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アーカイブ集(Meiのひろば:化学のひろば)


01. 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)の見直しの動き

白石 寛明


 化管法は、平成11年7月に制定、平成12年3月に施行されました。環境中へ排出されることにより有害な影響をもたらす可能性のある特定の化学物質が、どの事業所から、どの程度、どこに排出されたか、あるいは廃棄物として事業所の外に運び出されたかという情報の届出、公表する仕組み(特定の化学物質の環境への排出量等の把握・届出に関する措置(PRTR制度(環境省のHP)Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度))と、化学物質の性状や取扱いに関する情報の提供に関する措置(MSDS制度(経済産業省のHP)Material Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)を通じて、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としています。


「薬品びん」イメージ挿絵

 大気、水、土壌といった媒体ごとの環境基準の設定や排出規制に代表される1つの化学物質の1つの媒体に対する規制的なリスク管理は環境保全に重要な役割を果たしているが、多数の化学物質の多様なリスクの管理を目指すにはこれだけでは不十分であり、より系統的で包括的な枠組みとして、自主的なアプローチが取り入られたものであり、この法律は日本における化学物質のリスク管理のイノベーション(注1)を志向したものと捉えることができるように思えます。問題の明確化(さまざまな化学物質の環境リスク管理は、物質ごとの規制のみでは十分でないと認識された。)、リスク分析(問題とすべき化学物質が、有害性があり環境中に残存するという評価基準のもとで選定された。)、管理手法の選択(事業者による自主的な化学物質の管理を促す手法が選択された。)、意思決定(化管法の制定によりPRTR制度とMSDS制度が導入された。)、実施(PRTR制度とMSDS 制度が運用され、5回にわたりPRTR集計結果が公表された。)を経て、今まさに施行後7年の評価の段階にあります。中央環境審議会(環境省のHP)と産業構造審議会の合同の委員会で、化管法の施行の状況に対する評価、課題の抽出、今後の方向性についての検討がなされ、意見募集を経て、平成19年8月24日に中間答申(環境省のHP:報道発表資料)がなされました。


「試験管・ビーカー等」イメージ挿絵

 リスク管理を進めていく上で、関係者の関与が重要であるといわれています。現在、国に届け出られた個別事業所ごとのPRTRデータは、都道府県別、業種別など法令で定める項目ごとに集計されたものが公表されていますが、個別事業所ごとのPRTRデータについては、手数料をはらって国に開示請求する必要がありました。事業所の届出データを公表しているサイト(NPO法人有害化学物質削減ネットワーク)もありますが、関係者に関与を求めるならば、誰でも簡単にデータを閲覧、理解できるよう見直す必要があるといえます。環境リスク研究センターでは、PRTRデータを用いた濃度試算ツール(MuSEM(環境リスク研究センターDatabase))や、化学物質データベースや侵入生物データベースによる有害性情報の提供などを行ってきましたが、これらの届出データを活用して、私たちの身の回りの事業所からどんな化学物質が排出されているか、地図上から簡単に検索できるシステムの検討も進めています。

注1  イノベーション: 経済成長の原動力となる革新。生産技術の革新,資源の開発,新消費財の導入,特定産業の構造の再組織などをさすきわめて広義な概念


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