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 ヒト尿標準試料は、尿中のヒ素化合物とその他の微量元素分析の際に、分析値及び分析方法の正確さを評価することを目的として作られた環境標準試料である。

 本標準試料は、1ビン約10mLのヒト尿を分注し凍結乾燥させたもので、2本を1組として国立環境研究所により調製販売されている。

1.調製

 本標準試料の原材料は26人分の事務系日本人男性の尿である。 集めた尿はメンブレンフィルター(5μmおよび 0.45μm)を通し、950本のガラスビンに 10.00±0.05g ずつ分注した。 その後凍結乾燥させ、ガラスビンをテフロン内装貼シリコン蓋とアルミ製金具で密封した。

2.均質性

 本標準試料の均質性はランダムに選んだ6本のビンに定量の蒸留水を加えて溶解し、それぞれ1mLを4本サブサンプルとしてとり、密閉式硝酸分解の後、Na、Mg、P、K、Ca、ZnはICP-AES、AsはICP-MSにより測定した濃度を統計的に解析して評価した。 ビン内及びビン間のばらつきは有意でなかった。

3.保証値および参考値

 保証値は、総ヒ素、アルセノベタイン、総セレン、総亜鉛含有量について、共同分析に基づき決定された。 共同研究機関の分析値の平均値を保証値とした。

 参考値は、国立環境研究所における同位体希釈ICP質量分析法により鉛、銅含有量について与えられている。 ただし保証値及び参考値は、蒸留水を加えて溶解した直後の試料にのみ有効である。

ヒト尿*1標準試料の保証値

--- 単 位 保証値 分析方法*2
総ヒ素 mg/L 0.137±0.011 a,b,c,d,e,f
アルセノベタイン mg/L as AS 0.069±0.012 g,h
ジメチルアルシン酸 mg/L as AS 0.036±0.009 g,i
総セレン mg/L 0.059±0.005 d,e,f,j
総亜鉛 mg/L 0.62±0.05 f,k,l

ヒト尿 *1
凍結乾燥させたヒト尿粉末は9.57gの蒸留水を加え溶解したものを使用。溶解したヒト尿の比重は1.015(23℃)
分析方法 *2

a: 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)
b: 高分解能ICP-MS
c: マイクロ波誘導窒素プラズマ質量分析法
d: 電気加熱炉原子吸光法(ETAAS)
e: 水素化物発生AAS(HGAAS)
f: 中性子放射化分析法
g: 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)-ICP-MS
h: HPLC-MIP-MS
i: HPLC-HG-ICP-MS
j: 蛍光分析法
k: ICP-原子発光分析
l: 同位体希釈ICP-MS

ヒト尿標準試料の参考値

--- 単 位 参考値
総銅 mg/L 0.010
総鉛 mg/L 0.0011

4.使用上の注意

(1)保存

 4℃で保存のこと。

(2)使用方法

 それぞれのビンに蒸留水9.57gを加える。凍結乾燥した試料が完全に融けるまで静かに混ぜる。 激しく振らないこと。泡立ちの原因となる。

(3)注意

 本標準試料は滅菌がなされていない。取り扱いに際しては十分注意してください。

(4)安定性

 乾燥状態のNIES CRM NO.18 ヒト尿は、前述の適当な保存状態では安定と考えられる。 本標準試料の安定性については国立環境研究所において今後も継続してモニターする予定である。

 保証値及び参考値は、溶解直後の試料についてのみ有効であることをご承知おき願いたい。 ただし、溶解後のサンプルは4℃、暗所において1ヶ月は安定であると考えられるが、保証の限りではない。

5.参考文献

1 Human urine certified reference material for arsenic speciation
Clin. Chem., 46: 1781-1786(2000)
Jun Yoshinaga, Amit Chatterjee, Yasuyuki Shibata, Masatoshi Morita, John S.Edmonds
2 Biological availability of selenosugars in rats
Chem. Biol. Interact., 168: 203-210(2007)
Dijana Juresa, Maja Blanusa, Kevin A. Francesconi, Norbert Kienzl, Doris Kuehnelt
3 Effects of endogenous hydrogen peroxide and glutathione on the stability of arsenic metabolites in rat bile
Toxicol. Appl. Pharmacol., 232: 33-40(2008)
Yayoi Kobayashi, Seishiro Hirano