質による高濃度大気汚染を十分に精度よく再現することはできない。この問題点を正しく理解せず、精度の低い発生源寄与割合を鵜呑みにして対策が立案されてしまうと、想定された大気質改善効果が得られず、多大な社会・経済的損失が生じてしまう恐れがある。そこで、本研究を実施することにより、二次汚染物質による高濃度大気汚染のメカニズムの解明と、有効な対策への的確な情報源となり得る発生源寄与割合の推計に資する、信頼性の高い規範的なモデルを確立させる必要がある。
 本研究では、大気質モデルへの重要な入力データである排出インベントリの構築・改良と、モデルの検証・開発・改良のための観測データの取得を行う。その上で、有力なモデル研究者を一堂に集め、二次汚染物質の濃度再現性と発生源寄与割合について、複数のモデル間で相互比較を行う。異なるモデル間の長所の融合、さらには観測に基づく新たなサブモデルの開発を通して、信頼性の高い規範的なモデルを確立させる。そして、その妥当性と有用性を、わが国のモデル研究者の総意として広く展開させる。
《研究の性格》
主たるもの:応用科学研究
従たるもの:行政支援調査・研究
《全体計画》
○2016年度
・既存の排出インベントリを用いて複数の大気質モデルで推計される二次汚染物質の濃度再現性と発生源寄与割合の相互比較を行い、違いの原因解明を通して、インベントリとモデルの改良に結びつける。
・次年度以降のモデル計算で使用する排出インベントリと、モデルを検証・開発・改良するための観測データを整備する。
○2017年度
・前年度のモデル間相互比較の結果に基づき、排出インベントリを改良する。
・モデルのさらなる検証・開発・改良のための観測データを整備するとともに、新たなサブモデルを構築する。
・前年度ならびに当年度の観測期間を対象に、複数のモデルによる再現性比較実験を行い、二次汚染物質の物理化学的挙動をより精度良く表現するためのモデルとインベントリの要改良箇所を見出す。
○2018年度
・前年度のモデル間相互比較の結果に基づき、排出インベントリを改良し、今後の対策評価に使えるデータベースとして整備する。
・前年度までに構築されたサブモデルを大気質モデルに組み込んで検証を行い、観測された二次汚染物質の物理化学的挙動をより精度良く表現するために改良を加える。
・最終的に確立された排出インベントリとモデルを使用して、高濃度期間を対象とするモデル間相互比較を行い、二次生成物質の濃度再現性や発生源寄与割合に関するモデルの解釈と捉え方を含めた全体的な指針を、モデル研究者の総意として提示する。
《前年度の成果概要》
・1回目のモデル間相互比較の入力データとして、全ての排出量データを新たに取りそろえた。特に、国内の自動車以外の汚染物質排出量については、年次補正と改良を独自に行い、日本全国3次メッシュのデータベースとして完成させた。そのデータを、5種類の化学反応メカニズムに変換し、領域化学輸送モデルのCMAQやWRF-chemで直接使用できる形で相互比較への参加者に配布した。
・モデル間相互比較計算の一環として、化学反応メカニズムの違いの影響、モデルの種類やバージョンの影響、排出量データの違いの影響等の解析を行った。計算結果は、他の相互比較参加者と整合的であったが、上記評価内容についてそれぞれ特徴的な違いが現れた。
・生物起源VOC排出量を推計するための、新たな日本国内植生データベースを整備し、気象場や汚染物質への影響を評価した。
《今年度の研究概要》
(1)前年度のモデル間相互比較における二次汚染物質濃度の観測値と複数のモデルによる計算値との乖離の空間的・時間的特徴を明らかにし、排出インベントリの改良に結びつける。
(2)前年度ならびに当年度の観測期間と観測項目を対象として、複数の大気質モデルによる再現性比較実験を行い、二次汚染物質の物理化学的挙動をより精度良く表現するためのモデルとインベントリの要改良箇所を検討する。
(3)地表面フラックス測定を継続して、鉛直一次元ガス状・粒子状物質輸送モデルを構築するとともに、短時間濃度の連続測定を行いモデルの検証データを蓄積する。また、高湿度下で膨潤した粒子表面での硫酸塩不均一生成過程をモデル化する。
(4)前年度同様、首都圏陸域でのオゾンゾンデ観測及び伊豆諸島でのOx連続測定を実施する。観測は、前年度のモデル解析を参考にしつつ、より有用な検証データが得られるよう計画する。観測終了後、得られたデータを対象にモデルの試計算を実施し、その精度を確認する。
《外部との連携》
神戸大学、電力中央研究所、明星大学
《課題代表者》茶谷聡
《担当者》○茶谷聡(地域環境研究センター),菅田誠治,永島達也,森野悠
《キーワード(日本語)》
モデル間相互比較,排出インベントリ,領域化学輸送モデル
《キーワード(英語)》
Model intercomparison,Emission inventory,Regional chemical transport model