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免疫とにおい


藤巻 秀和

 毎年冬場になると流行するのがインフルエンザですが、今年は変異した新型インフルエンザが今も大流行しています。インフルエンザなどのウイルスや破傷風などの細菌に対抗するのは、われわれが体内に備えている免疫という防御機構です。さらに、2月頃から始まるスギ花粉の飛散によるスギ花粉症を引き起こすのもまた免疫が過敏に反応しているからです。  この免疫反応を制御しているのは何でしょう?また、個人個人でウイルスや細菌に対する抵抗性が異なるのは、なぜでしょう? これには、ヒトではHLA (■注1)、マウスではH-2(■注2)とそれぞれ呼ばれている主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC) (■注3)の遺伝子が重要な働きをしています。臓器移植の成否は、臓器提供者と移植される側の遺伝子複合体の類似性が高いか低いかにかかっていますが、類似性が高ければ移植を受けた側の免疫系が排除せず移植の成功率は高くなります。MHCはこの類似性を決めています。


図1:コンジェニックマウスにトルエン曝露した
後の脳内のグリシン濃度の変化(**P<0.01)
「乳幼児を取りまく室内の環境因子」イメージ図

 ところで、30年以上前にこのマウスの免疫にかかわるH-2遺伝子複合体と生殖行動との関係が明らかにされました。発情期のメスをH-2遺伝子が同じオスと異なるオスがいる環境に移すと、異なる方のオスと生殖行動をとるということで、この原因物質が尿の中にあり揮発性の化学物質ではないかということが報告されました。したがって、異なるH-2遺伝子産物、あるいはそれに由来する化学物質を嗅覚で認識することで好みの雄を選別しているのではないかと推測されました。 H-2遺伝子が異なる親同士から生まれた仔は、両親のH-2遺伝子を持つことになりますので、子孫ではH-2遺伝子の多様性が確保されます。その結果、子孫は様々なウィルスや細菌に対する抵抗性をもつことになり生物の生存上の意義は大きいと考えられます。


 われわれは、揮発性有機化合物の神経―免疫系への影響についてH-2遺伝子と神経伝達物質(■注4)のかかわりを明らかにすることに取り組んでおり、H-2遺伝子のみが異なり他の遺伝子はまったく同一なコンジェニックマウスを用いてトルエン曝露を行い、神経伝達物質のひとつであるグリシンの産生を調べました。その結果、H-2の違いにより もともとのグリシン濃度が異なりますが、トルエン曝露によりグリシン濃度がさらに変化することが明らかとなりました(図1)。このことは、H-2遺伝子複合体が脳内での神経伝達の様相、およびトルエンに対する反応性に大きく関わっていることを示唆しています。  免疫系と嗅覚におけるにおい認識との関連が、少しずつ明らかになりつつあります。



■注1  HLA : ヒト白血球抗原(Human Lukocyte Antigen)がヒトMHCを示すHLAと同意に用いられている。

■注2  H-2 : histocompatibility-2の略で、マウスにおけるMHCと同意である。

■注3  主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC) : 免疫応答に重要なさまざまな蛋白質情報を含む遺伝子の領域

■注4  神経伝達物質 : 脳内で神経細胞間の情報伝達、シグナル伝達にかかわる物質で、アミノ酸、モノアミン類、神経ペプチド類など多くの物質がある。


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