NIES EIC TEST Database
研究成果(平成23年度)
《研究課題コ−ド》 1011CD010
《課題名》
北極振動によるエルニーニョの予知への挑戦
A challenge to the long-term forecast of the El Nino induced by the Arctic oscillation
《区分名》 CD 文科-科研費
《担当者》
○中村哲(地球環境研究センター)
《キ−ワ−ド》
長期予報,気候システム,異常気象
long term prediction, climate system, abnormal weather
《目的》
本研究は、「極域で卓越する大気変動である北極振動が、熱帯域の大気海洋相互作用に影響を与え、エルニーニョ南方振動(ENSO)のトリガーとなる可能性がある」という、20世紀後半の観測データ解析から導かれた仮説を、最新の数値モデルを使った手法により検証する。この検証により、中長期予報に重要なENSOの発生予測精度の向上に繋がる基本的なメカニズムを把握することが目的である。前年度に行った理想化された大気大循環モデルによる再現実験を元に、本年度は、客観解析データから得られた大気加熱や渦度収支をインプットとして数値モデルを駆動し、その定常応答を見ることで北極振動に伴う熱帯大気循環の変化を見積もる。同時に、北極振動とENSOという二つの変動モードのCoherencyを評価するための統計解析手法を開発し、対応するメカニズムの抽出を試みる。
《内容及び成果》
1)正の位相に卓越する北極振動に伴い太平洋域で中緯度から熱帯へ輸送される低気圧性渦度の収支解析を行い、熱帯での渦度収支をインプットとして数値モデルを駆動した。その結果、ENSOのトリガーとなる西部熱帯太平洋上の西風バーストの強化がみられた。
2)西風バーストの強化に伴う、海から大気への熱供給を評価し、この時の大気応答を計算した結果、中高緯度での応答は北極振動を負位相へ逆転させる事がわかった。これにより正位相の北極振動が西風バーストの強化に対する応答ではなく、原因である事を強く示唆する。
3)特異値分解と固有値分解を応用した独自の統計解析手法を開発し、CMIP3マルチモデルアンサンブルデータに適用した。これにより大気海洋結合モデルにおいて北極振動とENSOを繋ぐ物理情報の伝播プロセスを抽出する事に成功した。その結果、北極振動に伴うユーラシア大陸西部と北大西洋における陸面・海面の変化が、チベット高原北部のジェット気流の強化をもたらし、太平洋域における中緯度から熱帯への低気圧性渦度の輸送を強化する事がわかった。
《期間》 平成22〜平成23年度(2010〜2011年度)
《備考》