
| 《研究課題コ−ド》 1013CD001 |
| 《課題名》 | |
| 侵略的外来種アルゼンチンアリにおけるスーパーコロニーの進化と維持機構の解明 Evolution of supercolony formation in invasive alien species, Argentine ant |
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| 《区分名》 CD 文科-科研費 | |
| 《担当者》 | |
| ○井上真紀(生物・生態系環境研究センター) | |
| 《キ−ワ−ド》 | |
| 外来種,保全生態学 invasive alien species, conservation biology |
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| 《目的》 | |
| 多くのアリ類では、女王とその娘ワーカーから成るコロニーを作り、女王が産卵を、ワーカーが育児や採餌を担う。ワーカーは、同種を含む侵入者から巣を守り、血縁選択を通じてワーカーの形質が子孫へと伝えられると考えられている。しかし、アルゼンチンアリのコロニーは多数の女王を有し、そのサイズは巨大で、数百あるいは数千の巣がネットワークで繋がり、女王やワーカーは巣間を自由に移動することができる。この社会構造をスーパーコロニーという。スーパーコロニー内の個体間血縁度はきわめて低く、なぜこのような社会構造が進化し維持されているかは、社会性進化における大きな謎とされてきた。 本研究は、アルゼンチンアリのスーパーコロニーの生態特性およびスーパーコロニー間での遺伝子流動の有無を明らかにすることにより、アルゼンチンアリの巨大スーパーコロニーと小規模スーパーコロニーの進化と維持機構の解明を目的とする。それにより、アルゼンチンアリの侵略性の解明および本種の防除対策への提言のみならず、スーパーコロニー形成メカニズムの仮説を検討することにより、これまで謎とされてきた社会性昆虫におけるスーパーコロニー進化の解明に寄与するものである。 |
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| 《内容及び成果》 | |
| アメリカ南東部およびカリフォルニアにおいて、アルゼンチンアリの複数のスーパーコロニーのサンプルを採集した。このサンプルに加え、日本およびヨーロッパ、オセアニアで採集したワーカーを用いてミトコンドリアDNA遺伝解析を行った結果、単一の遺伝子型に属するスーパーコロニーが世界中に分布している一方、異なる遺伝子型を持つ小規模スーパーコロニーが日本、ヨーロッパ、アメリカに分布していることが明らかになった。アメリカの小規模スーパーコロニーは同一の遺伝子型であったが、日本の小規模スーパーコロニーは異なる複数の遺伝子型を持ち、日本が侵入地の中でもっとも遺伝的多様性が高く、ごく短期間で複数回の侵入が起きていることが示唆された。また、他の侵入地ではみられない遺伝子型があることから、原産地から直接侵入した可能性も示された。 兵庫県神戸港に分布するアルゼンチンアリの4つのスーパーコロニーを対象に、遺伝子流動の有無を明らかにするために、行動実験および遺伝解析を実施した。敵対性試験の結果、異なるスーパーコロニー由来のオスに対するワーカーの攻撃性は、ワーカーに対するレベルより低く、オスを介した遺伝子流動の可能性が示唆された。一方、マイクロサテライト遺伝子座の対立遺伝子頻度に基づく集団遺伝解析を行った結果、4つのスーパーコロニーは遺伝的に独立しており、隣接するスーパーコロニー間でも遺伝子流動は低頻度でしか起きていないことが明らかになった。これらの結果から、アルゼンチンアリは安定した環境下ではスーパーコロニーの個体群構造は容易に変化しない可能性が示された。 ワーカー同士の敵対性レベルの季節変動を調べた結果、世界中に広く分布するスーパーコロニーの敵対性レベルの変動パターンが他のスーパーコロニーに同調する傾向がみられた。そこで、逃避行動および集団敵対行動を明らかにするために、行動実験を行った結果、小規模スーパーコロニーに逃避傾向がみられ、巨大なスーパーコロニーは集団で侵入者に攻撃を行うことが明らかになった。このことから、巨大なスーパーコロニーを形成している個体は非常に攻撃性が高く、それにより他のスーパーコロニーを排除していることが推測された。 |
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| 《期間》 平成22〜平成25年度(2010〜2013年度) | |
| 《備考》 | |