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 本環境標準物質は、ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)及び類似水生植物中の多元素分析を行う際の分析値の精度管理や分析機器の妥当性確認に使うことを目的として研究開発され、国立環境研究所において作製された認証標準物質(CRM)である。

1.原料および作製法

 本標準物質の原料は、国立環境研究所内の水環境実験施設において管理栽培したホテイアオイ(300 kg)である。収穫したホテイアオイを蒸留水洗浄、85℃乾燥、ローターミル粉砕後、目開き106μmの篩にかけ、乾燥2次原料(約9 kg)を得た。Vブレンダーによって均質化後、5 gずつ褐色瓶に詰め、Co-60照射(2.5 Mrad)による滅菌処理を施した。本標準物質はISO GUIDE 34に準拠して作製された。

2.均質性

 1054本の瓶より 10本を層別ランダムに抽出し、ICP-AES及びICP-MSを用いて多元素分析を行った。一元配置分散分析により算出されたそれぞれの元素の瓶間標準偏差は1 %以下であり、併行標準偏差と比較して十分に小さく、標準物質として均質であることが確認された。

3.認証値と参考値の決定法

 本標準物質の認証値及び参考値は、13機関(20ラボ)から報告された分析値を用いてISO GUIDE 35に則して統計的に決定された。決定された特性値のうち以下の基準を満たす値を認証値とした、 1)特性値決定に使用された分析値を用いて算出された相対標準偏差が5 %以下、2)特性値決定に使用された分析値の数が8以上、3)特性値決定に使用された分析法の種類が2以上。認証値に付けた不確かさは包含係数k=2の拡張不確かさであり、95 %の信頼区間に相当する。参考値は、国立環境研究所の認証値の基準を満たさなかったため認証値としては取り扱わないが、認証値と同様に本標準物質の特性を表した値である。認証値及び参考値はすべて乾燥重量当たりの値である。

NIES CRM No.29ホテイアオイの認証値

元素 質量分率 分析方法
単 位 認証値   不確かさ
Na % 0.665 ± 0.050 AAS, ICP-AES, ICP-MS
Mg % 0.856 ± 0.042 AAS, ICP-AES, ICP-MS, NAA, XRF/WDX
P % 0.515 ± 0.056 AAS, ICP-AES, XRF/WDX
S % 0.231 ± 0.023 IC, ICP-AES, XRF/WDX
Ca % 1.63 ± 0.13 AAS, ICP-AES, ICP-MS, NAA, XRF/WDX
Mn mg/kg 53.9 ± 5.6 ICP-AES, ICP-MS, NAA, XRF/WDX
Fe mg/kg 345 ± 21 ICP-AES, ICP-MS, XRF/WDX
Co mg/kg 0.449 ± 0.034 HR ICP-MS, ICP-MS
Cu mg/kg 4.48 ± 0.36 HR ICP-MS, ICP-AES, ICP-MS
Zn mg/kg 145 ± 15 ICP-AES, ICP-MS, XRF/WDX
Sr mg/kg 60.0 ± 4.0 ICP-AES, ICP-MS
Mo mg/kg 3.06 ± 0.27 HR ICP-MS, ICP-MS, ID-ICP-MS
Ba mg/kg 48.2 ± 3.0 ICP-AES, ICP-MS

AAS: 原子吸光分析法, HR ICP-MS: 高分解能誘導結合プラズマ質量分析法, IC: イオンクロマトグラフ法, ICP-AES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法, ID-ICP-MS: 同位体希釈誘導結合プラズマ質量分析法, NAA: 中性子放射化分析法, XRF/WDX: 波長分散形蛍光X線分析法
認証値に付けた不確かさは包含係数k=2の拡張不確かさであり、95 %の信頼区間に相当する。
認証値はすべて乾燥重量当たりの値である。

NIES CRM No.29ホテイアオイの参考値

元素 質量分率 分析方法
単 位 参考値
C % 39.1 EA
N % 2.1 EA
K % 4.50 AAS, ICP-AES, ICP-MS, NAA, XRF/WDX
Y mg/kg 0.0668 ICP-AES, ICP-MS
Cd mg/kg 0.099 HR ICP-MS, ICP-MS
Pb mg/kg 0.531 ICP-MS

AAS: 原子吸光分析法, EA: 元素分析法, HR ICP-MS: 高分解能誘導結合プラズマ質量分析法, ICP-AES: 誘導結合プラズマ発光分光分析法, ICP-MS: 誘導結合プラズマ質量分析法, NAA: 中性子放射化分析法, XRF/WDX: 波長分散形蛍光X線分析法
参考値はすべて乾燥重量当たりの値である。

4.保管及び使用上の注意事項

  1. 瓶開封の際は汚染に注意し、開封後はできるだけ速やかに使用することが望ましい。
  2. 本物質は配布時の瓶のままデシケーター内で室温(30 ℃以下)保存すること。開封後も同様の条件下で保存すること。
  3. 本物質は分取前に瓶を軽く振って混和させること。
  4. 本物質の1分析あたりの使用量は0.1 g以上が望ましい。
  5. 本物質を吸い込まないよう取り扱いに注意すること。
  6. 本物質を研究目的以外に使用しないこと。物質の廃棄の際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律を遵守すること。
  7. 本物質の認証値及び参考値はすべて乾燥重量あたりで決定されている。定量の際には、成分分析用試料を分取した瓶から水分含量測定用試料も分取する。国立環境研究所において85 ℃、4時間乾燥条件下で測定した水分含量は2-4 %であった。水分含量は保存条件により変動するので、必ず毎分析時に測定し補正すること。

5.有効期限

 本標準物質の認証値の有効期限は、上記保管条件が守られることを前提として2021年9月とする。有効期限内に特性値の変化が認められた場合は、国立環境研究所ホームページ等において公表する。

  • 国立環境研究所ホームページ

6.分析協力機関

 本標準物質の認証値及び参考値は、次の13機関の分析値をもとに決定された。 国立環境研究所、(株)アムコ、いであ(株)、神奈川県産業技術センター、グリーンブルー(株)、JFEテクノリサーチ(株)、(株)島津テクノリサーチ、(株)住化分析センター、(株)地球科学研究所、(株)ニッテクリサーチ、(財)日本環境衛生センター、(財)日本食品分析センター、ムラタ計測器サービス(株)